2024.05.22 第一生命HD 23年度末決算 修正利益は87%増の3193億円 新契約年換算保険料 第一フロンティアがけん引し27%増に

 第一生命ホールディングスが5月15日に発表した2023年度末決算によると、国内は第一生命(新型コロナ関連支払)、第一フロンティア生命(新契約費用)ともに前期の減益要因が改善し大幅増益、海外は豪TALの利益が堅調だった他、 米プロテクティブで米銀破綻影響からの反動増もあり増益となった結果、グループ修正利益は前年比87%増の3193億円(対期初予想対比+18%)を計上した。連結経常収益は同16.0%増の11兆281億円、連結経常利益は同39.1%増の5390億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同84.6%増の3207億円、グループ基礎利益は同44.5%増の5251億円となった。
 24年度末の連結業績予想については、第一生命の有価証券売却益の増加や第一フロンティア生命の新契約費の減少、米プロテクティブの一過性減益要因(米銀破綻)からの回復等でグループ修正利益は3400億円程度と予想。24年度から連結を開始するベネフィット・ワンからの利益貢献が開始するものの、同社買収に伴い生じた無形資産の償却も同時に発生する。経常収益は19.1%減の8兆9220億円、経常利益は4.3%増の5620億円、親会社株主に帰属する当期純利益は0.7%増の3230億円、1株当たり当期純利益341円74銭を見込む。グループ連結の基礎利益は1%増の約5300億円を見込む。
 23年度の株主還元では、新中期経営計画で掲げた「グループ修正利益の過去3年平均に対する配当性向40%以上」を早期適用し、1株あたり配当金を直近の配当予想の106円から7円増額し113円(前期比+27円)とすることを決定。追加還元としては、上限1000億円とする自己株式取得を決定済(24年度の単年度利益に対する総還元性向は65%)。24年度の1株あたり配当金は、配当性向40%以上を前提とし、増益予想に基づき、122円(前期比+9円)への増配を見込む。
 23年度末のグループの営業業績では、新契約年換算保険料は前年比27.8%増(為替調整後同25.8%増)の5029億円となった。国内は、第一フロンティア生命が高い金利水準が続く米ドル建商品等を中心に好調な販売を維持し全社をけん引、ネオファースト生命も前期を上回り、国内4社計で前期比35.0%増の3787億円となった。海外は、第一生命ベトナムで新契約業績が低下も、米プロテクティブがリタイアメント事業での販売好調を要因に増収し、海外6社計で同9.9%増(為替調整後同2.9%増)の1242億円だった。
 グループ計の保有契約年換算保険料は、前年比6.3%増(為替調整後同2.0%増)の4兆8108億円だった。
 グループ修正利益は前記の通り3193億円で、第一生命は利配収入の減少や金融派生商品損益の悪化を保険関係損益の改善で相殺し増益、第一フロンティア生命は新契約販売に伴う費用負担が改善し増益となった。
 グループ新契約価値は、新基準に移行した第一フロンティア生命が堅調に推移するも、団体年金事業の増加分を除いた第一生命や米プロテクティブの不調が響き前期比30%減の545億円。国内3社は新基準での計測で、第一生命は団体年金事業のVNBは増加もそれを除いた新契約価値は前期比で減少しており元受商品の販売量に課題があるとした。
 グループ各社の業績を見ると、第一生命の個人保険・個人年金保険計の新契約年換算保険料は前年比24.5%増の575億円。このうち第三分野は同9.1%減の268億円だった。保有契約年換算保険料は同2.4%減の1兆9494億円で、このうち第三分野は同1.6%減の6904億円。
 経常収益は前年比528億円減の4兆870億円で、このうち保険料等収入は同70億円減の2兆2898億円。資産運用収益は同754億円減の1兆3038億円。経常費用は同906億円減の3兆6956億円で、このうち保険金等支払金が同1090億円増の2兆5604億円、責任準備金等繰入額が同144億円減の84億円、資産運用費用が同1775億円減の4917億円、事業費が同103億円減の3851億円だった。経常利益は同377億円増の3913億円、当期純利益は同382億円増の2038億円だった。
 修正利益は、前記増益要因を金融派生商品損益の悪化等が一部相殺したものの、前期比23%増の2038億円。第一生命単体のソルベンシーマージン比率は、前年度末から0.4ポイント下がり865.0%。基礎利益は、ヘッジ外債売却に伴う利配収入減少はあったもののクレジット資産の積増しや保険関係損益の回復等により、前期比29%増の3310億円。24年度は15%減の約2800億円を見込む。
 第一フロンティア生命の個人保険・個人年金保険計の新契約年換算保険料は前年比36.5%増の3012億円だった。保有契約年換算保険料は同22.1%増の1兆1775億円。保険料等収入は同34%増の3兆5010億円。当期純利益は、円安進行に伴う危険準備金繰入の増加や前期の出再に伴う一時益の剥落等があったものの、前記増益要因やキャピタル損益の改善等により同141%増の156億円。MVA関連損益等を除いた修正利益は同306億円増の138億円(前期実績は▲167億円)。基礎利益は、新契約販売に伴う標準責任準備金の積増しが減少し保険関係損益が改善したことなどから同315億円増の83億円(前期実績は▲232億円)だった。
 ネオファースト生命の個人保険の新契約年換算保険料は前年比9.4%増の131億円。保有契約年換算保険料は同19.8%減の1001億円だった。保険料等収入(再保険収入除く)は、がん保険や3疾病サポートの販売が好調だったものの、経営者保険の解約に伴う保有契約の減少等により、前期比22%減の1020億円。当期純利益は、経営者保険の再保険貸の償却完了に伴う元受収益が利益に貢献し始めたものの、経営者保険以外で既契約出再(Dai―ichi Re)に伴う一時的な責任準備金取崩益の剥落が影響し、同258億円減の▲11億円(前期実績は247億円の純利益)。基礎利益は同87億円増の▲9億円(前期実績は▲96億円)。
 海外保険事業では、米プロテクティブは、営業利益は、解約率・死亡率等の定例見直しがマイナス寄与したことやコーポレート等における支払利息の増加等により前期比23%減の4億9700万米ドル。当期純利益は、金利変動に伴う評価損が前期比で縮小したものの、解約率・死亡率等の定例見直しがマイナス寄与したことや、債券売却損の発生(当年度上期に破綻した銀行の債券売却等に伴うもの)を主因に、同16%減の1億1600万米ドル。
 豪TALは、基礎的収益力は、既存の保障性事業および前期に買収したTLIS(旧Westpac Life)の事業が好調に推移し、前期比60%増の4億5200万豪ドル。当期純利益は、金利変動等に伴う資産・保険負債の変動に起因する益が前期を下回ったが、既存の保障性事業およびTLISが基礎的収益力に寄与した結果、同46%増の4億3000万豪ドル。なお、TALは23年度からIFRS17を適用しており、主に繰延新契約費の償却がなくなることなどによって基礎的収益力が一定程度増加している。前記の前期比増減率では、IFRS17適用に伴い、前期の数値についてもIFRS17ベースに遡及修正している。
 第一生命ベトナムは、保険料等収入は、業界全体の銀行窓販チャネルのモメンタム低下によって初年度保険料が減少し、前期比11%減の19兆5560億越ドン。当期純利益は、新契約業績の低下に伴い事業費が減少したが、保険金・解約返戻金等の支払いが増加し、同11%減の2兆4030億越ドン。