2023.07.13 日本生命 第76回定時総代会 23年度、マイナス基調を脱する1年に グループ9万人の実行力向上へ
日本生命は7月4日、大阪市のリーガロイヤルホテル(大阪)で第76回定時総代会を開催した。議長を務めた清水博社長が2022年度決算などを報告し、決議事項では「2022年度剰余金処分案承認の件」を含む6議案全てが承認された。清水社長は23年度について、「コロナ禍で進めてきた取り組みが実を結ぶことにより、業績を伸ばし、これまでのマイナス基調から脱する年度としなければならない。事業運営の根幹であるお客さま本位の業務運営とサステナビリティ経営の高度化を通じ、販売業績の伸展、安定的な利差益の確保・リスク削減の両立、グループ収益力の強化の3点を一層推進することで、『生産の早期回復・向上』と『収益力・健全性の向上』を目指していく」と語った。
中期経営計画「Going Beyond―超えて、その先へ―」(2021―2023)の2年目に当たる22年度の決算について報告した清水社長は、新型コロナウイルス感染症の第7波、第8波による感染拡大に伴って新契約が減少する一方、給付金等の支払いは大幅に増加したと説明。また、金融・経済環境については、欧米の大幅な金融引き締めに伴う海外金利上昇により外国債券等に対するヘッジコストが増加したと述べ、単体と連結いずれも保険料等収入は増収となったものの、基礎利益については減益となったと総括した。
また、同社の管理職であった元営業部長が金銭を不正に詐取していた事案や法令違反を伴う不正契約を多件数取り扱っていた事案について謝罪し、今後も、管理職層に対するコンプライアンス教育の強化と徹底や、不祥事案の未然防止に向けた取り組み等の再発防止策とともに、コンプライアンス態勢の一層の強化に努める方針を説明した。
単体の個別保険の新契約は、顧客接点の減少や貯蓄性商品の保険料引き上げを理由に年換算保険料・件数ともに減少し、保障額も医療保障ニーズが高まる中、死亡保障の販売が減少したことを背景に減少した。
保有契約においては、新契約の減少や減少契約の増加により年換算保険料と保障額等はともに減少した。なお、減少契約の増加は解約等によるもので、海外金利の上昇や円安の進行等を受け、顧客が設定した目標金額に解約返戻金が到達したことにより外貨建て保険の解約が増えたためだと説明した。
続いて収支財務の状況について報告した。保険料等収入は、内外金利の上昇により金融機関窓販や営業職員チャネルにおける一時払い商品の販売量が増加したことにより、4兆6479億円と、前年度から3400億円の増収となった。
基礎利益は前年度から2764億円(35.7%)減の4988億円と大幅な減益となった。この理由については、新型コロナウイルスによる保険金・給付金支払いの増加により保険関係収支が減益となったことと、内外金利差の拡大に伴うヘッジコストの増加により順ざやは確保したものの資産運用収支が減益になったことの2点があると説明した。
また、キャピタル損益についても、988億円と前年に比べて2199億円の減少となった。これはポートフォリオの改善を図るための入替売買により低利回りの外国債券等を売却した結果、売却損が発生したことによるもので、臨時損益についても追加責任準備金の積み増し等により引き続きマイナスとなった。
基礎利益にキャピタル損益と臨時損益を加えた経常利益は前年度に比べて2453億円(49.7%)減の2478億円となり、経常利益に特別損益と法人税等を反映した当期純剰余は前年度に比べて1644億円(46.7%)減の1874億円となった。
23年度の重点取り組みとしては、顧客本位の業務運営とサステナビリティ経営の高度化を掲げ、「お客さまの信頼の上にのみ事業が成立する」という認識の下、顧客の声を起点とした継続的なサービスの向上や不祥事案の未然防止、苦情減少への一層の取り組みを推進すると説明。さらに、サステナビリティ経営では、人・地域社会・地球環境の領域に重点を置き、サステナビリティ向上にどの程度寄与したかを可視化し、役員・職員一人一人の業務に結び付け、全社一丸となってサステナビリティの実現に取り組む考えを示した。
主力である営業職員チャネルの業績伸展に向けては、対面にオンラインを組み合わせた活動のさらなる高度化を推進。一方では、営業職員一人一人に対するサポートの強化にも努める方針で、23年度は全国共通のテーマとして「地域の健康増進」を営業職員の活動に組み込み、都道府県との包括連携協定等の下、さらなる地域貢献を目指すことで、営業職員のモチベーションの向上や新規顧客の獲得につなげていく。さらに、長く安定的に活躍できる営業職員の育成に向けて「ニッセイまごころマイスター認定制度」において、これまで以上に「お客さまの立場に立った活動」を推進していく他、営業職員の定着率の改善等についても、営業現場と本部が一体となって取り組んでいく。
安定的な利差益の確保とリスク削減の両立に向けては、運用ポートフォリオの変革とESG投融資の強化に取り組む。
グループ収益力の強化では、事業の拡大を通じた契約者利益の最大化を掲げ、①長期的な保障責任の全う②中長期的な契約者配当の一層の充実③十分なサービスの継続提供―に取り組む。
具体的には、国内保険ではグループ一体でのマーケット開拓による顧客数のさらなる拡大、海外保険では既存出資先の成長路線への回帰と先進国市場への積極展開、アセットマネジメントでは資産形成ニーズの取り込みとグループ会社の運用力強化、新規事業領域ではヘルスケア・子育て・シニア領域を中心とした既存取り組みの推進に取り組む考えを示した。
人的投資の強化については、変化する労働マーケットへの対応と従業員満足度の向上を一層推進するとともに、「人財価値向上プロジェクト」を通じて営業職員・内務職員ともに多様な人材の多彩な活躍を後押しする。
本年度については、全職員を対象とした賃上げや、仕事とライフイベントの両立支援など、さまざまな人への投資を進めているとして、「こうした人的資本の強化を通じ、あらゆる取り組みの土台となる日本生命グループ9万人の実行力をさらに高めることが最も重要だと考えている。多様な価値観や経験を持った人材が能力を最大限に発揮し、多彩に活躍すること、そして全員の力を結集すること。これが当社グループの人的資本の考え方であり、一言で言えば、人は力、人が全てということだ」と強調した。
この他、報告事項として、評議員会に対する諮問事項とニッセイ懇話会開催結果報告が行われた。