2024.06.21 損保協会 定例会見 信頼回復への取組ほか1年間の成果報告 有識者会議指摘に「真摯に受け止め再発防止策講じる」
損保協会は6月13日、損保会館(東京都千代田区)で定例記者会見を行い、新納啓介協会長(あいおいニッセイ同和損保社長)が1年間の同協会の取り組み成果について報告した他、記者からの質問に回答した。協会長として最後の会見に臨んだ同協会長は、会見当日の理事会で、保険料調整行為、および旧ビッグモーター社による保険金不正請求問題によって損なわれた損保業界の信頼回復に向けた、同協会の各委員会ならびに3月に設置した「業務抜本改革推進PT」のこれまでの取り組みの総括を行うとともに、会員各社における再発防止取り組みの事例を含むフォローアップ結果を全社で共有したと報告した。また、記者から金融庁が公表した「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議 報告書(案)」に対する見解を問われ、「当業界の不適切な対応によって顧客本位の業務運営が実現されていなかったこと、および健全な競争環境が実現できていなかったという指摘について真摯に受け止め、再発防止策を講じていく」と回答した。(同日発表された新納協会長のステートメント全文は24日、25日の2面で掲載予定)
冒頭、新納協会長は、今年度を「就任に当たって掲げた重点取り組みテーマに加え、就任と前後して発生した課題である保険料調整行為と旧ビッグモーター社による保険金不正請求問題への対応、そして、元日に発生した能登半島地震への対応など、重要な課題に取り組んだ1年だった」と述べた上で、そのうちの二つの取り組みの内容について振り返った。
まず一つ目に「損保業界の信頼回復に向けた取り組み」について、「私自身、この1年間を当業界におけるターニングポイントとすべく、お客さま本位の活動を再構築するために、業界の商慣習を見直し、正すべきことを正すという思いでガイドライン、指針等の改定や会員会社社員、代理店・募集人への啓発活動を進めてきた」と述べた。続けて、会見当日に開催された理事会において、同協会の各委員会ならびに3月に設置した「業務抜本改革推進PT」におけるこれまでの取り組みの総括を行うとともに、会員各社における再発防止取り組みの事例を含むフォローアップ結果を全社で共有したと報告した。その上で、共有した結果を踏まえ、今後、各社において取り組みを一層高度化し、あらためて業界一丸となって信頼回復に向けて取り組んでいくことについて意思結集したと説明した。
こうした活動を進める中、5月に協会長会社を含む一部会員会社の乗合代理店において情報漏えい事案が発生したと報告し、「現在、関係会社が調査を進めており、事象の原因の究明にはまだ時間を要するが、本件についてはお客さま、および関係者の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし、お詫び申し上げる」と謝罪した。続けて、今後公表される金融庁有識者会議の最終報告書の内容を踏まえて、同協会としても必要な対応を講じていくとした。
二つ目の取り組みとして、就任時に掲げた重点取り組みテーマである、「自然災害対応に向けた啓発」「リスク情報をより必要とする方に向けた啓発」「アジア各国における損害保険事業の発展に向けた貢献」に並行して取り組んできたことを挙げ、これらの活動を推進する上で発信力の強化に努めてきたと述べた。「YouTubeやX(旧Twitter)などのデジタル媒体の活用を強化し、さらに私自身も当協会の全国10支部全てを訪問し、各支部の職員とともに地方自治体、都道府県警察、代理店、マスコミ等の皆さまに現地で直接お会いして、当業界の現状や取り組みを伝えてきた。また、地域の自然災害に関する啓発イベントや、日本で初開催となったIAIS(保険監督者国際機構)の年次総会にも参加して、自然災害に対する保険による備えや防災・減災の重要性を訴えてきた」と説明し、これらの協会本部、支部一体となった取り組みによって、それぞれ就任時に掲げた目標を達成することができたと報告した。
最後に、「協会長としての1年の任期が終わろうとしている今、各取り組みについてスピード感をもって一定程度進めることができたという思いもあるが、現状を鑑みると、それ以上にさらなる対応が必要であると強く感じている」と危機感を示した上で、 金融庁の有識者会議で損保業界の構造的課題が指摘されている点に触れ、制度面での対応を含め、当局とも協議を続けて業界を変えていく必要性を感じていると結んだ。
その後、新納協会長が記者からの質問に回答した。
6月7日に金融庁から公表された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議 報告書(案)」への考えについては、「当業界の不適切な対応によって顧客本位の業務運営が実現されていなかったこと、および健全な競争環境が実現できていなかったという指摘については、業界として真摯に受け止め、再発防止策を講じていかなければならない」と答えた。その上で、今後は、金融庁や公正取引委員会と相談をしながら、同協会として対応していくもの、そして会員会社個社で対応していくもののそれぞれのテーマについて検討を急ぎ、できることから先に実現させていくと述べた。
さらに、同報告書(案)に記載されていた中の「大規模代理店に対する指導等の実効性の確保」についても触れ、「第三者評価制度については、どのレベルで良しと評価する制度にするのか、あるいは自主規制機関の設立については、損保会社や代理店など誰を会員にするのか等、まだまだ論議すべき課題が多くある」との見解を示した。
また、5月の保険契約者の個人情報が漏えいした問題については、「現在、各社で調査を進めており、当社の事例で申し上げると、6月末をめどに結果を報告できるよう、調査を急ピッチで進めているところだ。調査の中で発生した原因、これまでの商慣習が影響しているのかといったこともはっきりと見えてくると思う。まずは調査結果を待ち、その後、詳細が分かってから話をさせていただきたい」と述べるにとどめた。