2024.11.05 金融庁 金融審・損害保険業等に関する制度等WG第3回 保険会社・顧客双方からの手数料受領を検討 保険仲立人の活用促進で議論 海外直接付保規制の緩和も
金融庁は10月30日、会場である中央合同庁舎第9号館とオンラインで、金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(座長:洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)の第3回会合を開催した。保険仲立人の活用促進に向けた施策が議論され、保険契約締結の媒介に関する手数料を保険会社と顧客の双方から受領できるようにする案や、海外直接付保規制を緩和して、保険契約締結の媒介ができる範囲を拡大する案などが検討された。
保険仲立人をめぐっては、大手損保による企業保険分野での保険料調整行為事案などが発端となって今年3月~6月にかけて開催された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」の報告書において、健全な競争環境の実現や企業向け保険市場のさらなる発展を図る観点から、企業による利用が進んでいない保険仲立人の活用促進のための施策を検討することが求められていた。また、9月27日の第1回WGにおいても、「日本企業の中でリスクマネジメントの意識が高まる中、顧客の立場に立って最適なリスクマネジメント手法を提案できる保険仲立人の活用を進めていくべき」などの意見が挙がっていた。
第2回WGの日本保険仲立人協会によるプレゼンテーションの中で示された検討要望事項を基に、今回のWGの冒頭で事務局が保険仲立人の活用促進に向けたいくつかの施策を提案。媒介手数料の受領方法については、現行では監督指針の規定により、保険仲立人は全額を保険会社等に請求し、顧客に請求してはならないことになっているが、本来、保険仲立人は顧客から委託を受けてその顧客のために保険契約の締結の媒介を行うことから、保険仲立人が保険会社だけでなく、顧客からも手数料を受領できるよう規定を削除し、手数料の受領先や金額については三者で調整するなどして決めるといった対応の方向性が示された。
また、保険仲立人による海外直接付保案件での媒介についても現行の規制を見直す案が提示された。保険業法では保険契約者保護の観点から、原則として再保険、外航船舶・貨物、商業用航空等を除き、日本に支店等を設けない外国保険業者が日本に住所・居所を有する人等に係る保険契約を締結することを認めていない。ただし、保険契約者は自ら当局に申請し、国内で同等または有利な条件の保険を調達できないこと等を当局が個別に審査して許可を与えた場合、例外的に外国保険事業者と保険契約を締結できる。
ただその場合、契約者は日本国内の保険会社が当該保険契約の締結と同等または有利な条件の保険が調達できないことを証明すること等が求められ、契約者の実務的負担が大きいことから、実際の当局への申請件数はわずかにとどまっており、事業会社の柔軟な保険契約の妨げになっている、との指摘がある。また、そうしたケースでは保険仲立人がその契約の媒介を行うことはできない。
事務局では、事業会社が抱えるリスクが多様化する中、海外の保険市場からの調達を含め事業会社が適切な保険の調達を確保することは重要な課題だとする一方、国際的なネットワークを有している保険仲立人には海外保険市場に精通している事業者が多い他、顧客に対する誠実義務が課されていることから、海外直接付保において保険仲立人を活用することで顧客の利益を害する可能性は低いと説明した上で、国内で同等または有利な条件の保険が調達できないこと等を保険仲立人が契約者に代わって確認した場合には、当局が保険仲立人の確認書を十分に斟酌して審査を行い許可した上で保険仲立人が当該許可に係る保険契約の締結の媒介を可能とする案を示した。
この他、「過去3年間の手数料等の合計金額(最低2000万円~最高8億円)」などと定められている「保証金の供託」について、保証金の最低金額を1000万円に引き下げ、「過去3年間の手数料等の平均金額」にする案や、現状では保険仲立人に認められていない保険代理店等との協業(同一契約での共同取扱い)を認める案なども提示した。
これらの活用促進施策について、委員からは大筋で賛同する意見が目立ち、その上で諸策の制度運用に当たって懸念される箇所を指摘するコメントが多く寄せられた。また活用促進策の一方で、現行の保険業法において、保険仲立人は当局に不祥事件を届ける義務がなく、当局が即座にそうした問題を把握することが困難なことから、保険仲立人が不承事件を起こした場合には、当局にその旨を届け出る義務を課す案も出され、多くの委員から賛同を得た。
今回のWGでは他に、保険契約者等に対する便宜供与の解消に向けた対応策、保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応や、大規模な乗合保険代理店への対応といった、第2回WGでの議論を踏まえた考え方の整理について話し合われた。