2023.09.13 SOMPOホールディングス・損保ジャパン ビッグモーター社による不正事案で記者会見、真因分析・再発防止に全力 白川社長が経緯説明
SOMPOホールディングスと損保ジャパンは9月8日、東京都新宿区の本社でビッグモーター社(BM社)による不正事案に関する記者会見を行った。損保ジャパンの白川儀一社長が、被害にあった顧客への対応や同事案に関する経緯などを説明し、BM社への入庫紹介の再開について「最優先すべきお客さまへの思いが至っていない軽率な判断だったと反省している」と述べた。また、両社は同日、白川社長のSOMPOホールディングス国内損害保険事業オーナー執行役および損保ジャパン代表取締役社長社長執行役員の辞任を発表した。辞任時期については、社外弁護士から成る調査委員会への調査協力や後任者への引継ぎが完了した時期としている。
会見の冒頭、SOMPOホールディングスの櫻田謙悟グループCEOが謝罪の意を表し、「調査委員会による客観的な事実関係を踏まえ真因分析を行い、再発防止と信頼回復に向け、グループ内事業の内部統制を強化するとともに持株会社による事業会社の管理監督の在り方を再検討していく」と決意を語った。
また、同日付で同社グループCERO執行役常務の石川耕治氏が損保ジャパン代表取締役副社長執行役員に就任したことを報告し、今後は同氏が再発防止策策定を含む損保ジャパンの舵取りを行うと述べた。同事案に関わる経営責任全般については、調査委員会が取りまとめる客観的事実を踏まえ、指名委員会および取締役会での議論の上、明確にしていくとした。
続いて、白川社長が同事案について説明し、現在、顧客の不安解消と被害回復を最優先事項とし、自動車保険の等級訂正手続きや車の安全性の確認に要する点検費用の負担といった対応を早急に進めていることを報告した。
また、BM社との代理店委託契約は既に終了を決定しているが、顧客の契約は満期日まで有効に継続するとし、「お客さまに安心して取引していただけるよう、事実解明と真因分析、再発防止に全力で取り組んでいく」と述べた。
同事案発生の経緯については、BM社の店舗拡大に伴う保険部門の強化を目的とした営業部門への出向や、修理品質および見積技能の向上支援を目的とした板金・塗装部門への出向の他、本業支援として車両事故にあった契約者への入庫紹介を行っていたものの、紹介1台あたり自賠責保険5件を発券するルールが導入されたことに加え、拠点ごとの自動車保険取扱い会社の選定にも影響することから、営業部門だけでなく事故対応を担う保険金サービス部門も一体となって全社的に同社への入庫を推進する動きになったと説明した。
こうした中、22年1月にBM社社員からの通報により同社の不正請求疑義が発覚し、自社調査の結果を踏まえ入庫紹介をいったん停止したものの、同社から不正指示はなかったとする調査結果を受領したことから、7月6日の役員会で同社における再発防止策の導入を条件に入庫紹介の再開を決定した。
白川社長は、「お客さまが自主的にBM社に入庫するケースは続いており、早急に手を打つ必要があったため、疑義の追及に時間をかけるよりも、厳しい再発防止策の実行を条件に入庫を再開し状況を改善させた上で被害の拡大を防ぐことが、同社との関係を維持しながらお客さまの保護を図れる方法だと判断した。悪質な犯罪行為の実態を把握していなかったとはいえ、最も大切にすべきお客さまへの思いが至っていない軽率な判断だった」と謝罪した。
意思決定に当たっては、取締役会といった公式な場を経るとともに、親会社への報告を行って客観的な目線で議論するべきだったとし、「通報者を最大限に配慮した上での疑義の追及や、契約者保護を最優先とした対応、不正に対する毅然とした態度が必要だったにもかかわらず、認識不足により損保事業に対するお客さまや社会の信頼を大きく低下させてしまったことを重く受け止めている」と述べた。
また、優良工場にのみ導入される「簡易調査」をBM社で適用していた件については、同社における査定の質が悪化している事実を知りながら反発を恐れて改善を勧告するにとどまり、簡易調査工場の対象外にするなどの厳正な対応ができなかったと振り返った。
白川社長は、辞任について、「社長就任以来、取引先の思いやコミットメントに寄り添い伴走したいという哲学を持って取り組んできたが、結果として、お客さまをはじめとする関係者の皆さまや、日々現場で必死に頑張ってくれている社員とその家族の信頼を裏切ることになってしまった。失った信頼を回復するためには、まずは自分の進退を明らかにすることが経営者としての責任だと考えた」と述べた。