2024.09.04 金融庁 「2024事務年度金融行政方針」公表 保険市場の回復と健全な発展図る 9月中~下旬に金融審議会WGがスタート
金融庁は8月30日、「2024事務年度金融行政方針」を公表した。保険会社の課題への対応では、「保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて」と「経営基盤の強化と健全性の確保等」が取り組みの中心になり、保険市場の信頼の回復と健全な発展については、大規模な保険代理店への監督の実効性向上等の対応を進めるとともに、保険代理店や保険仲立人に関する規制の在り方などを見直す。今後、9月中旬から下旬のうちに金融審議会ワーキンググループがスタートする。
「2024事務年度金融行政方針」では、国内外の経済社会の構造上の変化や金融経済情勢等の不確実性の高まりを展望しつつ、金融行政の施策・手法を不断に見直し、改革を迅速に進めていくとしており、①金融メカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する②金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する③金融行政を絶えず進化・深化させる―といった三つの柱で構成される。
金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能の確保では、業態横断的な課題への対応と共に業態別の課題への対応が記されており、保険会社については、①保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて②経営基盤の強化と健全性の確保等―の2点を記載。保険市場の信頼の回復と健全な発展では、旧ビッグモーター社による保険金不正請求事案、大手損保による企業保険分野での保険料調整行為事案をめぐって実施された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」での意見を取りまとめ、6月に公表した報告書を踏まえ、「第三者による評価の仕組みの導入等による損害保険会社の大規模代理店に対する指導等の実効性の向上や保険会社による自社商品の優先的な取扱いを誘引する便宜供与の解消、保険会社における適切な保険金支払管理態勢の確保、企業内代理店の実務能力の向上や自立の促進などについて、今後、必要な調査・分析を行った上で、監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正等を進める」としている。
さらに、「金融審議会において、大規模な保険代理店における態勢整備の厳格化、保険仲立人の活用促進、企業向け火災保険の赤字状況等の論点について、制度改正の必要性を含め、具体的な対応を検討する。大手損害保険会社各社の業務改善計画については、その着実な実施と実効的な改善に向けフォローアップを行う。生命保険会社においては、代理店監督のさらなる高度化を目指す」とある。金融審議会については、9月中~下旬をめどに1回目のWGを開催する予定。月1、2回程度のペースで議論し、年内の取りまとめを目指す。議論の結果、法改正が必要な対応については、来年の通常国会に改正案が提出されるとみられる。
また金融庁によると、昨今、次々と明るみになった保険代理店・保険会社間での情報漏洩問題については、モニタリングで実態把握に努めている段階であり、今後の進捗状況次第であるものの、現時点では金融審議会などで法改正を視野に入れた議論を行うことは想定していないという。
一方、経営基盤の強化と健全性の確保等については、「保険会社には、顧客ニーズに的確に応えた質の高い保険サービスを提供するとともに、少子高齢化や自然災害の頻発・激甚化、自動車保険市場の縮小等の中長期的な事業環境の変化を見据え、顧客基盤の強化や収益の補完に向けた取組等を通じて、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められる」と記載しているほか、「保険会社の海外進出及び子会社の設立等が進む中、内部監査の高度化、グループ・グローバルのガバナンスの高度化を進めることも重要である」として、海外当局とも連携しながら取り組みの着実な進展を促すとしている。
また、経済価値ベースのソルベンシー規制の導入を円滑・着実に進めていくのに加えて、経済・金融市場の動向も踏まえつつ、保険会社の財務・業務の健全性や資産運用の状況についてモニタリングを行う考えを示した。
自然災害への対応については、「近年の自然災害の頻発・激甚化による保険金支払いの増加等により、保険料率が上昇傾向にある中で、損害保険会社が自然災害に対する備えとしての機能をより適切に発揮できるよう、損害保険会社に対して、統合的リスク管理(ERM)の高度化、防災・減災のサポート等に向けた対応、気候関連リスクへの取り組みを促す」と記載。少額短期保険業者については、財務局と連携し、財務の健全性や業務の適切性を確保するための態勢整備を引き続き促すとしている。