2023.08.16 東京海上HD 米国のGGEBS社を買収、成長見込まれるギャップ医療保険取り込み

東京海上ホールディングスは7月18日、同社グループの米国 HCC Insurance Holdings,Inc. 社(Tokio Marine HCC社、以下、TMHCC社)を通じて、当局からの認可等を条件として米国の保険総代理店 Gulf Guaranty Employee Benefit Services, Inc. 社(以下、GGEBS社)を買収することで売買契約を締結したと発表していたが、8月1日にその買収が完了したことを発表した。出資資金は全額TMHCC社の手元資金から充当した。

GGEBS社は、米国で拡大が期待されている中小企業向けのギャップ医療保険を取り扱う保険総代理店。ギャップ医療保険とは、雇用主が従業員に対して手配する「プライマリー健康保険」で支払いの対象外となる医療費用を補償するための付随的な保険の総称で、メーンの健康保険である「プライマリー」に対して「セカンダリー健康保険」と呼ばれることもある。GGEBS社のギャップ医療保険は、「プライマリー健康保険」で高額の免責金額が設定されている場合に、その免責金額を下回る医療費用の一部を補償する商品。同社は1970年の設立で、主な所在地は米国ミシシッピ州フローウッド市。従業員数約75人で取扱保険料は約5700万ドル(約76億円)。
米国では企業による従業員への健康保険提供が義務付けられているが、医療費高騰に伴い健康保険の保険料負担が大きくなっており、「プライマリー健康保険」の購入に代えて自家保険化したり、中小企業を中心に「プライマリー健康保険」で高額免責金額のプランを選択するなどして、コスト抑制を図る企業が増加している。GGEBS社のギャップ医療保険は、顧客のニーズに合わせ柔軟に補償内容を設計することができ、コストを相対的に抑制しながら従業員に対する福利厚生を維持・向上させたい中小企業を中心に注目されているという。
東京海上HDでは今回の買収における戦略的意義として、①拡大が期待されるギャップ医療保険マーケットにおける成長の取り込み(TMHCC社の強固な財務基盤、ブランド、全米での販売網等により同事業の成長を後押しすることで、今後も拡大が期待されるギャップ医療保険の成長を取り込むとともに、さらなる事業分散を図る)②企業向け医療保険マーケットにおける商品ラインアップの拡充を通じたプレゼンス強化(GGEBS社のギャップ医療保険事業の獲得により商品ラインアップを拡充することで、企業向け医療保険マーケットにおける顧客や保険ブローカーからの支持拡大およびプレゼンスの強化)―を見込んでいるとのこと。
東京海上HDでは、海外保険事業の規模・収益の拡大をグループ全体の成長ドライバーと位置づけ、先進国および新興国の両市場において、内部成長力の強化と戦略的なM&Aの推進により、グローバルな成長機会と分散の効いた事業ポートフォリオの構築を追求している。先進国では数々の買収案件を通じ、これまでスペシャルティ種目を中心としたポートフォリオを構築してきた。また、大型の買収と並行して2015年以降は既存の事業のさらなる強化と収益性の拡大を図るための買収(ボルトオン買収)も実施してきており、ここ数年では、21年1月にブラジルで大手国有銀行グループと保険合弁会社を設立、22年1月に米国で有給休暇補償制度に対応した保険を販売する生命保険会社SSL社を買収している。