2025.04.17 日本生命 NDBデータの利用承認を取得 「ニッセイ医療費白書」を自治体に無償提供 同時に健康リテラシー向上へ啓発活動も
日本生命は3月24日、ヘルスケア事業の一環として、匿名医療保険等関連情報データベース( National Data Base 、以下、NDB)のデータを活用した「ニッセイ医療費白書」を作成し、この秋頃から全国の自治体に広く無償提供を開始すると発表した。同時に健康リテラシーの向上に向けた啓発活動も開始する。NDBデータの利用承認の取得は金融機関初(注1)。
■ニッセイ医療費白書
NDBとは、2008年4月に施行された「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、医療費適正化計画の作成、実施および評価のための調査や分析などに用いるデータベースで、レセプト情報や特定健診・特定保健指導情報などを格納・構築している。
「ニッセイ医療費白書」は、NDBデータを活用し、五十嵐中(あたる)特任准教授(東京大学大学院薬学系研究科・横浜市立大学データサイエンス研究科)監修の下で作成された医療費分析レポートで、疾病ごとの有病率、患者1人当たり医療費、住民1人当たり医療費を集計、性・年齢調整することで、高齢化率等の要素を排除した医療費課題を可視化し、約1300自治体(各都道府県・人口1万人以上の市町村、東京都特別区ごと)の医療費の傾向を分析できる。
日本生命では「ニッセイ医療費白書」の作成・公表の目的は、自治体との関係強化やヘルスケア事業の拡大というところにはなく“地域への貢献”であるとしており、「客観的で有益な情報提供を通じ自治体の政策立案の一助になることと、そのことを通じて地域住民の健康増進へ貢献することを目指し、当社グループが掲げる『誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会』を実現していきたいと考えている」としている。今後、全国の支社や公務各部などと連携し、各自治体を中心に、広く無償提供を開始する予定。
■健康リテラシー向上に向けた啓発活動
健康リテラシーの啓発活動では、医療機関の適切な受診方法や患者の心構え、医療の知識などを啓発していくために、「賢い患者になろう(注2)」をコンセプトとした「新・医者にかかる10箇条」啓発冊子の配布と地域特性を踏まえた健康セミナーを開催する予定。また、血圧や血糖値などの日々の健康状態や服薬状況などを医療者へ正確に伝達する健康管理(PHR、注3)アプリの普及活動にも取り組む予定で、これにより、医療者との円滑なコミュニケーションと、生活習慣の改善が可能になるとしている。
高齢化社会の進展とともに、がん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病など、生活習慣病をはじめとした「慢性疾患」が大きく増加している。慢性疾患は、感染症などの「急性疾患」と比較すると、適切な服薬や生活習慣の見直しといった「患者自身の主体的な行動」が重要であり、そうした機運をより一層高めていくためにも、個人の健康リテラシー向上や、医療者と患者をつなぐ環境整備が不可欠といえる。また、医療技術の進歩に伴い、疾患に罹患(りかん)したとしても社会に復帰しやすい時代が到来しており、生命保険会社にも、「経済的な保障」に加えて、ヘルスケア事業を通じて患者に寄り添い「健康管理をサポートする役割」が、今後ますます求められている。厚生労働省の健康日本21(第三次)計画(R6―R17)でも、少子高齢化、生産年齢人口減少、高齢者の就労拡大など、社会の多様化が進むといった社会変化が予測されており、「健康寿命の延伸」「都道府県間の格差の縮小」などが目標として明記されている。
日本生命では、「当社は、これまでも『ニッセイ健康増進コンサルティングサービス(Wellness―Star☆)』を通じ、企業、自治体の健康増進取組を支援してきたが、今回の取り組みによって、分析から予防策の提供までトータルで支援することで、より一層地域の健康長寿社会づくりに寄与し、一人ひとりが生き生きと自分らしく暮らせる環境づくりに貢献していく」としている。
(注1)同社によると、銀行、金融証券取引業者(証券会社、アセットマネジメント会社等)、生命保険会社、損害保険会社の中で初。
(注2)認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(山口育子理事長)が提唱するコンセプト。日本生命は団体賛助会員として同団体を支援している。
(注3) Personal Health Record の略。個人の健康診断結果や服薬歴等の健康等情報を電子記録として本人や家族が正確に把握するための仕組み。