2023.12.06 損保協会 BM社保険金不正請求に対する取り組み 不正手口共有、ガイドライン改定 入庫紹介、損害調査手法の考え方を明確化
損保協会は、11月24日に関東財務局からビッグモーター社(㈱ビッグモーター、㈱ビーエムホールディングス、㈱ビーエムハナテン)に対して、保険業法第307条に基づき、11月30日をもって損害保険代理店としての登録を取り消す命令が発出されたこと(本紙2面参照)を告知し、今後、同社で保険契約の取り扱い(自動車保険や自賠責保険の契約申し込み・更改、契約内容の変更手続きなど)ができなくなることについて広く注意を喚起した。同時にビッグモーター社による保険金不正請求に対する同協会の取り組みとして、①これまでの不正請求対策の点検・総括およびレベルアップに関する現時点の取り組み状況②ビッグモーター社による保険金不正請求の手口の把握・研究③「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)の改定―について発表した。
ガイドラインの改定については、今回のビッグモーター社による不正請求事案に関する会員会社の調査結果から、保険金支払業務における「入庫紹介」について、「保険会社が自動車修理工場を紹介する行為は、顧客への入庫・修理・支払までの迅速な損害サービスの提供といった付加価値提供の観点を基軸として、顧客・保険会社・自動車修理工場にそれぞれメリットがあるビジネス慣行。しかし、今回のビッグモーター社による不正請求事案の発生の背景として、一部保険会社において、顧客の利益よりも保険契約の獲得を優先したと受け止められる特定の自動車修理工場との関係性が確認された」、また「損害調査の手法」について、「損害調査にあたっては、適時・適切な保険金支払を実現する観点から、適正性および効率性のいずれも考慮のうえ、事案の特性に応じた手法を採用する必要がある。また、保険会社が入庫紹介を行う自動車修理工場との関係においては、当該自動車修理工場の専門性、技術水準等に応じた効率的な調査態勢を構築することがあり、迅速な保険金支払いにもつながっている。しかし、ビッグモーター社による不正請求事案においては、一部保険会社において、不正請求が疑われた後も十分な調査を行わず、保険金不正請求に対する牽制機能が発揮されていない事象が確認された」―とし、ビッグモーター社による不正請求の発覚により、顧客の意向や要望に沿った入庫紹介の実施や、事案に応じた適切な損害調査の手法が採用されるよう、必要な考え方の明確化を図ったとしている。
改定では、「入庫紹介に関する考え方」として、自動車修理工場などの業者を保険会社が紹介する場合、顧客の意向や要望に沿った紹介にする必要があることから、業者の紹介にかかる態勢の整備、紹介にあたっての留意事項に関する記載を追記した。
「損害調査の手法に関する考え方」では、「事案に応じた調査の実施」として、効率的な損害調査態勢を構築する場合でも、牽制機能を発揮する態勢の構築や事案に応じた調査手法を選択することが必要であることから、効率的な損害調査を行う場合の態勢の整備、損害調査の手法の決定等に関する留意事項に関する記載を追記した。
「不当・不正な保険金請求への対応」では、保険制度の健全な運営や社会正義の実現に大きな影響を与えることから、不当・不正な保険金請求に対する態勢の整備、不当・不正な保険金請求に対応する場合の留意事項に関する記載を追記した。
また、「具体的事例の考え方の追記」として、苦情事例として今般のビッグモーター社の事例を掲載し、保険契約の獲得を優先するあまり顧客の意向・要望に合致しないような紹介を控えるべき旨の記載、効率的な調査態勢を構築している場合であっても、一律に損害調査を省略するのではなく必要に応じて専門的な確認を実施するべき旨の記載、不正請求が疑われた場合には当該事案の精査などの対応や、不正請求が判明した場合には紹介行為の停止を含めた厳正な対応を行うことが重要である旨の記載を追記した。
同協会では今後、①会員会社におけるガイドラインにのっとった実務運営の実施②会員会社における取り組みの推進とフォローアップの実施―の取り組みを進めていくとしている。