2025.01.23 損保ジャパン 気候リスク補償をオーダーメードで組成 損害保険による「適応ファイナンス」を提案
損保ジャパンは昨年12月24日、企業の経営や事業活動に大きな影響を与える気候リスクに対する補償をオーダーメードで組成して提供する取り組みを開始すると発表した。気候リスクに対する保険組成についての専門的な知見に関する情報を顧客に開示し、専門チームの下で保険組成から引受けまでを一貫して行う。気候リスクに対する適応ファイナンス(企業の気候変動への適応を促進するための金融サービスを提供するファイナンス手法)として提供し国内市場で普及させることで、顧客の気候変動への適応を支援するとともに、持続的な企業の経営と事業活動の安定化に貢献する。
地球温暖化による気候変動の影響で、夏季の猛暑日や大雨の回数が増えるなど過去に比べて極端な天候事象は増加しており、気候リスクは高まっている。気候リスクはさまざまな産業における企業の経営や事業活動に対して不確実な影響を与えるが、不確実性を抑制して安定化させるためには、損害保険を含む適応ファイナンスの活用が有効となる。
損保ジャパンでは、自然災害によって企業の建物や財物が直接的な損害を受けた場合の保険として火災保険を含む伝統的な損害保険を提供しているが、一方で、気候リスクの増大によって、企業の建物や財物に直接的な被害がなくても、事業活動における費用増大や売上減少などキャッシュフローの悪化に備えるためのリスクヘッジを目的とした損害保険を含むファイナンスに対するニーズは高まりつつある。こうした中、同社では、気候リスクに対する保険組成の取り組みを強化することで、顧客の適応を支援していく。
同取り組みでは、新たに、損保ジャパンの気候リスクに対する保険組成についての専門的な知見に関する情報を開示する。気候リスクに伴う事業リスクを保険で対応する選択肢があることを広く顧客に伝え、国内ではまだ普及が進んでいない保険の認知度向上につなげる。また、顧客にあらかじめ保険組成のイメージを把握してもらうことで、オーダーメードで保険設計するプロセスの効率化につなげ、保険組成から保険契約までの時間短縮を図る。
気候リスクに対する保険組成、引受けおよびリスクの管理については、専門チームの下で一元管理して対応する。気候リスクは現在進行形で高まっているリスクのため、リスクの傾向とボラティリティ(変動性)を見極める必要があり、保険を組成するためには専門的な知見と技術を要する。また、再保険を活用して引受けた保険リスクを分散させる必要がある。保険組成からリスク管理までを専門チームで一貫して対応し、健全な保険引受け体制の下で、顧客に最適な保険を提供していく。
気候リスクに対する保険では、気候リスクにつながる天候事象によって、事業活動における費用が増加または売上げが減少した場合の損害を補償する保険を提供する。顧客の損害と因果関係にある天候事象の発生を「保険事故」として定義し、「保険事故」が発生したことに伴う、顧客の実際の損害額に応じた保険金を支払う。
対象となるリスクの例として、▽電力小売事業者の「電力需要が増加する猛暑または厳冬時に、電力市場価格が高騰し調達にかかる費用が計画値を超過するリスク」▽自然再生エネルギー発電事業者の「太陽光発電、風力発電、水力発電など、例年にない異常気象によって、自然エネルギー資源が不足した結果、発電量が減少し利益が減少するリスク」▽工事発注者/工事事業者の「工事中断となる悪天候日数が計画を上回り、工事にかかる費用が計画値を超過するリスク」―を挙げており、これらの例以外にも、農業、レジャーまたは物流など、さまざまな産業における企業の気候リスクが保険の対象になるとしている。
同社では今後、気候リスクに対する保険組成の取り組みを強化することで保険組成のノウハウと知見の拡大・向上につなげていく考えで、さまざまな企業に対する適応ファイナンスとしての新たな選択肢を提供することで、顧客の持続的な経営または事業活動の安定化に貢献していくとしている。