2016.09.23 生保協会が定例会見、顧客本位の販売手数料開示を

9月16日、日銀記者クラブでの生保協会定例会見で根岸秋男協会長は、生命保険に関する販売手数料開示と、社会保障教育と併せた保険教育推進の2点について報告した。9月1日に公表した販売手数料開示に関する指針では「お客さまにとって分かりやすい開示になること」を目的に、特に留意する事項についての考え方を整理したとし、各社の取り組みを後押しする考えを示した。また、社会保障制度に関連付けた保険教育実現に向けての施策を説明し、具体的な内容については来年2月に公表することを明かした。
 会見ではまず、台風10号による犠牲者に哀悼の意を示すとともに、被災者に対してお見舞いを述べた。その上で、生保各社では災害救助法が適用された地域の契約について保険料の払い込み猶予期間延長や必要書類の一部省略などによる簡易、迅速な支払いといった特別措置を講じていることを強調した。
 報告では、保険販売手数料開示について、9月1日に公表した「市場リスクを有する生命保険の販売手数料を開示するにあたって特に留意すべき事項」に言及。これまでの協会内の議論や市場ワーキンググループ(WG)での議論を踏まえ、開示に当たって顧客本位のものとなるような考え方を整理したと説明した。
 続いて、7月の就任会見で表明した「保険教育の継続推進」の現在の検討状況を報告。次期学習指導要領の審議のまとめや年度内に示される予定の小中学校の学習指導要領の改定案について、今年4月に公表した「保険教育推進に関する報告書」を踏まえた意見発信と関係各方面への働き掛けを行っていく方針を示した。加えて、保険教育実現に向けて、①中学校・高等学校への情報提供充実に向け、教師の意見を反映した教材や教材活用マニュアルを厚生労働省と連携して作成②教師向けに保険教育の情報をワンストップで提供する環境整備(協会ホームページ内にポータルサイト開設)―に取り組む。具体的な内容については、2017年2月に公表するという。
 報告後の質疑応答では、記者から販売手数料開示とマイナス金利についての質問が多く寄せられた。販売手数料開示について指針の公表を早めた理由を問われた根岸協会長は、主たる銀行が10月からの手数料開示を表明する中、開示方法にばらつきがあると顧客にとって分かりやすいものとならないとの懸念から9月1日に公表したと説明。公表した留意事項を参考にすることで、「お客さまにとって分かりやすい開示につながっていくのではないかと考えている」と期待を示した。また、「販売手数料を開示するか否か、開示内容などについては最終的に保険会社と金融機関の合意の下で判断されるもの」としながらも、協会として引き続き会員各社の顧客本位の行動の取り組みを積極的に後押ししていくとの立場を明確にした。
 一方、日銀の金融政策については昨年までの政策は評価しているとしながら、マイナス金利政策について「金融機関の収益圧迫」「個人マインドに悪影響を及ぼした」など副作用が大きかったとの見解を示した。また、貯蓄性商品の販売停止、保険料引き上げなどについてどう考えるかという質問について、「今の低金利が続くのであればこの傾向は変わらない」と回答。「平準払いの貯蓄性商品についても、来年以降非常に難しくなってくるのではないか」との見通しを示しながら、公的保障を補完する役割を担っているため、顧客ニーズに応えられる努力をしなければならないとの考えを示した。この他、経済政策全体という観点から「労働力の質と量の向上のためにダイバーシティが必要」だとし、業界の健全な発展を通じて日本経済再生のために貢献していきたいと展望した。