2024.07.08 損保協会 城田協会長就任記者会見 信頼回復への取組が最優先課題 第10次中期基本計画の概要説明

 損保協会は7月1日、6月28日開催の第13回定時社員総会で協会長に選任された城田宏明氏(東京海上日動社長)の、業界紙向け就任記者会見を実施した。城田協会長は、昨年起きた保険金不正請求事案および保険料調整行為、また、今年5月に発生した保険会社と代理店間のメール連絡による個人情報漏えい問題について謝罪し、顧客や社会から失った信頼を回復させる取り組みを、2024年度の同協会の最優先課題として推進すると述べた。また、今年度からスタートした第10次中期基本計画(24~26年度)の概要についても説明した。(明日9日付2―3面で協会長ステートメント掲載予定)
 冒頭、城田協会長は、元旦の能登半島地震の被災者にお見舞いの言葉を述べた上で、1日も早く安心して過ごせる日常を取り戻せるよう、引き続き業界を挙げて迅速かつ適正な保険金の支払いに取り組むとした。また、昨年の保険金不正請求事案および保険料調整行為について謝罪するとともに、5月に発生した保険会社と代理店間のメール連絡による個人情報漏えい問題についても謝意を表した。
 その後、24年度の同協会の重点取り組みについて説明した。顧客や社会から失った信頼を回復させる取り組みを最優先課題として推進し、第10次中期基本計画についても着実に前進させると述べた。
 信頼回復への取り組みについては、「業界全体で法令等遵守を徹底すること」「保険会社社員および代理店の教育を徹底すること」「損害保険業の基盤を支える業務品質を確保すること」の3点が大きな課題であるとの認識を示した。その上で、損保業界全体で信頼回復への取り組みを推進するために組成した「業務抜本改革推進PT」が中心となり、不適切事案の再発防止を目指したガイドラインの策定など、各施策を具体化して会員各社に展開していくと述べた。
 主要取り組みテーマは、①健全な競争環境の実現②代理店・募集人の業務品質向上③企業向け保険の理解促進④不正請求対策の強化―の4点で、「健全な競争環境の実現」については、本業支援や政策株式、出向に関する基本的な考え方を整理した協会のガイドラインを策定するとした。「代理店・募集人の業務品質向上」については、第三者の視点を入れた代理店の業務品質評価に関する基準を策定するとともに、その基準を実際に適用できる体制や運用方針についても検討すると述べた。「企業向け保険の理解促進」については、企業向け保険やリスクマネジメントに関する情報を業界全体に提供するために、企業向け保険やリスクマネジメントへの理解をサポートする業界共通のツールを作成するとした。「不正請求対策の強化」については、旧ビッグモーター社の問題を踏まえたアジャスター向けの不正請求の類型・手口に関する研修の実施、あるいは損傷車両の画像の記録を支援するための、修理工場向けツールの作成などに取り組むと述べた。
 また、第10次中期基本計画では、①自然災害への対応力強化(大規模地震への備えの強化)②デジタル化推進による利便性向上(自賠責保険のデジタル化)③損害保険リテラシーの向上―の3点に主に取り組むとし、「自然災害への対応力強化」では、首都直下型地震や南海トラフ地震など、切迫度が高まる超大規模地震発生時においても適正な保険金を確実に届けることができるように、地震保険損害査定に関する課題をプロアクティブに確認していくと述べた。「デジタル化推進による利便性向上」では、自賠責保険に重点を置いて取り組み、引受業務においては異動・解約の非対面手続き、保険料の払い込みのキャッシュレス化を実現させるとの考えを示した。「損害保険リテラシーの向上」については、同協会では国民への損害保険に関する教育の充実を目指しており、昨年度には生命保険協会および生保文化センターとの間で保険教育に関する包括連携協定を締結したことを報告し、今後も生損保で連携して行う中学・高校の教員向けの合同セミナーの拡充を図るなどの方針を示した。
 最後に、「本当に信頼される損保業界になるために、そして当業界の全ての関係者が社会インフラの一翼を担う誇りを持ち続けられるように、多様な声に真摯に向き合いながら、会員会社の皆さまとともに損保業界をつくり変えるぐらいの覚悟を持って取り組んでまいりたい」と決意を述べた。
 次に、城田協会長自らが記者からの質問に回答した。
 あらためて協会長就任に当たっての抱負を問われ、「まずは前協会長のバトンをしっかりと受け継いで、業界の先頭に立って多様な課題の解決に向けて務めを果たしていきたい。まずは一連の不適切事案によって失った、お客さまや社会からの信頼を取り戻していくことを最優先に取り組む」との意気込みを示した。
 代理店の手数料ポイント制度については、「規模、増収に偏ることなく、業務品質の具体的な指標が顧客にとってのサービスの向上に資するものでなければならず、当局からそういう仕組みにするべきという提言がなされたと捉えている。本業支援や二重構造と言われるような保険会社と代理店の慣習を解消しつつ、業務品質の評価を重視していくべきというのが、業界としての全体の方向感だと認識している。しかし、自由な競争領域でもあるため、その点も踏まえた上で慎重に検討していきたい」と述べた。
 5月の保険会社と代理店間のメール連絡による情報漏えい問題については、現在、各社で調査中の段階と述べた上で、「今後は協会として、会員各社に対して個人情報の取り扱いに関するルール周知の取り組みを強化する。各社の調査、当局への報告が終わり次第、8月をめどに本件の概況の取りまとめを行う予定」との方針を示した。