2024.08.01 日本航空保険プール 23年度概況 提供保険料は4億円増117億円 航空機事故は30件、事故率は過去10年で最低
日本航空保険プールは7月18日、第248回航空保険プール委員会を開催し、一般概況報告とともに2023年度プール運営費決算報告など各議題を審議・承認した。23会計年度のプール提供(グロス)保険料は前年度の約113億円から約4億円増加し、約117億円(前年比103.3%)となった。また、選挙の結果、委員長に宇井秀夫氏(東京海上日動常務執行役員)、副委員長に工藤成生氏(三井住友海上取締役専務執行役員)を選出した。
第248回航空保険プール委員会では、国際マーケットの動向として、次の報告が行われた。
航空保険マーケットは2010年以降ソフト化傾向が続いていたが、17年に大口自然災害の発生により再保険マーケット全体が徐々にハード化に転じる動きを見せると、18年10月に発生したライオン・エア610便墜落事故(死亡乗員・乗客数189人)、19年3月に発生したエチオピア航空302便墜落事故(死亡乗員・乗客数157人)を契機に、保険料率が顕著に上昇する局面に移った。さらに、22年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻や23年4月のスーダンの軍事衝突など、地政学リスクの高まりにより戦争リスクに対する保険料は大きく上昇している。一方で、戦争リスク以外の保険料率は大きな動きはないものの、経済的インフレーションによるクレームコストのアップや米国におけるソーシャルインフレーションの動きにより、今後ハード化へと転じる可能性がある。
23年のエアライン事故の発生件数は30件で、このうち死亡事故は1件だけだった(1月に発生したイエティ航空墜落事故で死亡乗員・乗客数72人)。23年はコロナ禍からの回復が見られたものの、事故率は過去10年以上の中で最も低い年となった。
IATA(国際航空運送協会)の発表によると、23年の有償旅客距離(RPK)は19年対比94%と新型コロナウイルスの流行前と対比して9割超の水準まで回復した。24年の総旅客数は史上最多の約47億人と予想されている。
23年の宇宙保険マーケットは、当初は21年の緩やかなソフト化が継続していたが、5月のViasat 3-F1、8月のInmarsat 6-F2の事故発生によりマーケット環境は激変し、打上げ保険、寿命保険の保険料率が急激に上昇した。このハード化の動きは24年も継続する見込みとしている。