2024.09.10 金融庁 令和7(2025)年度税制改正要望 生命保険料控除の拡充と火災保険異常危険準備金充実が主要項目に

 金融庁は8月30日、令和7(2025)年度税制改正要望についてとりまとめ公表した。「安心な国民生活の実現」のテーマで、「生命保険料控除制度の拡充」と「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」が主要要望項目となった。
 令和7(2025)年度税制改正要望における主な要望項目は、①「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現(▽NISAの利便性向上等▽企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置〈厚生労働省主担〉▽上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し▽金融所得課税の一体化〈農林水産省・経済産業省が共同要望〉―の4項目)、②「世界・アジアの国際金融ハブ」としての国際金融センターの実現(クロスボーダー投資の活性化に向けた租税条約等の手続の見直し)、③安心な国民生活の実現(▽生命保険料控除制度の拡充〈農林水産省・厚生労働省・経済産業省・こども家庭庁が共同要望〉▽火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実―の2項目)となった。
 「生命保険料控除制度の拡充」については、「現状及び問題点」として「子育て世帯は、安全・快適な住宅の確保や、こどもを扶養する者に万が一のことがあった際のリスクへの備えなど、様々なニーズを抱えており、子育て支援を進めるためには、生命保険料控除制度においても、こうしたニーズを踏まえた措置を講じていく必要」とされ、「令和6年度税制改正大綱(自由民主党・公明党、2023年12月14日)において「子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充」として示された内容で本年度措置すること」が要望事項とされた。「生命保険料控除における新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講ずること」と業界で要望している内容。
 また、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」については、「現状及び問題点」として「損害保険会社の異常危険準備金については、大型台風、雪害、洪水等の自然災害への保険金支払いが近年増大しており、その残高が低水準となっていることから、十分な残高の確保・維持を図る措置が必要」とされ、▽「火災・風水害」および「動産総合・建設工事・貨物・運送」の区分に係る無税積立率の割増措置を延長すること(24年度末で期限切れ)▽低水準となっている残高を早期回復し、高額化する保険金支払いを踏まえた残高を確保する観点から各保険区分の取崩単位を一本化するとともに、取崩基準損害率を55%(現行50%)に引き上げること▽「火災・風水害」の区分の無税積立率(現行10%)や洗替保証率(現行30%)について引き上げること(無税積立率は10%↓12%、洗替保証率は30%↓40%を要望)―が取り上げられた。
 その他の要望項目で保険関連では、「破綻保険会社等から協定銀行が不動産を取得した場合の不動産取得税の非課税措置の恒久化又は延長〈財務省が共同要望、日切れ関連〉」「保険会社に係る収入金額による外形標準課税方式の維持」「死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ」がある。
 なお、①「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現―で「NISAの利便性向上等」では、「国民の安定的な資産形成を引き続き支援していくため、NISAに関する手続のさらなる簡素化・合理化や対象商品(ETF)の要件の見直しなどに取り組み、利便性の向上を図る必要」とされ、「口座開設10年後の所在地確認のデジタル化・簡素化」「金融機関変更時の即日買付」「つみたて投資枠におけるアクティブETFの要件の整備」「つみたて投資枠におけるETFの最低取引単位の見直し」が要望された。
 また、「企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置」では、「個人型確定拠出年金(iDeCo)については、『経済財政運営と改革の基本方針2024』(令和6年6月21日閣議決定)や『新しい資本主義のグランドデザイン』(令和6年6月21日閣議決定)では、拠出限度額および受給開始年齢について24年中に結論を得る、拠出限度額の引上げ等について大胆な改革を検討し結論を得るなどとされている。こうした状況を踏まえ、私的年金制度の見直しに伴い、税制上の所要の措置を講ずる必要がある」とし、「家計のさらなる安定的な資産形成に資するため、企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置を講ずること」とされた。
 「上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し」では「上場株式等の物納に係る手続について、納税者が利用しやすいよう特例を措置すること。また、上場株式等について、相続税評価方法等の見直しを行うこと」と要望、「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」では、「証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所が20年7月に実現したことを踏まえ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備を図り、家計による成長資金の供給拡大等を促進する観点から、金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること」が要望されている。