2024.03.01 生保協会 スチュワードシップ活動協働エンゲージメント実施 カーボンニュートラルへの取組強化 対象の148社に連名の書簡送付
生命保険協会は2月8日、東京都千代田区の同協会特別会議室で、「スチュワードシップ活動ワーキング・グループ参加会社による協働エンゲージメントの実施」についての記者説明会を開催した。同協働エンゲージメントは2017年度から継続している取り組み。本年度から新規の取り組みとして、温室効果ガス排出量(スコープ3)国内上位約20社を対象に、「スコープ3排出量削減に向けた取り組み内容の開示」を要望していく。
協働エンゲージメントは、本年度も昨年度と同じく①株主還元の充実②ESG情報の開示充実③気候変動の情報開示充実―の3テーマを継続し、上場企業148社(延べ155社)を対象に実施する。新規の「スコープ3排出量削減に向けた取り組み内容の開示」は上記③の中の取り組み。
協働エンゲージメントの対象企業に対しては、課題意識を伝える書簡(同ワーキング・グループに参加する生保11社の連名)を送付した上で、対話や電話等でのフォローアップを通じてエンゲージメントの実効性向上を図っていく。
記者説明会では、生保協会スチュワードシップ活動ワーキング・グループ座長の後藤英津子氏(第一生命責任投資推進部ラインマネジャー)と、髙野絢子氏(第一生命責任投資推進部マネジャー)が取り組みについて解説した。
「株主還元の充実」では、長期間(10年間)配当性向が30%未満で、自己資本比率が高く、投資実績に乏しい企業53社に対して、株主還元の向上(配当性向30%)を要望する。この取り組みは17年度から実施しており、22年度は約3割の企業が配当性向30%の基準をクリアした他、送付先の約5割の企業は基準未達となるも増配しており、合わせて約8割の企業で改善が見られているという。
「ESG情報の開示充実」については、18年度から実施しており、時価総額上位300社のうち、ESG情報を含む統合的な開示(統合報告書等)が無い企業38社に対して、ESG情報を含む統合的な開示を要望。22年度は送付先の約3割が新たにESG情報を含む統合的な開示を実施するなどの成果が出ているとした。
他の2項目が昨年度からの「継続」という位置付けであるのに対して、「気候変動の情報開示充実」に関しては、「新規取り組みあり」となった。まず、温室効果ガス排出量(スコープ1・2)上位約50社に対して①気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析と開示②2050年ネットゼロに向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの策定・開示―の2点を要望し、脱炭素に向けた一層の取り組みと情報開示を後押しする方針だ。①と②をすでに開示している企業に対しても、①については定期的な分析の見直し・高度化、②については必要に応じて開示の充実を後押しする。
22年度書簡送付先については、①は全社が開示しており、定量分析の開示は21年度には約4割にとどまるも、22年度は約8割が開示。②については、9割超の企業が開示しているものの、さらなる内容の充実や高度化が必要と思われる企業もあるとしている。
また、新規取り組みとして、温室効果ガス排出量(スコープ3)上位約20社(スコープ1・2上位企業との重複あり)に対して、スコープ3削減に向けた取り組み内容の開示を要望する。これについては、取引先企業のスコープ1・2の排出量削減への貢献を意識してほしいといった理由で設定していると述べた。
記者から、今回なぜ新規取り組みが設けられたのかという質問があらためて寄せられると、「昨今、スコープ3のデータを開示する企業が増えてきたことや、スコープ1・2と比べてスコープ3だけ突出して排出量が高い企業もみられるので、ここに対してもアプローチすることで、カーボンニュートラルをより推進できると考えた」と回答した。
同ワーキング・グループに参加する生保11社は、朝日生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命(50音順)―となる。