2024.06.25 三井物産インシュアランスHD 「企業代理店2.0」実現目指す、代理店経営支援共通プラットフォーム構築へ

 保険代理店と保険ブローカーを傘下に置き保険リスクマネジメント事業を総合的に展開する三井物産インシュアランス・ホールディングスでは、これまでの企業代理店のあり方にとどまらず、さまざまなステークホルダーと関わりながら成長・発展していくための新時代の企業代理店のコンセプト「企業代理店2.0」の実現を目指し、共創デザイン部を中心に、テクノロジー企業との協働や代理店経営を支援する共通プラットフォームの構築などに取り組んでいる。協業・共創の促進を通じて企業代理店を進化させていく考えだ。
 出資先企業等の商品・サービスの提供および共同開発や価値向上施策の推進などを目的として2023年6月に設置された共創デザイン部は、「保険業界をUpdateする~『企業代理店2.0』への進化~」をミッションに掲げ、共創・協業による企業代理店ビジネスモデルの変革を推進している。
 企業代理店は、これまで保険会社に支えられ成長を遂げてきたが、いわゆる保険販売が中心であったことから、それ以外の業務において人材や専門性の不足を招いていると同時に、人材不足がDX化の遅れやコンプライアンスの問題にもつながっている可能性があるという。
 また、急速な技術革新により、顧客はインターネットや生成AIを通じて保険に関するさまざまな情報に容易にアクセスできるようになり、保険会社もテレマティクスの活用や直販等で代理店を介さず顧客情報を収集することが増えてきたため、顧客接点となる代理店が持つ情報優位性の低下が加速している。
 事業環境が変化する中で、顧客との結節点という代理店の存在意義を貫き、顧客ドリブンのビジネス基点として必要な保険を必要なタイミングで過不足なく提供し続けるには代理店に蓄積された貴重な顧客情報の整備・活用が不可欠であり、そのためには専門性を身に付けた人材の採用・育成と効率的なデータ整備に向けたDX化を進める必要があるものの、企業規模の小さい企業代理店が個社で人材不足やDX化の遅れに対応するには限界がある。
 そこで同部は、複数の代理店が課題解決のために知恵やリソースを出し合うオープンな関係を築き、テクノロジー企業との協働によって人材の育成・強化、業務の効率化、マーケティングの高度化、コンプライアンス体制の強化に取り組む「企業代理店2.0」を提唱した。
 「企業代理店2.0」実現に当たっての主な取り組みは、①共創に向けた企業代理店との情報交換②企業代理店の認知度向上に向けたオウンドメディアでの情報発信③出資先であるhokan社のシステムを活用したデータの整備・活用および同システムの普及④協業による「代理店経営支援共通プラットフォーム」の構築―の四つで、代理店同士のみならず保険会社との連携も強化することで企業代理店のアップデートを目指す。
 「代理店経営支援共通プラットフォーム」は、企業代理店のレベルアップの必要性に加え、顧客企業側においてもリスクマネジメント機能の保有が求められるようになるという環境認識を踏まえ、①企業代理店のリスキリングによる営業対応力のレベルアップおよび均質化②企業代理店における内部管理体制の標準化③リスクマネジメントを担うリスクマネージャーの人材プールの構築―の三つを基本戦略として検討を開始した新たなプラットフォームだ。
 プラットフォームの主体は同社で、協業先の(一社)共創デザイン総合研究所による既存のサービスメニュー等も活用し、教育、コンプライアンス、内部監査、マーケティング等のツールを提供することを想定している。サービスの提供は、共創デザイン総合研究所が組成するアルムナイネットワークに登録した保険会社出身者が行うことを想定しており、サービス提供者には委託料を支払う。
 また、hokan社のシステムを推奨することで代理店業務を標準化しコスト削減と内部管理体制の強化を図ることに加え、MS&ADインターリスク総研など保険会社系リスクコンサルティング会社と提携しサービスコンテンツや人材を提供してもらうことも検討していく考えだ。
 プラットフォームの運営については、参加会社から基本メニューの利用料やERMコンサルティングスキルを養成するリスキリングプログラムの月額料金を受領する他、個別コンサルティングをスポット提供してコンサルティング料を受領する方法を検討中だという。
 共創デザイン部長の中野昌彦氏は、「この先、生産年齢人口が減少していく中で、共創・協業を進めていかなければ、保険業界はもとより日本社会全体が立ち行かなくなるだろう。具体的な座組についてはまだ協議中だが、われわれの理念に共感していただける企業代理店やインシュアテック企業などと共にプラットフォームの構築と普及に取り組んでいきたい」と意欲を示す。