2024.07.02 結心会モーター部会が「自主規制委員会」設立 25年5月に一般社団法人化目指す モーター代理店の健全化促進へ
一般社団法人保険健全化推進機構「結心会」モーター部会が、このほど「自主規制委員会」を設立した。モーター代理店の健全化を促進し、一般消費者に最善利益を提供する保険代理店として質を高め、顧客本位の保険提案を実現することなどを目的にした組織だ。今後は、2025年5月1日の一般社団法人化を目指し、趣旨・目的に同意して参画するモーター代理店を募り、事務局の設置、ガイドラインや行動規範の制定、適正認定制度の制定、消費者団体などとの連携関係の構築などに取り組むとしている。
自主規制委員会は、①モーター代理店の健全化をすすめ、一般消費者への最善利益の提供に向け保険代理店としての質を高め顧客本位の保険提案を実現する②保険会社からの出向や現場担当者に頼らず自立した保険代理店として自らが自社社員教育を徹底し、保険募集を行う③顧客に真摯(しんし)に向き合い、顧客本位の保険募集のための態勢を構築し、常にPDCAを繰り返し、改善を続ける④金融リテラシーについて学習し、顧客にも金融リテラシー向上のためのセミナー等を積極的に開催する⑤モーター代理店対象の自主規制を構築し、検査・検証の上で、公平で客観的な認定・評価の提供を通じて、顧客が保険代理店を選ぶ際の指針となるように展開する―の五つを目的に取り組みを進める。
まずは、25年5月1日の一般社団法人化に向けて、趣旨・目的に同意し参画する自動車兼業代理店を集め、第1回自主規制委員会の開催や事務局設置、消費者相談室の開設、顧客の声を集めながら最善利益義務を果たすための統一基準策定に向けたガイドライン等の策定、自動車兼業保険代理店適正認定制度の制定、国民生活センターをはじめとする消費者団体との連携関係構築に加え、自動車関連団体との連携といった取り組みを進め、その後、受審申込を開始し認定をスタートさせる予定だ。
24年4月1日の「金融商品取引法等の一部を改正する法律」によって、保険業界に最善利益義務が導入された。同法律は、金融サービスの提供者が顧客の最善の利益を勘案して誠実かつ公正に業務を行うという義務であり、保険会社や保険代理店だけでなく、役員や使用人も対象となる。
また、この改正は金融行政の視野を実質的な規制に広げる一環とされており、昨年のビッグモーター事件を受けて、損害保険代理店の法令順守と顧客への最適な提案を評価する制度の新設が検討されている。
モーターチャネル保険代理店は損害保険代理店の約6割を占めているのが現状であり、自動車関連業務と保険商品の提供を一体化している観点から結心会のビジョンでもある「健全な保険募集体制の構築」に向けて、有力な整備工場代理店を対象にした自主参画の組織となる「結心会モーター部会」内にコンプライアンス・健全な消費者サービス重視の「自主規制委員会」を立ち上げることで、モーターチャネル専用の保険募集における最善利益義務達成に向けた統一基準を構築する方針だ。
結心会会長の上野直昭氏に加え、坂井モーター㈱代表取締役で結心会モーター部会長の坂井光藏氏、㈱西自動車代表取締役で同じくモーター副部会長の津嘉山修氏、㈱アマギ代表取締役社長で同じく副部会長の小川一弘氏が中心となって立ち上げたモーター部会は、これまでに「態勢整備作りの必要性」を重要なテーマとして活動を進めてきた。
自主規制委員会は、ビッグモーター事件が発生したことで自動車業界が過渡期になっている現状の中で、顧客からの信頼回復に向けて、利益を最優先にしてはいけないことを理解・学習する機会の醸成が目的である一方で、ガバナンスを正すと同時に、利益を挙げる戦略を進めていくことにも注力していくという。評価等の基準になるガイドラインについては、保険業法など代理店が守るべき法律やルールを軸に作成していく予定だ。
同取り組みを業界内に周知させる戦略としては、全国約9万1000工場すべてへの案内は難しいことに加え、体制整備にはある程度のコストが発生するため、一定規模以上の工場でなければ理解を得られないという課題があることから、こうした課題の解消に向けて、大手企業に参画してもらう活動を進め、業界にインパクトを与えていきたい考えを示している。
同委員会によると最大のテーマは、「消費者目線」だという。ビッグモーター事件は企業の行動規範や保険会社の接し方が問題視されていることから、金融庁の有識者会議では保険会社の立場でさまざまな問題について議論された。しかし、保険代理店と一言でいっても業態によって保険内容、募集方法等も全く異なっており、専業と兼業、兼業の中でも、チャネルと本業の業種によって保険会社の日常の営業対応も全く変わるのが現状だ。代理店やモーター代理店の立場での顧客への接し方まで掘り下げなければ構造的な問題は解決しないため、法律だけを作って規制するのではなく、常に消費者と直接接している代理店が消費者目線で規制やガイドラインをつくることが、より効果的だという。
同委員会の小川氏は、今後の展開について、消費者センターや国民生活センターなどと連携して、現在、消費者から寄せられる苦情・相談の傾向等共有し、意見なども聞きながら、ガイドラインなどを作り上げていく考えを示し、「顧客本位の業務運営で最も重要である消費者目線に一番強みがあるのはわれわれだ。自主規制委員会を通じて自動車業界が失った信頼を回復するために自らが襟を正していきたい」と述べている。
結心会では、生保協会の業務品質評価運営制度のスタディグループやワーキンググループに参加した経験値を生かし、規制の方向性などをアドバイスすることに加え、自主規制委員会で作成した規制やガイドラインを金融庁に認めてもらうことに向けて支援していく考えだ。
上野氏は、「自主規制委員会を通じて、自動車兼業代理店のための新たな規制やガイドラインを構築することで、多くの代理店がさらに発展してほしいという思いが強い。結心会以外の多くのモーターチャネルの人たちも参画してもらいながら業界の発展に貢献したい」と述べている。