2024.12.27 損保協会 第三者による代理店業務品質評価 業界共通枠組みを構築 「評価指針案」を公表、意見募集
損保協会では、この9月から「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」を設置し、損害保険代理店の業務品質を中立的な第三者が公正かつ適正に評価できる仕組みの構築に向けて検討を進めてきていたが、12月20日、制度概要を整理するとともに、その運営の手引きとなる「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」案等を取りまとめ公表した。来年1月20日午後5時を締め切りに意見公募を開始している。2025年度(25年4月1日~26年3月31日)にトライアル運用を実施して所要の見直し検討を実施したうえで、26年度から本格運用を開始する予定。
2023年に発生した保険金不正請求事案等を通じて、保険代理店に対する損害保険会社による教育・管理・指導が実質的に機能しておらず、顧客本位の業務運営が実現できていなかったことが判明した。第三者による代理店業務品質評価を行う業界共通の枠組みの構築については、本年6月25日に金融庁ホームページで公表された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書で、代理店指導等は損害保険会社の責務である一方、特に大規模な保険代理店にあっては、その影響力の大きさから適切な指導等が行われないおそれがあるとして、損害保険会社による保険代理店に対する指導等を補完する枠組みとして、代理店業務品質の「第三者評価」の創設(すべての保険代理店への指導等に活用できる評価基準の策定を含む)が提言された。そこで、損保協会内に大学教授、弁護士および消費者団体を構成メンバーとする第三者検討会を設置のうえ、9月から12月にかけて計4回の会合を開催し検討を重ねてきた。
損保協会による「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(案)は、顧客本位の業務運営の徹底の観点で、すべての顧客にとって適切な営業活動が行われるよう、これまで以上に業務品質を重視した顧客目線での代理店評価が実施され、代理店の業務品質が継続的に向上していくよう、業界共通の評価基準を策定するものとされ、また、損保会社の代理店指導等を補完する仕組みとして、当事者(損保会社および代理店)と利害関係のない中立的な第三者が代理店の業務品質を評価する「第三者評価制度」を実施するものとされた。第三者評価は、代理店において最低限必要な業務品質が確保されているかどうかを確認・検証する評価運営とし、損保協会内に「代理店業務品質評議会」を設置し、業界団体機能から独立して制度運営するとしている。
評価基準は、第三者評価での評価基準となるほか、損保会社における代理店指導等において活用(代理店手数料ポイント制度への評価基準との連動を含む)される想定で、法令等遵守および顧客本位の業務運営を主旨として、業務品質を四つの要素に区分し、「顧客対応(①法令等遵守・顧客本位の業務運営・顧客最善利益義務②意向把握・確認義務③情報提供義務④募集時の禁止行為・著しく不適当な行為⑤高齢者募集⑥障がい者募集⑦顧客の利便性向上に向けた態勢整備状況⑧募集資料等の適切な管理⑨勧誘方針⑩募集人に対する教育・管理・指導)」「アフターフォロー(①契約管理②保険事故発生時の対応③苦情の対応・管理④更改(継続)率等の把握・分析)」「個人情報保護(①個人情報管理②個人情報保護に係るシステム面の整備)」「ガバナンス(①コーポレートガバナンスに関する態勢整備②コンプライアンス推進に係る態勢整備③従業員管理・従業員満足度向上に向けた取組み)」としている。公正競争確保の観点から、法令等遵守および顧客本位の業務運営に関する項目・内容としており、業務品質の高度化に資する項目・内容は、第三者評価での評価対象とはせず、損保各社で任意に設定・評価する。一連の問題を踏まえ、便宜供与の適正化や利益相反管理などの評価項目を追加し、誠実・公正義務や比較推奨、独占禁止法遵守などと併せて重点項目とした。
また、評価基準は、すべての代理店を対象とし、代理店の規模や特性に応じて、必要かつ十分な評価ができるよう、機械的・画一的な適用がされないよう工夫した内容とするとしており、「自己点検チェックシート」で具現化する。
第三者評価制度の運営については、評価の対象は、大規模代理店を中心に、代理店の自己点検チェック結果や外部等からの情報提供に基づいて、リスクベースで抽出する(大規模代理店に限定しない)。オフサイト評価を中心としつつ、より厳格な体制整備等が求められる代理店にはオンサイト評価を実施する。
代理店の自己点検チェックを第三者評価制度の基礎的部分に位置づけるとともに、自己点検チェックを保険会社(乗合代理店の場合の非代申会社を含む)の代理店指導等に活用し、その際には保険会社と代理店の対話を促すことにより、顧客本位の業務運営の実践を図るとしている。
第三者評価制度の透明性確保および実効性向上の観点から、第三者機関として①評価結果の公表(制度の運営状況に関する情報開示)②監督当局(金融庁・財務局等)との情報連携③不適切事例に関する通報等窓口の設置―の対応を行う。
なお、評価指針案等の公表にあたり、「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」では、以下の「付帯意見」を決議している。
「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」案に関する付帯意見
このたびの「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」案に関する意見公募に際し、当検討会の総意として、次の3点について付帯意見を述べる。
1.損保会社においては、本制度の導入に至った経緯および趣旨を十分に認識したうえで、その円滑な導入に向けて組織レベルでの取組みを検討し、実行する必要があること。
2.特に、真の意味での顧客本位の業務運営の実践に向けては、保険会社と代理店での対話を繰り返すことが重要であること。
3.損保協会においては、トライアル運用において、保険会社と代理店の実情を把握したうえで、それら状況を踏まえた実効的な制度構築に向けて、評価指針の内容を充実させること。