2024.02.19 第一生命HD 完全子会社化目指し株式公開買付開始、「ベネフィット・ワン経済圏」創造へ 総買収金額は2920億円に

第一生命ホールディングスは、医療従事者向け医療ポータルサイト運営のエムスリー㈱が、昨年11月14日付で企業従業員向け福利厚生サービスのベネフィット・ワンを連結子会社とすることを目的に株式の公開買付けを行うと発表したことに対抗し、昨年12月7日にベネフィット・ワンおよび主要株主のパソナグループに対して100%子会社化を目指した公開買付け等を提案していたが、2月8日、翌9日から公開買付けを開始することが決定したと発表した。TOB完了後、両社一体となり「ベネフィット・ワン経済圏」を共に創造していくとしている。

今回の決定は、ベネフィット・ワン取締役会とその特別委員会ならびにパソナグループとの間の協議・交渉の結果、第1に、ベネフィット・ワンが2月8日開催の取締役会で、①第一生命HDによる公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、ベネフィット・ワンの株主に対し、同公開買付けへの応募を推奨すること②昨年11月14日に公表したエムスリー公開買付けに対する意見(エムスリー公開買付けに関して、賛同の意見を表明すること等)を変更し、エムスリー公開買付けに賛同するか否かおよびエムスリー公開買付けへの応募を推奨するか否かについての意見をいずれも留保する旨の決議を行ったこと、第2に、第一生命HDがパソナグループとの間で、同日付で、①パソナグループが所有する売却予定株式について公開買付けに応募しないこと②公開買付けの成立後にベネフィット・ワンの株主を第一生命HDおよびパソナグループのみとするためにベネフィット・ワンが行う株式併合の実施に必要なベネフィット・ワンの株主総会に上程される議案に賛成の議決権を行使すること③ベネフィット・ワンによる自己株式取得に応じて売却予定株式を売却すること―等を内容に含む合意書を締結したこと、などによる。なお、第一生命HDは、ベネフィット・ワンおよびパソナグループとの協議・交渉の結果を踏まえ、公開買付価格を1株当たり2173円(12月21日に公表した買付価格2123円から50円アップ)としている。
一方、エムスリーは8日、ベネフィット・ワンおよびパソナグループが第一生命HDによる公開買付けを受け入れることを表明したことを踏まえ、今後、公開買付けの条件変更は行わず、また、代替提案の検討も終了すると表明。併せて、ベネフィット・ワンから事業の提携関係の構築に向けた意向の連絡を受けており、また、第一生命がベネフィット・ワン、エムスリーとの三者間の協業の可能性について協議を行うことを検討予定であると認識、企業価値向上の観点から、その協業の検討を進めていく所存と表明している。
第一生命HDによる公開買付期間は、2月9日から3月11日までの20営業日で、公開買付価格は前述のとおり1株当たり2173円。総買収金額は、2920億5700万円(公開買付価格1681億3000万円+自己株取得総額1239億2700万円)となる。第一生命HDの財務への影響では、利益見通し・キャッシュ貢献についてはTOB完了後に開示するとしているが、グループESRへの影響については、約▲8%ポイントを想定している。
第一生命HDでは、福利厚生アウトソーシングサービスでトップクラスのシェアを占めるベネフィット・ワンを完全子会社化することによる戦略的意義について、①国内でのシェア増加を相互補完し、事業領域拡大に裨益するプラットフォームの獲得②チャネル・顧客基盤等の連携等による、高い確度でのシナジー発揮③非保険領域において、国内で最も競争力のあるBtoBtoC型の福利厚生プラットフォーム機能の獲得により、エコシステム構築に向けた寄与―を掲げている。
同社では「TOB予告以降、ベネフィット・ワンとの協議を通じて協業・シナジーの発現に係る確度が高まり、同時に利益実現への見込みも高まった」としており、「ベネフィット・ワンのシステムを中心に据えた、Well―beingサービスを提供するエコシステムを構築し、ベネフィット・ワン経営陣を尊重した上で当社の資本やノウハウを提供する。両社一体となり『ベネフィット・ワン経済圏』を共に創造することを目指す]としている。
福利厚生分野では、自社の顧客基盤の提供を通じた競争力強化・スケール拡大および保険会社としてのケイパビリティを活用した付加価値サービス・商品の提供を図り、ベネフィット・ワンのバリューアップ・シナジー発現に向けた専門の部署や新規会員獲得に向けた営業部隊の拡充等の体制整備を予定している。
ヘルスケア分野では、健康経営実現に向けた付加価値の提供と顧客体験価値の向上を図り、両社サービスの一体提供により顧客の Healthcare well-being に貢献する。
ペイメント分野では、ベネフィット・ワンの将来的な競争力の源泉である給与天引システムの「給トク払い」のサービス拡充と認知拡大を図り、「給トク払い」の活用を通じ、コストシナジーの実現やサービスの拡充に取り組む予定としている。
さらに、ベネフィット・ワンのプラットフォームを活用したエンベディッドなサービスの提供は、同社の国内保険事業における“深化”につながるものと考えるとし、またベネフィット・ワンの提供する「ペイメント事業(給トク払い)」は、今後、同社とのシナジーによる会員基盤の拡大、導入・利用の促進を通じたコンテンツの質と量の拡充および認知度向上に努めることで、大きなシナジーの創出が可能と認識しているという。