2023.12.04 生命保険協会定例会見 損保協会、生保文化センターと保険教育で協定、「相互に密接に連携しつつ協働して取り組む」
生保協会の清水博協会長は11月17日、同協会会議室で定例会見を行った。会見では、清水協会長が日本損害保険協会・生命保険文化センターとの「保険教育に関する包括連携協定」の締結と、「新型コロナウイルス感染症を巡る生命保険業界の取り組み及び次のパンデミックに向けた経験の継承」に関する報告書の公表について報告した他、PRIの年次総会や、IAIS年次総会「金融庁ハイレベルダイアログ」の開催結果についても振り返った。
初めに、11月13日に締結した日本損害保険協会・生命保険文化センターとの「保険教育に関する包括連携協定」について報告した清水協会長は、協定の内容について、国民の保険分野における金融リテラシー向上を一層効果的に図るべく、3団体がライフプラン等を踏まえた、リスクに対する自助努力の重要性を学ぶための保険教育について、相互に密接に連携しつつ、協働して取り組むことを定めたものと説明した。
すでに、教員を対象とした勉強会等については、生損保共催で教育活動に取り組んでいるものの、今後は同協定に基づき、こうした取り組みをさらに拡充する等、保険教育に係る各種施策に連携・協働して取り組んでいく方針を強調した。
次に、同日開催された理事会で決議し公表した「新型コロナウイルス感染症を巡る生命保険業界の取組み及び次のパンデミックに向けた経験の継承」と題する報告書について紹介した。同報告書は生保協会や会員各社の新型コロナウイルス感染症を巡る一連の取り組みについて、顧客からの感謝の声や、消費者団体の声等も交えつつまとめたもの。また、みなし入院を巡る対応において、照会・相談件数が増加したことにも言及していると説明し、「今後再び発生するかもしれないパンデミックにおいて、今回の経験を継承し、生かしていく」と語った。
3点目として、10月3日から10月5日まで東京で開催された、世界のESG投資をけん引する国際イニシアティブであるPRIの年次カンファレンス「PRIinPerson2023」についても報告した。生保業界からも多くの参加者が参加した同イベントには、世界中から約1400人の参加者が集い、責任投資に関する好取組みを共有するとともに、課題や今後の進むべき方向について意見交換が行われたと述べ、会見と同日、「PRIinPerson2023に係る代表者説明会」が実施され、PRIの木村武理事より、会員各社の代表者に対する「PRIinPerson2023」での議論の内容が共有されたことも報告した。
木村理事からは、投資家が連携して投資先に働き掛ける協働エンゲージメントや、政策当局に働き掛けるポリシーエンゲージメント、アンチESGの潮流に対する捉え方等について議論がなされたこと、岸田文雄総理が登壇し、力強いアクションを示されたことについて大きな反響があり、PRI理事会において、過去最高の大会だったと評価されたといった情報が共有されたと明かした。
4点目として、IAIS年次総会サイドイベント「金融庁ハイレベルダイアログ」の開催について報告した。保険監督者国際機構(IAIS)の年次総会が日本で開催されるのは今回が初となる。11月6日から11月10日にかけて東京で開催されたIAISの年次総会と年次コンファレンスには、世界中から約400人の官民関係者が参加し、活発な議論や意見交換が行われた。年次コンファレンス冒頭には岸田総理が登壇し、社会課題の解決に向けて保険会社が果たす役割の重要性について言及したことでも注目を集めた。
大会期間中の11月9日には、金融庁主催のサイドイベント「金融庁ハイレベルダイアログ」や、生保協会も共催した「ネットワーキング・ディナー・ビュッフェ」が開催された。「金融庁ハイレベルダイアログ」では、新たにIAIS執行委員会議長に就任した有泉秀金融国際審議官がモデレーターを務め、清水協会長も登壇。「レジリエントな社会の形成に向けた保険の役割」というテーマの下、生保協会からは、ESGインテグレーションや、投資先エンゲージメントを主軸としたスチュワードシップ活動、トランシジョン・ファイナンスに関する取り組みについて共有した、と振り返った。
この他、記者からの、政府が資産運用立国の実現に向けて具体的な政策プランを年内に策定するとしていることへの受け止めを訊かれた清水協会長は、「資産運用立国の実現に向けた取り組みを通じ、『成長と資産所得の好循環』が生み出されることを期待している。政策プランの策定に向けて、大変前向きに受け止めている」と述べ、アセット・オーナーとしての生保会社が貢献できる領域として、①専門性向上や資産運用人材確保に伴う運用力の向上②スチュワードシップ活動の実質化③インベストメント・チェーン全体の好循環の実現に向けた責任投融資またはESG投融資のさらなる推進―を挙げた他、国民の金融リテラシーの向上や各社グループのアセットマネジメント会社における新しいNISA制度に対応した運用商品の提供を挙げ、生保業界として、資産運用立国の実現に貢献していく意向を示した。