2023.07.31 日本航空保険プール 22年度概況 提供保険料は19億円増113億円、民間航空機事故は115件と増加

日本航空保険プールは7月20日、第241回航空保険プール委員会を開催し、一般概況報告とともに2022年度プール運営費決算報告など各議題を審議・承認した。22会計年度のプール提供(グロス)保険料は前年度の約94億円から約19億円増加し、約113億円(前年比119.8%)となった。また、選挙の結果、委員長に明樂裕氏(東京海上日動常務執行役員)、副委員長に工藤成生氏(三井住友海上取締役専務執行役員)を選出した。

第241回航空保険プール委員会では、国際マーケットの動向として、次の報告が行われた。
01年の米国同時多発テロの影響で急激にハード化したエアライン分野の機体・賠償責任保険の料率水準は、その後、09年に発生したエールフランス機の大口事故直後の一時的なハード化という一部例外を除き、航空機の安全性向上も追い風となり一貫してソフト化傾向が継続してきた。
しかし、17年以降、大口自然災害の発生により再保険マーケット全体が徐々にハードに転じる動きを見せると、18年10月に発生したライオン・エア610便墜落事故(死亡乗員・乗客数189人)、19年3月に発生したエチオピア航空302便墜落事故(死亡乗員・乗客数157人)を契機に、航空保険マーケット全体で保険料率が顕著に上昇する局面に移った。
22年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻に伴い、航空保険の事故報告もされている。これにより、戦争リスクに対する保険料は上昇している。一方で、前記以外についてはハード化の動きは見えていないが、米国のソーシャルインフレーションやクレームコストの増加により、今後マーケットがハード化する可能性がある。
22年の民間航空機事故の発生件数は115件で、このうち死亡事故は16件。22年は航空需要が回復傾向にあったため、事故件数も21年対比で増加した。大きな死亡事故としては、3月に発生した中国東方航空(死亡乗員・乗客数132人)の墜落事故がある。
IATA(国際航空運送協会)の発表によると、22年の総旅客数は19年対比約83%と新型コロナウイルスの流行前と対比して約8割の水準まで回復した。23年は、19年対比96%まで回復すると予想されている。
22年暦年ベースの宇宙保険マーケットは、21年の緩やかなソフト化が継続し、寿命保険を中心に料率の低下が見られた。マーケットの収保規模は21年に比して縮小したものの、大口の保険金支払いはVegaC2号機の打上げ失敗によるPleiades5および6の全損事故のみで、マーケット全体としては収入保険料が支払保険金を上回り、経費等を加味しても収益確保に至る結果。