2025.04.18 MS&ADHD/三井住友海上 米国WRB社と提携・協力関係締結 発行済株式15%取得、取締役1人派遣 スペシャルティ保険の引受ノウハウ活用へ

 MS&ADインシュアランスグループホールディングス(以下、MS&ADHD)と三井住友海上は3月28日、三井住友海上が米国の W. R. Berkley Corporation (以下、WRB社)の創業家(以下、ファミリー)と提携・協力関係を結ぶとともに、WRB社への出資を決定したと発表した。関係当局による認可等を前提として、三井住友海上はWRB社の発行済普通株式を15%取得(注)するとともに、取締役を1人派遣する。3月27日時点のWRB社の時価総額は251億米ドルで、その15%は38億米ドル(約5650億円)。
 WRB社は創業者の William R. Berkley 氏( Executive Chairman )が1967年に設立、72年に損保事業に参入した。本社はコネチカット州(登録はデラウェア州)で、 W.Robert Berkley,Jr. 氏が代表者( President & CEO )を務める。資本金は1億5900万米ドルで、2024年12月期の連結純資産は84億700万米ドル、連結総資産は405億6700万ドル、正味収入保険料は119億7200万ドル、保険引受利益は11億2200万ドル、連結当期純利益は17億5600万ドル、コンバインドレシオは90%、株主資本利益率(ROE)は24%。
 同社はFortune500にランクインするスペシャルティ保険等に強みを持つ大手保険会社で、三井住友海上はそのファミリーと協力関係を結ぶことになる。三井住友海上はWRB社との間で再保険の取引関係があり、また、 Lifson Re Ltd. というキャプティブ再保険会社を20年12月に三井住友海上、WRB社、その他もう1社の3社で共同設立している(現在Lifson Re Ltd.は三井住友海上の持分法適用会社となっている)。
 三井住友海上が取得する株式は市場内外で取得し、ファミリー、WRB社それぞれと三井住友海上の間での売買はない。三井住友海上とファミリーそれぞれの持分にかかる議決権行使をそろえる観点から、協定に沿って追って設置するビークルの下で管理する。締結書類等はすべて届出対象となる。また、MS&ADHDはWRB社の利益(三井住友海上シェア分)を連結決算上に取り込む。
 三井住友海上は3月28日付でファミリーと協力関係協定(申請・届出手続きや会計分野にかかる協力覚書を含む)を締結。今後、WRB社の協力を得つつ、関係当局への認可等の申請・届出手続きおよび市場内外でのWRB社株式の取得を速やかに開始し、本年度下期中に取得を完了する予定としている。
 MS&ADHDでは三井住友海上にとっての本協力関係の意義について、①収益性、成長性の取り込み②MS&ADHDの資本効率の向上、リスク分散の実現③新種保険(スペシャルティ保険)にかかる協業機会創出④その他シナジー実現機会の広がり―を挙げる。「本協力関係は中長期的に当社の業績向上に寄与する。26年4月以降の業績への影響については具体的な見通しが立ち次第公表する」としている。
 本提携・協力関係により三井住友海上は、米国に強いWRB社と日本・アジア・ロイズをはじめとするその他地域・市場に強いMS&ADグループの補完関係を成長戦略上生かしていくことを目指すとともに、WRB社の収益性・成長性を取り込み、WRB社が持つスペシャルティ保険のアンダーライティング技術を生かした協業取り組みの実現(協業を通じた新規収益機会の創出・捕捉等)を追求する。これにより、バランスの取れたポートフォリオ拡大とリスク分散を背景にした収益力強化を進め、MS&ADHDの資本効率の向上とともに、三井住友海上はファミリーと共にWRB社、ひいては三井住友海上の企業価値向上に取り組むとしている。
 なお、同協力関係によるWRB社のオペレーションへの影響はなく、また、三井住友海上の既存米国損保事業は本協力関係の対象外で、既存米国事業の戦略やオペレーションに変更はないとしている。
 WRB社の President & CEO の W.Robert Berkley,Jr. 氏は今回の協力関係の締結について、「父ともども、再保険取引を通じ、長年にわたって関係を構築してきた三井住友海上に深い敬意を持っている。WRB社の長期的成功にコミットしている中、今回三井住友海上を株主として迎えることを歓迎する。三井住友海上による出資はわれわれのパフォーマンスと成長見通しに対する信頼の証でもある。三井住友海上の国際ネットワークも活用した、WRB社の企業価値向上に資する協業機会を共に追求していけることを楽しみにしている」とコメント。
 MS&ADHD取締役社長グループCEO、三井住友海上取締役社長の舩曵真一郎氏は「WRB社への出資機会を歓迎する。同社の米国スペシャルティ保険市場における素晴らしいトラックレコード等を踏まえて、今回協力関係を結ぶことにした。当社が持つ日本、アジア、その他市場における強みを生かした協業機会を追求し、両グループの企業価値向上に取り組んでいく」と述べた。
 (注)WRB社の普通株式は一定期間をかけて市場または市場外で第三者から順次取得(10%以上の取得は当局の承認を必要とする)。