2024.05.10 損保ジャパン 参入事業者賠償リスクを包括的にカバー 「空飛ぶクルマ事業者専用賠償責任保険」提供 新たに海外再保険会社と再保険スキーム構築
損保ジャパンは4月3日、空飛ぶクルマ産業の成長への貢献を目指して、「空飛ぶクルマ事業者専用賠償責任保険」を開発、販売を開始したと発表した。同保険の提供を通じて新しいモビリティ社会の発展に貢献するとともに、今後も多くの企業と連携していくことで事業化に関連するリスクへの知見を高め、保険と事故防止の両面で高い顧客サービスを実現し、空飛ぶクルマの安心・安全な社会実装を支援していく。
空飛ぶクルマは世界的には「eVTOL(electric Vertical Take-off and Landing :垂直離発着機)」と呼ばれ、「航空機」に分類される。①垂直離発着が可能で滑走路が不要②電動化③将来的な操縦の自動化―等が特徴として挙げられ、ヘリコプターに比べ電動化による製造コスト・運用コストの低減が期待できることから、今後の世界的普及が期待されている。
空飛ぶクルマの事業化は、広大な「空」を活用することで地上交通インフラの影響を受けないという特長を生かし、戦後の自動車の普及(モータリゼーション)と同様に全く新しい社会を生み出し、多くの社会課題を解決するポテンシャルを秘めている。
損保ジャパンは空飛ぶクルマに関して、▽空の移動革命に向けた官民協議会に参画し地方自治体とプロジェクトで連携▽有望スタートアップメーカーの㈱SkyDriveに出資し包括的に業務提携▽岡山県倉敷市の航空・自動車関連企業などで組織する「MASC(マスク)」が大分市で行った空飛ぶクルマの試験飛行用に機体保険を開発・提供し国内での空飛ぶクルマの安定した保険制度づくり▽2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向け丸紅が実施する実証実験で協賛・協力会社としてリスクアセスメントを実施―などの取り組みを行ってきた。
一方、空飛ぶクルマの国内での社会実装と普及にはいまだ多くの課題があり、事業者が抱えるリスクが機体の運行リスクだけでなく、機体製造やポート管理に関わる賠償責任等多岐にわたることもその一つとなっている。そこで空飛ぶクルマ事業への参入に挑戦する事業者が抱えるリスクを幅広くサポートすることで事業化を促進し、社会課題を解決し得る新しいモビリティ社会の発展に貢献するため、空飛ぶクルマ事業者の賠償リスクを包括的にカバーする「空飛ぶクルマ事業者専用賠償責任保険」を開発したもの。同商品固有の海外再保険会社との再保険スキームを新たに構築することで、参入事業者を安定的かつ長期的にサポートできる保険制度としているという。
同保険は、機体、部品、その他関連機器等の製造・加工・整備・販売に関わる製造物責任やバーティポート(注)の管理運営に関わる賠償責任等を包括的に補償する。
対象となる主な業種は、機体、部品、その他関連機器などの製造加工メーカー、修理業者、販売商社、格納庫管理者、バーティポートの管理・運営業者など。補償内容は、①生産物リスク②施設管理・業務遂行リスク③格納庫管理者リスク―で、①生産物リスクでは、機体の一部または機体に関連し、被保険者が製造・修理・提供・販売・供給などした製品や仕事の結果に起因して発生した事故が原因となり、第三者に身体障害・財物損壊を生じさせたために、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担する場合に被る損害を補償。②施設管理・業務遂行リスクでは、被保険者がバーティポート敷地内外の施設の使用・管理あるいは各種業務遂行に起因して発生した偶然な事故により、第三者に身体障害または財物損壊を生じさせ、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償。③格納庫管理者リスクでは、格納庫またはタイダウンスペース(機体固定スポット)で保管・管理・整備等をするために受託した他人の機体等の損壊について、被保険者が法律上の損害賠償金を負担することによって被る損害を補償する。
補償される損害と費用については、①損害賠償金(身体障害の治療費、入院費、慰謝料、休業補償など、財物損壊の損害が生じた財物の修理費、再調達に要する費用など)②争訟費用(訴訟・和解等のために支出する弁護士費用等の費用)―がある。
(注)VTOL機の到着、出発および地上移動等のために使用される陸上の一定の区域で、空港等のうち、VTOL機専用の陸上ヘリポートをいう。