2024.10.08 損保協会 第1回「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」開催 業務品質評価の基本的考え方提示 評価基準策定し中立的な第三者が制度運営

 損保協会は9月25日、損保会館理事会室で第1回「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」(嶋寺基座長)を開催、 古笛恵子委員、中出哲委員、永沢裕美子委員、唯根妙子委員出席のもと、①第三者評価制度の全体像②「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(骨子案)―について事務局から説明があり、意見交換が行われた。オブザーバーとして金融庁、日本代協も参加した。公表された議事録によると、第三者評価制度の全体的な方向性についてはおおむね賛同する意見が相次いだ。次回は10月21日の開催予定で、評価基準の検討(項目の確定、指標の検討)が行われる予定。
 ■検討の背景
 損保協会の「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」は、金融庁の「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書(2024年6月25日)で「損害保険会社による保険代理店に対する指導等を補完する枠組みの構築を検討すべきである。例えば、保険代理店の業務品質を保険代理店と利害関係のない中立的な第三者が一定の基準に基づいて公正かつ適切に評価する業界共通の枠組み(以下「第三者評価」という。)を設けることを検討すべきである」と指摘されたところから、「損保業界において、保険会社による代理店指導等を補完する枠組みとして『代理店の業務品質に関する第三者評価制度』を創設し、代理店の業務品質確保を図るとともに、顧客本位の業務運営の徹底を通じて消費者からの信頼回復に取り組んでいく」というもの。損害保険代理店の役割と代理店制度の変遷についての振り返りが示されたのち、業務品質評価の基本的考え方が提案された。
 ■代理店の業務品質評価の基本的考え方
 事務局提案の「代理店の業務品質評価の基本的考え方」では、「これまでの代理店制度の歴史の中で、損害保険代理店は、保険会社からの業務委託先として、その管理・指導の下で行う保険募集の業務内容に関して、保険会社による評価を受けてきた。一方、顧客本位の業務運営の実現・徹底の観点から今回発生した業界問題を見たとき、現在の保険会社の代理店評価のあり方については、業界を挙げて見直しを行う必要が生じていると言えるのではないか。すなわち、損害保険市場の健全な発展のため、すべての顧客にとって適切な営業活動が行われるよう、これまで以上に業務品質を重視した顧客目線での代理店評価が実施され、また、その業務品質レベルが継続的に向上していくよう、業界レベルでの取組みを行っていくことが重要と考えられる」とし、「以上の背景および問題意識を踏まえ、代理店の業務品質のうち、顧客本位の業務運営に関する項目について、業界共通の評価基準(項目・指標)を策定する」としている。公正・客観的なプロセスとなるよう、広く情報を公開して代理店等の関係者からも意見を求めるほか、基準策定後は、保険会社や代理店と利害関係のない中立的な第三者がその制度運営を行うこととするとしている。
 ■第三者評価(制度運営)の仕組み
 制度運営の仕組みとしては、「当事者(保険会社および代理店)と利害関係のない中立的な第三者による制度運営とする。サステナブルな運営体制とするため、外部の有識者(学識経験者・消費者代表・弁護士)等で構成する『代理店業務品質評議会』(仮称)を損保協会内に設置して、業界団体機能から独立して制度運営することとしてはどうか」とし、業界団体による中立的な制度運営の事例として、金融ADR制度、生保業界の「代理店業務品質評価運営」の事例を挙げている。制度運営については「損保協会での制度運営以外の方法としては、たとえば別法人による運営形態が考えられるが、運営コストやガバナンスのあり方などが課題」「損保会社を構成員とする損保協会は、意思決定機構として、社員総会、理事会その他の委員会を有している。この点、中立的な第三者が理事会から権限委任を受けて業務執行することで、業界団体からの実質的な独立性は確保される」「その他、第三者評価を適切に業界団体機能に連携することで、業務改善取組みに役立てることができる等、メリットも期待できる」と考察している。
 ■「評価指針」の作成
 事務局案では「第三者評価制度は、公正性と透明性を確保する観点から、『評価指針』を作成・公表して運営することとしてはどうか」としており、「評価指針は第三者評価制度運営における手引書となるほか、評価基準に関する内容については、代理店における自己点検チェックや保険会社における代理店監査でも参照される想定」としている。
 評価指針の主な構成および内容については、「基本的な考え方」として「業務品質評価に関する基本的考え方、評価指針の位置づけ等について記載する。金融庁の有識者会議報告書を踏まえ、損害保険各社における代理店評価(手数料ポイント制度等)でも業務品質を重視した基準として連動させることが考えられる旨を記載する」としており、評価基準(評価項目および評価指標)は「代理店の業務品質のうち、顧客本位の業務運営に関する項目について、業界共通の評価基準(項目・指標)を記載する」、第三者評価制度の運営は「『代理店業務品質評議会』による制度運営に関する業務規程に相当する内容を記載する」としている。
 ■第三者評価の対象先・基準・評価者等
 第三者評価制度では、評価基準は共通基準(「評価指針」に基づく運用)としつつ、大規模代理店と「すべての代理店」に分けての運営を考え、大規模代理店(保険業法施行規則236条の2に規定する規模が大きい特定保険募集人)については、評議会(第三者機関)が評価の主体となり、「オフサイト評価を中心としつつ、より厳格な体制整備等が求められる代理店(要件は別途整理)についてはオンサイト評価を実施する。対象先は、大規模代理店を中心に、自己点検チェック結果や外部等からの情報提供に基づいて、リスクベースで抽出する(大規模代理店に限定しない)」としており、「すべての代理店」については、保険会社が評価の主体となり、「代理店による自己点検チェック結果を保険会社が確認し、指導等に役立てる。損保協会でも自己点検チェック結果をフォローアップし、第三者評価の制度運営に活用する」としている。
 ■評価基準の概要、運営上の留意点
 第三者評価制度における評価基準は、保険会社間の公正な競争を阻害することがないよう十分に留意し、代理店の業務品質のうち、顧客本位の業務運営に関する項目・内容に限定するとし、①評価項目や分類は、生保業界の「代理店業務品質評価運営」を参考に検討する②損保業界における第三者評価制度は、代理店として遵守すべき法令等や最低限クリアすべき要件に沿って適切な業務運営が行われているか(業務品質が確保されているか)を確認するものであり、生保業界の制度目的とは異なるものとなる―としている。
 実際の制度運営も、代理店の主体的な取組み(規模・特性に応じた創意工夫)を尊重しつつ、顧客本位の業務運営が徹底されるよう、評価基準を機械的・画一的に適用することがないよう配慮するとし、①代理店の規模や特性に応じて、必要・十分な評価基準となるようにする(例えば、規模が大きな代理店ほど評価項目が多く、評価指標のレベルも高くなると考えられる)②第三者評価(自己点検チェックを含む)を活用して、代理店自らのPDCAサイクルや保険会社による適切な指導の実効性を高め、代理店の業務品質を確保・向上する―としている。
 ■検討スケジュール
 「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」では以後、第2回(10月21日)で評価基準の検討(項目の確定、指標の検討①)、第3回(11月13日)で評価基準の検討(指標の検討②、その他)、第4回(12月9日)で「評価指針」案の取りまとめ、25年1月に「評価指針」案に関するパブリックコメント実施、2月(第5回)にパブコメ結果の確認等、3月(第6回)に「評価指針」確定―というスケジュール予定で、準備や周知を経て2026年度からの運用開始を目標としている。
 なお、第1回検討会の各委員の発言要旨等の議事録、「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(骨子案)は、損保協会のホームページで公開されている。