2025.01.07 税制改正大綱に生命保険料控除拡充 2026年1年間の時限措置 子育て支援に関する政策税制の一環
政府は「令和7年度税制改正の大綱」を昨年12月27日閣議決定し、そのなかで令和8年(2026年)の時限措置として生命保険料控除制度の拡充が盛り込まれた。生命保険料控除制度の拡充は「安心な国民生活の実現」として金融庁主担、農林水産省・厚生労働省・経済産業省・こども家庭庁が共同要望していたもので、12月20日に与党の「令和7年度税制改正大綱」で採用されていた。
【生命保険料控除制度の拡充】
政府の「令和7年度税制改正の大綱」では、「物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行う。老後に向けた資産形成を促進する観点から、確定拠出年金(企業型DC及びiDeCo)の拠出限度額等を引き上げる」などの考え方が示された。金融庁関係の主要項目1の「「資産所得倍増プラン」・「資産運用立国」の実現」に関しては、「NISAの利便性向上等」「企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置」「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)(の検討)」が盛り込まれた。
生命保険料控除の拡充は、「子育て支援に関する政策税制」の一環として盛り込まれたもので、国税に関して、生命保険料控除拡充のほかに、▽住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除▽東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除▽既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除―が盛り込まれている。
生命保険料控除制度の拡充は、「子育て世帯は、安全・快適な住宅の確保や、こどもを扶養する者に万が一のことがあった際のリスクへの備えなど、様々なニーズを抱えており、子育て支援を進めるためには、生命保険料控除制度においても、こうしたニーズを踏まえた措置を講じていく必要」があるところから採用された。大綱で決定した内容はかねてから生保協会、金融庁が要望していたもので、「所得税法上の一般生命保険料について、居住者が年齢23歳未満の扶養親族を有する場合には、令和8年分における当該控除の最高限度額を6万円(現行4万円)とする」というもの。
「大綱」の資料によると、今回の税制改正による個人所得課税の減収見込額(平年)は合計で6570億円で、このうち「生命保険料控除の拡充」による減収は250億円となる(その他は「物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応」が5830億円、「住宅ローン控除の拡充」が290億円、「企業年金・個人年金制度等の見直し」が200億円)。
12月20日に発表された与党(自由民主党・公明党)の「令和7年度税制改正大綱」では、「個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、引き続き、格差の是正及び所得再分配機能の適切な発揮、働き方に対する中立性の確保、子育て世帯の負担への配慮といった観点から、歳出面を含めた政策全体での対応も踏まえつつ、人的控除をはじめとする各種控除のあり方について検討を行う。また、高校生年代の扶養控除及びひとり親控除については、令和8年分の所得税及び令和9年度分の個人住民税は現行制度を維持し、その見直しについては、児童手当をはじめとする子育て関連施策との関係、所得税の所得再分配機能等の観点や令和6年度税制改正大綱で示した考え方を踏まえつつ、令和8年度以降の税制改正において、各種控除のあり方の一環として検討し、結論を得る」とする基本的考え方が示されており、令和6年度税制改正大綱で高校生年代の扶養控除の見直しと併せて行うものとしていた①子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充②子育て世帯等に対する住宅リフォーム税制の拡充③子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充―については、「高校生年代の扶養控除の取扱いを踏まえてそのあり方を検討することとなるが、今般、1年間の時限的な措置として対応する」として令和7年度(25年度)の大綱に盛り込んだとしている。
なお、生保協会では、与党が12月20日に「令和7年度税制改正大綱」を発表した際、「本日公表された『与党「令和7年度税制改正大綱」』において、子育て世帯に対する生命保険料控除制度の拡充として、令和8年の所得税において、新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)の適用限度額に2万円の上乗せ措置を講ずることが示されました。当会では、長年にわたり、国民の多様な生活保障の準備を税制面から支援する生命保険料控除制度の拡充を税制改正の重点要望項目としてきました。今回の制度改組は、子育て世帯の自助の促進を後押しすることにもつながるものであり、大いに歓迎すべきものと考えています。当会としては、これを契機に国民の自助努力による生活保障準備がより一層進むよう尽力していきます」とするコメントを公表している。
【異常危険準備金制度の充実】
「令和7年度税制改正の大綱」では、金融庁関係の主要項目3の「安心な国民生活の実現」にある「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」も盛り込まれた。
金融庁によると「損害保険会社の異常危険準備金については、大型台風、雪害、洪水等の自然災害への保険金支払いが近年増大しており、その残高が低水準となっていることから、十分な残高の確保・維持を図る措置が必要」とされたところから、▽「火災・風水害」及び「動産総合・建設工事・貨物・運送」の区分に係る無税積立率の割増措置を3年延長する▽低水準となっている残高を早期回復し、高額化する保険金支払いを踏まえた残高を確保する観点から各保険区分の残高管理(取崩単位等の適用区分)を一本化するとともに、取崩基準損害率を55%(現行50%)に引き上げる―ことが盛り込まれた。