2024.12.04 東京海上HD 災害レジリエンス向上、気候変動対策推進期す 建設コンサルのID&Eを子会社化 コンサル・都市空間・エネ事業で高い技術力

 東京海上ホールディングス(以下、東京海上HD)は11月19日開催の取締役会で、コンサルティング事業、都市空間事業、エネルギー事業のID&Eホールディングス(東京都千代田区、以下、ID&EHD)の完全子会社化を目指し普通株式を11月20日から来年1月15日の期間、公開買付け(TOB)により取得することを決議したと発表した。一方、ID&EHDも同日開催の取締役会でこれに対して賛同の意見を表明するとともに、同社の株主に対して本公開買付けに応募することを推奨する旨を決議したと発表した。買付価格は1株当たり6500円で公開買付総額は978億900万円。
 ID&EHDは、日本工営㈱、日本工営都市空間㈱、日本工営エナジーソリューションズ㈱などを中核に、国内46拠点、海外43拠点(アジア、欧州、中東・アフリカ、中南米)を有し、2024年6月期売上収益が1589億円、当期利益が96億円を挙げている。資本金は24年10月25日現在で75億円、グループ連結従業員は24年6月30日現在で6648人。
 主要事業は、①コンサルティング事業②都市空間事業③エネルギー事業―の三つで、①のコンサルティング事業では、中央省庁、地方自治体、JICA、民間企業等を顧客に、160以上の国・地域で社会資本整備の事業を展開。 河川・資源、防災・減災、交通計画、地質・地盤、計画立案、設計などのコンサルタント事業を推進している。幅広い技術分野の総合力とネットワーク、高い技術力を持つ人財、最先端の研究開発―などに強みがある。24年6月期実績は、売上854億円、営業利益106億円。
 ②の都市空間事業では、中央省庁、地方自治体、民間企業等を顧客に、土木・建築にまたがる技術と経験を生かし、都市の総合的プロデュースに関わることで、サステナブルな都市・地域づくりを展開。都市再生、都市整備、建築、社会基盤、用地補償などのコンサルタント事業を推進している。土木と建築を融合した提案、分野横断によるまちづくり、地域に根差した課題解決―などに強みがある。24年6月期実績は、売上444億円、営業利益19億円。
 ③エネルギー事業では、電力会社、地方自治体、民間企業等を顧客に、エネルギーを核に、一環した体制と技術力で多様なニーズ・新たな価値創造を展開。エネルギーマネジメント(蓄電池、省エネサービス等)、水力発電所・変電所システム、電気設備工事、電力コンサルティングを推進している。ワンストップのエネルギーサービス提供、欧州で培ったエネルギーマネジメント―などに強みがある。24年6月期実績は、売上279億円、営業利益24億円。
 東京海上HDは公開買付にあたり、「『災害レジリエンスの向上』『気候変動対策の推進』に向けたさらなる事業の拡大と顧客への価値創造を目指す上では、社会の強靭化に直結するような工学技術に基づいた計画・企画、評価、設計、調査、監理、維持管理、マネジメント、コンサルティング等などの経営資源(人財、実績、実務経験、ノウハウ、技術力、研究開発力など)が不可欠だという認識に至った。これらを保険と組み合わせることで、災害リスクの評価・把握や温室効果ガスの排出量の可視化といった『現状把握』、都市計画・防災設計・ハード対策(物理的な自然災害対策)やエネルギー最適化といった『対策実行』、財物・工事・利益補償といった『経済的補償(保険金支払い)』、被災からの早期復旧再建・ビルドバックベター(災害発生後の復旧・再建の段階で、次の災害発生に備えて災害発生前よりも強靭な復興を目指す考え方)・再発防止や施設の運営維持管理といった『復旧・維持管理』という、社会の強靭化に関わる四つの各領域でソリューションを一体的にお客さまへ提供することが可能になる。こうした認識のもと、四つの領域における一気通貫のソリューション提供の実現に向けて、外部の企業との提携を模索・検討してきた」としており、「20年8月から22年7月までの間、ID&EHDとの協業や議論を通じてID&Eグループの強みとして、①技術力をもとに国・自治体向けに安定した事業基盤(日本における建設コンサルティング業界首位であり、10年3月期以降において連続増収している)を有すること②社会の強靭化の実現に直結するソリューションを既に実装し展開していること③ID&EHDの『多様な技術の統合により、強靭な社会を実現する』という考えは東京海上HDの目指すところにも合致すること等を確認・理解した」としている。
 東京海上HDは、中期経営計画で掲げた「価値提供領域の飛躍的な拡大」や「災害レジリエンスの向上」「気候変動対策の推進」を通じた「社会的価値」と「経済的価値」の創出が可能になることにもつながるとし、期待されるシナジー効果・メリットとして、①東京海上グループの顧客基盤・チャネルネットワークの活用②東京海上グループの資本政策や財務基盤の活用③東京海上グループの人財の活用―を挙げている。同社では、ID&Eグループの従業員については、原則として現在の雇用条件を維持することを予定している。「ID&Eグループが長年にわたり手掛けてきた公共事業・公益事業、政府開発援助等を含む従来の事業構成を引き続き継続していただきたい。『防災コンソーシアム(CORE)』等でのこれまでの協業を通じて、ID&Eグループの技術力と競争優位性を評価し、またID&Eグループの経営理念や「多様な技術の融合により、強靭な社会を実現する」という方向性に対して共感・理解している。こうした理解を背景に、ID&Eグループの自主独立性を最大限尊重しつつ、引き続き『世界をすみよくする』というID&Eグループのミッションを共に推進できるものと認識している」としている。