2024.08.14 損保協会 企業のリスクマネジメント力向上支援 「リスクマネジメントと損害保険」を作成 「募集コンプライアンスガイド」追補版も策定

 損保協会では7月22日、企業のリスクマネジメントの必要性や損害保険の位置づけ、保険の原理原則等に関する基礎的な情報をまとめた「リスクマネジメントと損害保険」を作成したと発表した。また同25日、募集品質のさらなる向上に向けて、会員各社が適切に代理店指導を行えるように「募集コンプライアンスガイド」の追補版を策定した。
 【「リスクマネジメントと損害保険」】
 6月25日に、金融庁の「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」の報告書が公表された。損保協会では同報告書について「業界内の構造的課題の解消や健全な競争の実現に向けた制度の在り方について極めて重要な方向性が示されており、有識者から指摘されたさまざまな意見を基に深度ある検討を重ねながら、より実効性のある取り組みへとつなげていく」としていた。一部の会員会社で発生した保険料調整行為の一因として、会員各社からは「顧客企業に対して、保険本来の価値やリスクマネジメント関連情報を十分に提供できていなかった」という反省の声が上がったことを踏まえ、同協会に設置した「業務抜本改革推進プロジェクトチーム」で、あらためて損害保険業界として、そうした情報を顧客に伝えるための態勢を整え、企業のリスクマネジメント力の向上を支援していけるよう検討を進めてきていた。
 「リスクマネジメントと損害保険」はこの取り組みの第一歩として、損害保険会社が提案する保険やサービスを顧客が検討・選択する際の前提知識となる基礎的な情報を解説したもので、顧客企業の理解をサポートする業界共通ツールとして作成された。今後、会員会社を通じて顧客に届ける予定。
 「リスクマネジメントと損害保険」はA4判6ページの冊子で、▽損害保険の役割▽損害保険を支える原則▽損害保険の保険料構成―で構成されている。また、巻末に再保険と共同保険の仕組みについての説明も掲載している。
 「共同保険のしくみ」では、「共同保険とは、複数の保険会社が共同して保険を引き受けることをいい、主に保険会社1社では引き受けることが困難な巨大なリスクを、複数社で分散することで引受可能とするためなどに用いられます。共同保険における契約締結の合意は各保険会社が別個に行い、各保険会社は引き受けたシェアに応じて保険金支払いの責任を独立して負います。」と説明し、説明図(上図)が付されている。
 【「募集コンプライアンスガイド」追補版】
 「募集コンプライアンスガイド」追補版の作成については、「保険金不正請求事案および保険料調整行為事案を契機に、損害保険業界における構造的課題や商慣習に関する問題が明るみになり、損害保険業界への信頼が大きく揺らぐことになった。このような問題を二度と繰り返さず、社会・顧客からの信頼を取り戻すためには、損害保険各社における改善取り組みだけではなく、業界としての取り組みが必要との認識に立ち、当協会においても、信頼回復に向けた取り組みを進めていくこととしている。その取り組みの一環として、同ガイドを策定した」としており、追補版では、金融庁が設置した「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」で示された課題の概要を取りまとめるとともに、これまで同ガイドに解説等がなかった「代理店に対する不適切な便宜供与の禁止」を新設したほか、「独占禁止法の遵守」について、追補版として取りまとめている。
 この中で「代理店に対する不適切な便宜供与の禁止」については、有識者会議報告書で、「解消すべき便宜供与についての解釈が損害保険会社間で異なることのないよう、明確かつ具体的な基準を含めたガイドラインを策定するとともに、各損害保険会社の取組状況を定期的にフォローアップする仕組みを構築していく必要がある」と指摘されており、今後、損保協会で新たなガイドライン策定等の取り組みを進めていくが、有識者会議報告書を踏まえた当面の対応として、「追補版」で留意事項を整理したものとしている。
 追補版では「基本的な考え方」として、「保険会社と代理店・募集人との間において便宜供与等の金額・数量等に応じて挙績の配分に関して約定する行為( 明示的であるかどうかを問わない。以下同じ。)や、代理店・募集人から保険会社に対する物品の販売をはじめとする各種便宜供与に関して達成基準を課す行為( 明示的であるかどうかを問わない。以下同じ。)は、過当競争の弊害を招き、または適切な推奨販売を歪めることを通じて保険契約者等の利益をも毀損するおそれがある不適切な便宜供与に該当するため行ってはいけません。また、これらの行為がない場合でも、便宜供与等の程度が過度であれば不適切な便宜供与に該当します」としている。
 (ア)「約定する行為」に関する留意点としては、▽便宜供与等の実績に応じて、保険代理店が所属保険会社間の保険取引の調整を行ってはいけません―と指摘、(イ)「達成基準を課す行為」に関する留意点としては、▽数量・金額等を達成基準として示して便宜を持ち掛け、提供し、または求めてはいけません▽保険代理店が、保険会社間の実績を比較し協力を求め、またはこれに応じてはいけません―と指摘、(ウ)上記以外の留意点(過度の便宜供与)として、「例えば、保険会社が、物品・サービス等の購入先や紹介先として、一般的な社会通念を超えて本業等を有する特定の代理店を選定するといった行為は、過度の便宜供与に該当するため行ってはいけません」としている。
 「具体的な行為類型・考え方」としては、▽公正な選定プロセスを経ず(合理的な理由なく)、購入や発注を特定の代理店に集中させていないか▽保険会社の役職員または取引先などに購入や発注等に関して強制力が及んでいないか▽本来、代理店がなすべき事業活動(役務)を無償で肩代わりしていないか―が示されている。