日本生命は１２月２１日、ＰＨＲ（Ｐｅｒｓｏｎａｌ　Ｈｅａｌｔｈ　Ｒｅｃｏｒｄ、（注１））プラットフォームの開発等を展開する㈱Ｗｅｌｂｙ（比木武・山本武代表取締役）の１００％子会社でマイカルテ事業を展開する㈱Ｗｅｌｂｙヘルスケアソリューションズ（豊原稔代表取締役、以下、ＷＨＳ）と資本業務提携契約を締結するとともに、Ｗｅｌｂｙを含む３社間で業務提携契約を締結したと発表した。ＷＨＳとの資本業務提携契約では３億５０００万円を出資。３社間の業務提携では、①産業保健領域②保険者領域③医療機関普及―の３点で取り組みを進める。

少子高齢化や医療費の増大が進む日本では、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向けて、予防・医療分野のデジタル化の推進が求められている。これまでは国中心にＰＨＲデータの取り扱いに関するルール作りやマイナポータルへの医療情報集約が進められてきたが、これからは民間事業者と連携して国民の実利用が進む環境の整備を進め、生活習慣病領域における未病・予防から治療・予後にわたるＰＨＲの活用によって、個人が自ら健康管理に取り組むことのサポートや、かかりつけ医ネットワークを生かして、患者が主体的に治療に参加し、より良い医療を受けられるよう支援していく役割が民間ヘルスケア事業者に求められるようになる。
こうした背景を踏まえ、これまで未病・予防領域を中心に取り組んできた日本生命と医療領域中心に取り組んできたＷｅｌｂｙがタッグを組むことで、地域医療機関連携およびかかりつけ医とのネットワーク構築、ＰＨＲ普及をより一層推進したいという両者の思いが合致し、マイカルテ基盤を活用した地域医療機関連携、およびかかりつけ医とのネットワーク構築を目的としてＷＨＳに出資するとともに、ＰＨＲソリューション普及・推進に向けて３社間で提携するに至った。
ＷＨＳへの出資の概要は、引受株式数が１４０株、出資額が３億５０００万円、出資後の出資比率は６．５％。３者間での業務提携の取組内容は、①産業保健領域：産業保健（企業内診療所を含む）における医療機関連携モデルの構築および事業推進②保険者領域：かかりつけ医ネットワークを生かしたＰＨＲソリューション（未病・予防を含む）による保健事業の効果性・効率性の向上③医療機関普及：かかりつけ医ネットワークの構築・普及―としている。
Ｗｅｌｂｙは、製薬会社からの依頼によるＰＨＲプラットフォームの開発等を展開している。血糖値や血圧などのＰＨＲの自己管理を支援するクラウドサービス「Ｗｅｌｂｙマイカルテ」を通じ、生活習慣病患者とかかりつけ医をつなぎ、患者が最適な医療を受けられるよう支援している。同社のマイカルテサービスは、糖尿病や高血圧症等生活習慣病全般、および生活習慣病予備軍の患者の自己管理をサポートするもので、血圧機器やウェアラブルデバイス等とのデータ連携により簡単なデータ管理を実現し、患者が記録したデータは医療機関に共有し、治療を受けることができる。日本生命の資料によると、２３年３月現在でアプリのダウンロードは１００万人超、大学、クリニックなどの登録かかりつけ医療機関数は約２．６万超に及び内科系クリニックの４０％をカバーしている。
また、Ｗｅｌｂｙ子会社のＷＨＳは、マイカルテ事業推進強化および、未病・予防領域の新たな展開を目的に設立された新会社で、Ｗｅｌｂｙからのマイカルテ事業を切り出し、Ｂ２Ｍ・Ｂ２Ｂ事業を展開していく。加えて、マイカルテ基盤領域を活用した未病・予防領域として、Ｂ２Ｂ２Ｃ（産業医（企業内診療所）、みなし健診（注２）、重症化予防等）を２４年から本格展開していくことになっている。
日本生命はこれまでも「ニッセイ健康増進コンサルティングサービス（Ｗｅｌｌｎｅｓｓ―Ｓｔａｒ☆）」を通じ、企業や保険者の健康増進取組を分析から予防策までトータルで支援してきていた。また、「糖尿病予防プログラム」「血糖変動チェックプラン」などのサービスも提供してきている。今後、３社は協力し、ＰＨＲの活用によって、個人が自ら健康管理に取り組むことをサポートしていく。また、かかりつけ医ネットワークを生かして、患者が主体的に治療に参加しより良い医療を受けられるよう支援することで、あらゆる世代が安心して暮らせる豊かな健康長寿社会づくりの実現を目指していくとしている。
（注１）生涯にわたる個人の健康・医療・介護に関する情報のことで、本人が活用して予防・健康づくり等に活用するとともに、本人同意のもとに医療・介護現場で効率的かつ効果的治療および支援に役立てることが期待されている。
（注２）医療機関に定期的に通院し、検査を受けている人が、検査結果を自治体に提供することで、特定健診を受診したとみなす健診のこと。