2024.11.20 金融庁 金融審・損害保険業等に関する制度等WG第4回 企業内代理店のあり方を討議特定契約比率規制見直しへ 経過措置撤廃、特定者範囲の拡大案提示

 金融庁は11月15日、中央合同庁舎第7号館およびオンラインで金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(座長:洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)の第4回会合を開催した。企業内代理店のあり方など五つの論点について討議が行われ、企業内代理店については、特定契約比率規制の見直し案として、一部の損害保険代理店に経過措置として適用されている特例的な計算方式の撤廃や特定者の範囲拡大などが提示された。
 企業内代理店(機関代理店)とは、保険業以外の事業を営む大企業などの子会社代理店を指し、6月に公表された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書では、損保代理店である一方、損保会社の法人契約者と人的・資本的に密接な関係にあることから立場が不明確であり、今回の議論の発端となった大手損保による企業保険分野での保険料調整行為事案において、独占禁止法の抵触リスクを高める一要因になるおそれがあると指摘。また、企業内代理店の中には、損保会社が適切に指導等を行うことが困難であるため代理店としての実務能力の向上が図られていない半面、グループ企業などに保険募集を行って一定の手数料収入を得ることによって存続している実態もあり、その結果、企業向け保険市場における保険仲立人や他の代理店の参入の妨げとなって競争環境に歪みが生じているとして、企業内代理店の立場の明確化や情報共有ルールの策定、実務能力の向上、自立の促進などを求めていた。
 一方で、同報告書や第1回WGでの各委員の意見として、グループ企業で働く従業員向けの団体保険等の提供を通じて福利厚生の担い手になるとともに、グループのリスク状況をよく理解している立場からリスクマネジメントを進める上で重要な機能を持つほか、グループ外への保険募集を拡大させる方針を掲げるなど、自立を図ろうとしている企業内代理店も存在しており、果たすべき役割や意義がグループによって異なることから、多様なあり方を認めてよいのではないかといった指摘もあった。
 これらの意見や金融庁が企業内代理店などに行ったヒアリング結果を踏まえ、事務局では、企業内代理店の自立を促す観点から、実質的な保険料の割引・割り戻しを防止する目的で損保代理店に課している特定契約比率規制を見直して、経過措置の撤廃や「特定者」の範囲拡大、同規制の適用除外などといった対応の方向性を示した。
 特定契約比率規制とは、損保代理店が自らと人的・資本的に密接な関係を有する者を保険契約者等とする保険契約(特定契約)のボリュームを一定割合に制限するもので、取扱保険料全体の30%を超えれば速やかに改善するよう保険会社による指導が求められ、50%を超えると実務上は各保険会社の内務規則等に従い、代理店委託契約の解除等の措置が講じられる。また経過措置とは、現行の規制枠組みが設けられた際に、1996年(平成8年)3月31日以前に設立された等の要件を満たす一部の損保代理店に適用されている特例的な計算方式(旧基準)で、特定契約の対象を火災保険、自動車保険および傷害保険契約(医療費用保険および介護費用保険を含む)の3種目に限定することや、特定者が複数いる場合に特定契約に係る保険料を各特定者の保険料の合算とせずに、特定者ごとの保険料としてそれぞれ特定者の割合を計算して、そのうち最も高い特定契約比率とすることを定めている。
 今回、経過措置が設けられてから四半世紀以上が経過し、その間に賠償責任保険やサイバー保険といった新種保険の需要増加など近年の企業向け保険市場の環境が大きく変わりつつあることから、経過措置を撤廃して基準を統一するとともに、旧基準が適用されていた代理店には3年程度の準備期間を設定することを提案した。
 また、特定者の範囲拡大については、現行規制の「特定者」の範囲である「法人である損保代理店と役職員の兼務関係(非常勤、出向および出身者〈当該法人を退職後3年未満の者〉を含む)がある法人」「法人である損保代理店への出資比率が30%を超える者等」を「連結決算の対象となるグループ会社の範囲全体」に見直す案を示した。
 一方で特定契約比率規制の適用除外として、多種多様な企業内代理店の実態を鑑み、①取り扱う保険契約の規模に応じた、グループ外を含めた契約者等の保護を確保するのに必要な態勢(法令等遵守責任者の配置や法令等遵守に係る社内ルールの策定といった法令等遵守管理態勢の整備、企業グループ内取引においても公平・公正な保険募集を行うことのできる募集管理態勢の構築、一定数以上の保険募集人の配置等)が整備されているなど、保険代理店として十分な実務能力を有しており、親会社等からの自立が図られていると認められていること②企業内代理店が受け取る手数料が保険代理店の業務品質・手数料の妥当性の基準をもって保険会社が当該代理店と合意するなどの手法により、当該代理店が実際に提供する役務に見合った額となっているなど、親会社等を保険契約者とする保険契約に係る保険料の実質的な割引が生じていないと認められること―といった二つの要素を考慮して問題ないと考えられる企業内代理店については、同規制の適用除外とする案を提示し、各委員に検討を求めた。
 会合ではこのほか、乗合代理店における比較推奨販売の適正化、損害保険分野における自主規制のあり方、火災保険の赤字構造、第3回WGでの議論を踏まえた考え方の再整理についての対応の方向性が事務局から提示された。各委員、オブザーバーからはそれぞれの論点についてさまざまな意見が表明され、会合は予定時間を大幅に超えて終了した。