2023.03.29 NTTデータ 保険共同ゲートウェイ20周年、ネットワークインフラの実績重ねる 高まるAPI連携ニーズにも対応

NTTデータが提供する「保険会社共同ゲートウェイサービス(以下、保険共同ゲートウェイ)」が20周年を迎えた。銀行窓販の開始に伴い、乗合代理店の業務効率化のために開発された同サービスは、この20年間、ペーパーレス化やデジタル化、業法改正といった時代の変化に対応しながら、保険業界のネットワークインフラとして確かな地位を確立してきた。2022年には、生保業務の標準的なAPIをまとめた「生保標準API」を公開し、生保会社によるAPI公開をサポートする「insurance API PORT(R)」を提供するなど、進化を続けている。

1月17日、都内のホテルで開かれた20周年記念式典には保険会社40社を含む約100人が集まり、20周年の節目を祝った。参加者らが所属保険会社の枠を超えて親交を深める姿からは、保険共同ゲートウェイが20年にわたって紡いできた業界の絆がうかがわれた。
保険共同ゲートウェイは、保険販売規制の緩和による金融機関での窓販開始に伴い、2002年4月からサービス提供を開始した。現在では生保38社、損保19社、ASP3社と、約1万社の保険代理店が同サービスを利用している。
主なサービスはシングルサインオンサービス(SSOサービス)とファイル転送サービスの2種類。SSOサービスによって、乗合代理店の保険募集人は一つのID・パスワードで複数の保険会社のシステムにアクセスできるようになり、ファイル転送サービスを使うことで、業界共通フォーマットに従って送信される保険契約データを24時間365日いつでも受信できるようになった。これらのサービスは、保険販売時だけでなく、販売後の業務管理など、保険会社と保険代理店、保険募集人との間のやり取りの業務効率化に大きく寄与している。
20年間、NTTデータでは顧客との「ロングタームリレーションシップ」を第一にサービス提供を続けてきた。NTTデータのサービスではあるものの、技術革新や世の中の情勢の変化に合わせて、保険会社と代理店業務、保険業界において求められるサービスのあり方について、運営協議会という形で、保険会社とともに歩みを進めてきた。
こうした姿勢は、サービスの立ち上げ当初、複数の保険会社と協議を重ねて共通仕様やセキュリティー基準、事務オペレーションルールを作ってきたときから変わっていない。
業界共通インフラであるがゆえ、法規制の変化など、保険業界の新しい動きへの対応や共通課題の解消にも保険会社とともに取り組んできた。16年の地銀のペーパーレス要請に対しては、地銀窓販時の申し込み手続きをペーパーレスで行う仕組みを構築し、申し込み手続きの迅速化や代理店業務の効率化に貢献した。現在も複数の保険会社とワーキンググループという形で共創しており、業界におけるペーパーレスの仕組みの普及や、これらを土台とする新たなサービスの検討・実施を進めているという。
新しいことを始めるときには、立場によって言い分が異なり、折り合いを付けるのが難しいときもあるが、同社がプラットフォーマーという立場を生かして、地銀側の意見と保険会社側の意見をそれぞれとりまとめ、落としどころを探るといった働きも担ってきた。
さらに、未来に向けた新たな動きも始まっている。近年、保険代理店向けサービスを提供するインシュアテック企業などから、生保会社に対するAPI公開の要望が本格化し、API連携ニーズが増大している。保険会社が各サービス・保険代理店と個別に仕様検討を進めた場合、双方にとって負担が大きくなってしまうことから、NTTデータでは保険会社と販売代理店間のn対nのシステム接続仕様を標準化することで、API公開者(保険会社)とAPI利用者(サービサー、代理店等)の双方の接続対応負担を軽減し、APIの有効利用によるサービスの高度化、業務効率化の実現に取り組んでいる。
同社は、20年に業界標準APIを定義するワーキンググループを主要生保会社6社と発足し、22年に保険業界標準APIを「insurance API PORT(R)・標準API公開サービス」として実装・提供することで、保険会社のAPI公開を速やか、かつ、安価で実現することに寄与。
現在複数の保険会社に提供を開始しており、同サービスを介して、保険共同ゲートウェイ上で第一フロンティア生命商品の時価残高(解約返戻金や積立金額など)を照会できるサービスへの情報連携を実施している。
また、行政機関と金融機関をつなぐNTTデータの預貯金照会電子化サービス「pipitLINQ(R)」についても、従来同社の別部門が行政向けに提供していた同サービスを保険業界に適用し、保険業界の業務効率化と照会業務のペーパーレス化に貢献している。
今後についても、保険会社が抱える課題に対して、共同ゲートウェイが持つネットワークや、顧客との接続性を生かした取り組みを推進していく考えだ。同社の保険ITサービス事業部保険ネット担当の望月優貴課長代理は「保険募集人の皆さまがご契約者さまに対して、しっかりとしたサービスをお届けできる環境を維持し続けるという部分についてはこれからもコミットしていきたい。その上で、当社のインフラやアセットを活用した、新たな価値提供に向けたチャレンジも続けていく。次の30周年に向けて、保険の未来を担う一翼となれたら幸いだ」と展望する。