2024.07.04 日本代協 通常総会 募集人の品質・高度化の議論多かった有識者会議 損保の正しい普及と消費者の利益保護 今後も代協の事業目的を推進 「問われた“損保事業のあるべき姿”」三浦課長

 日本代協は6月13日、損保会館大会議室で2024年度通常総会を開催した。23年度の事業報告や決算報告が行われ、全ての議案について全会一致で承認された。小田島綾子会長は、多くの業界がさまざまな課題を抱えながら、持続可能な社会への転換に向けて、主体的に提供する価値や業務品質を高める取り組みを進めているとした上で、「複雑なリスクに取り巻かれた時代にわれわれも保険を通じて安心を求めるお客さまの意向を的確に捉えて仕事に結び付けていく。また、環境変化を新たな挑戦の機会とし、代理店がこれからもお客さまと保険会社の間で重要な役割を果たせるように活路を切り開いていこう」と呼び掛けた。
 小田島会長はまず、「令和6年能登半島地震」の被災者や被災地などに対してお見舞いの言葉を述べた上で、5月24日に石川県代協の総会に参加し、災害対応している会員をねぎらったことの他、義援金を届けたことを報告した。
 次に、代協活動について、会員が活躍、体験することが本来の良さであり、「集い、語らい、高め合う」支部例会の活性化や地域に根差したコミュニケーションづくりが防災減災の一翼を担うなど活躍の場が広がっているとの見解を示し、「コンサルティングコースの受講勧奨や代理店賠責の加入推進、ぼうさいマップコンクールの案内等を通じて各委員会が展開する活動を通じて、代理店の資質向上や価値向上につなげてほしい」と呼び掛けた。
 次に、オブザーバーとして参加した金融庁の「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」について触れ、顧客本位の業務運営の徹底や保険募集人の募集品質、高度化などに対する議論が多かったと報告。同氏は、これまで築き上げてきた日本代協の組織や事業目的でもある「損害保険の正しい普及と消費者の利益保護を図るために代理店や募集人の資質を高め、事業の健全な発展に寄与する」という考え方は、今でも多くの代協会員の精神と行動の支えとなっていることから、今後も会員と一緒に実行していく考えを示した。
 来賓としてあいさつした金融庁監督局保険課長の三浦知宏氏は、昨今の保険業界の現状認識として、ビッグモーター社の保険金不正請求問題や保険料調整問題の顕在化に加え、「令和6年能登半島地震」で多くの被害が発生したことを通じて国民からの損保事業に対する注目が高まっており、代理店や損保会社、金融当局といった損害保険業に携わる人に対して「損保事業のあるべき姿とは何か」ということがこれまで以上に問われていると述べた。一連の問題は日本の損害保険業の信頼を失うことにつながったことから、金融庁および財務局は、23年11月~24年1月に業務改善命令等の行政対応を実施しており、処分対象となった会社の業務改善計画の実施状況をモニタリングしていると報告。損保会社は経営陣の責任・リーダーシップのもと、業務改善策を確実に実施することを通じて国民の信頼回復に努めることが重要だと強調した。
 今回の不適切事案の背景について、構造的課題や適切な競争を阻害する要因があったことから、24年3月から金融庁で「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を開催し、制度・監督における必要な対応のあり方について議論を進めてきたと報告。有識者会議で議論された保険代理店に関連する論点として、①大規模代理店に対する指導等の実効性確保②代理店手数料ポイント制度③乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保―の三つを挙げ、それぞれについて説明した。
 ①については、代理店監査を行う保険会社が営業力の強い大規模代理店であっても適時・適切な指導を行うための保険募集管理態勢を再構築すると同時に金融庁や財務局に対して、代理店の業務品質を中立的な第三者が評価する枠組みの設置に加え、損保募集人の試験制度や継続教育の高度化などの中長期的な観点から、自主規制機関の設立を検討することを求める声もあったとした。
 ②については、代理店自らが業務品質の向上に向けてインセンティブが働く仕組みが重要との観点から、規模や増収に偏ることなく、顧客サービス向上に資する業務品質を重視するポイント制度とすることを指摘されたと述べた。
 ③については、ビッグモーター社で比較推奨販売の規定が不適切に運用されていたことを踏まえ、保険会社から代理店に対する不適切な便宜供与を防止することなど、顧客の立場に立って、提案した商品が顧客に最適と考えた理由を分かりやすく説明する必要性が指摘されたとした。
 有識者会議の内容をまとめた報告書については、6月中に公表する予定。その内容を踏まえつつ、具体的な対応について引き続き検討し、実際の制度等の改正にあたっては、あらためてパブリックコメントを行うなど適切な行政手続きを踏んでから決定していくとの考えを示し、「引き続き、日本代協の皆さんからさまざまな意見をもらいたい」と締めくくった。
 総会では、第1号議案23年度(第60期)事業報告案承認の件では、①コロナ禍を経た本部事務局における活動②防災・減災に向けた取り組みと災害に便乗した悪質な業者対策③仲間づくり推進(会員増強)④損害保険大学課程の運営⑤「日本代協アカデミー」の展開⑥代理店価値向上策の取り組み⑦代理店経営サポートデスクの運営⑧第12回コンベンションの開催―の八つを挙げた。
 また、第2号議案の23年度(第60期)貸借対照表、正味財産増減計算書、財産目録承認の件、第3号議案の全役員任期満了に伴う役員選任の件が承認された。