第一生命ホールディングス（以下、第一生命ＨＤ）は３月１４日、米国でオルタナティブ資産運用事業を営むリミテッド・ライアビリティ・カンパニー（ＬＬＣ）の　Ｃａｎｙｏｎ　Ｐａｒｔｎｅｒｓ，ＬＬＣ　および　Ｃａｎｙｏｎ　Ｐａｒｔｎｅｒｓ　Ｒｅａｌ　Ｅｓｔａｔｅ　ＬＬＣ　（以下、両社を合わせて「キャニオン・パートナーズ社」、傘下関連法人等も含めて「キャニオン・パートナーズ・グループ」）への出資について、キャニオン・パートナーズ社の経営陣と合意し出資に関する契約書の締結を決定したと発表した。

キャニオン・パートナーズ社（米国・ダラス）は１９９０年に　Ｊｏｓｈｕａ　Ｓ．Ｆｒｉｅｄｍａｎ　氏と　Ｍｉｔｃｈｅｌｌ　Ｒ．Ｊｕｌｉｓ　氏により設立され、運用資産残高２４４億米ドル（３．６兆円、２３年７月１日時点のキャニオン・パートナーズ社の推計値）を有するオルタナティブ資産運用会社。
共同創業者二人のリーダーシップの下、米国、欧州、アジアなどにもグローバルな拠点網を有し、近年注目が高まるプライベート・クレジット領域でビジネスを展開している。長期のトラックレコードを有するヘッジファンド、ＣＬＯ（ローン担保証券）、プライベート・デット、リアルアセット（不動産）など、独自のクレジットノウハウを活用してパブリック・プライベート双方のマーケットで幅広い投資家に対してビジネスを展開している。
第一生命ＨＤの出資額は２億５５００万米ドル（約３７６億円）で、アドバイザリー費用等を加えた合計の取得価格は２億６３００万米ドル（約３８８億円）。
出資のスキームは、第一生命ＨＤの１００％出資により新たに設立する米国籍ＬＬＣ（以下、ＤＬＵＳ　ＬＬＣ〈仮称〉）を通じて、キャニオン・パートナーズ社を傘下とする新設のＬＬＣ（以下、新ＬＬＣ）へ出資することで新ＬＬＣの持ち分を取得する。監督当局による届出等の手続きを経て、第一生命ＨＤはＤＬＵＳ　ＬＬＣを通じて新ＬＬＣの持ち分の１９．９％を保有することになる。また、第一生命ＨＤから新ＬＬＣへ取締役の派遣を行い、新ＬＬＣを第一生命ＨＤの持分法適用関連会社とする予定。なお、本件出資後もキャニオン・パートナーズ・グループの現経営陣は引き続き同社の経営を担い、経営体制に変更はないとしている。
本件出資に合わせ、第一生命グループはキャニオン・パートナーズ・グループへ１３億ドル以上の運用委託を実施する。なお、今回の出資契約に併せて第一生命ＨＤは２０２７年以降に追加出資が可能な権利を有しており、当該権利を行使した場合には、第一生命ＨＤが新ＬＬＣの持ち分の過半を保有し、同社を連結会計上の子会社とすることになる。
第一生命ＨＤは２０２１～２３年度中期経営計画「Ｒｅ―ｃｏｎｎｅｃｔ　２０２３」で、グループ戦略として「資本循環経営」を掲げ、資本コストを上回る資本効率の中期的な実現に向けて取り組んでいる。資本コストの低減に向けては、市場関連リスクの削減を強化・加速化させるとともに、事業ポートフォリオにおいてアセットマネジメント事業等の資本コストの低い事業の構成割合を高めていくことも有効と考えている。同社は「アセットマネジメント事業の中でも、オルタナティブ資産運用事業は近年著しい成長を示しており、企業の資金調達手法の多様化や機関投資家によるオルタナティブ投資への資金シフトにより、今後も高い成長性が期待できると考えている」としている。
今回の出資の戦略的意義と効果については、①成長性の高いオルタナティブ資産運用事業への参入を通じた事業ポートフォリオ強化②オルタナティブ資産運用事業のノウハウの活用・シナジー効果の追求―を挙げており、①については、「キャニオン・パートナーズ・グループは、オルタナティブ投資の一種であるプライベート・デット投資やリアルアセット投資等を手掛けるアセットマネジメント会社であり、同領域で高い運用力を有している。本件出資を通じ、資産運用立国戦略にも通じるオルタナティブ資産運用領域のケイパビリティを獲得することは、第一生命グループ全体の事業ポートフォリオ強化に資すると考えている」。②については、「プライベート・デット事業を中心とするオルタナティブ資産運用事業は、運用利回り向上や商品開発などの観点から第一生命グループ傘下の生命保険会社での活用が期待できる。本件出資を通じ、アセットマネジメント事業の強化・拡大を図るとともに、グループ生命保険会社が必要としているオルタナティブ資産運用領域、特に海外クレジット運用に係るケイパビリティの獲得とグループ内シナジーの実現を図る」としている。