2023.03.20 損保協会 23年度自賠責運用益拠出事業、38事業に総額17.1億円 新たに4事業に対し支援
損保協会は2月16日の理事会で、各損害保険会社から拠出される自動車損害賠償責任保険の運用益を活用し、新規4事業を含む38事業に対し総額17億888万円の支援を決定した。
同協会では1971年から、自賠責運用益を活用して自動車事故防止対策事業や自動車事故被害者対策事業などの多様な分野に対する支援を行っている。
2023年度は、事故当事者や家族等への支援につながるよう、自動車事故被害者対策を中心に取り組むとともに、昨今の交通環境の変化を踏まえて、自動車事故防止対策にもより一層注力することを基本方針としている。なお、自動車事故防止対策においては、自動車事故の防止に貢献するさまざまな取り組みに関して幅広く情報を収集するため、19年度から公募制を導入し、より社会的ニーズに即した事業・研究に拠出するように努めている。
23年度の自賠責運用益拠出事業では、①自動車事故防止対策(啓発・教育、機器の寄贈、研究)②救急医療体制の整備(機器・機材の購入費補助、救急医師・救急看護師の育成、ドクターヘリ事業の推進)③自動車事故被害者対策(相談等への支援、交通遺児への支援、被害者・家族等の心のケア、講習会の支援、研究支援)④後遺障害認定対策(公募による医療研究助成)⑤医療費支払適正化対策―を支援する。
23年度は新たに次の四つの新規事業・研究に対し支援を行う。
一つ目は、前記①の自動車事故防止対策の取り組みとして、「地域の安全を守る『高齢者安全運転点検・助言』の実施と『中学生の交通事故防止自己学習システム』の構築(事業主体はNPO「安全と安心 心のまなびば」)」を支援する。同事業では、高齢者の安全意識の向上と安全な運転行動寿命の延伸を目的に「高齢者安全運転点検・助言プロジェクト」を立ち上げ、高齢運転者の運転能力・身体機能・健康体力の測定結果に基づく専門家による助言を実施する。また、子ども(中学生)に向けては、生徒が主役となり自己学習とアクティブラーニングを実施することで安全意識の向上を図るシステムの構築を目指す。これらの取り組みにより、高齢者の安全な運転行動寿命の延伸と子どもの交通事故防止の教育効果の向上が期待されるとしている。
二つ目は、同じく前記①の自動車事故防止対策の取り組みとして、「体調起因性事故予防に向けた効果的なドライバーモニタリングおよび運転支援技術の検討(研究主体は(一社)日本交通科学学会)」を支援する。自動運転技術が進歩し、対応主体がシステムになっても運転者はシステムの介入要求時には適切に対応することが求められる。同研究は、運転者の居眠りや急な体調変化にも適切に対応できる効果的なドライバーモニタリングシステムの構築と運転支援技術を検討し、今後進展する自動運転技術にも適用させていこうという新たな試みで、体調起因性事故の防止対策に実践的に寄与し広く活用されることが期待されるとしている。
三つ目は、前記②の救急医療体制の整備の取り組みとして、「交通外傷で受傷した開放骨折患者に明るい未来をもたらす日本全国で運用可能な外傷ネットワークの構築(事業主体は慶應義塾大学医学部救急医学)」を支援する。緊急手術を要する開放骨折治療に対する正しい知識を、救急隊や整形外科が効率的に学べる教育システムと教科書を構築・作成。さらに、作成した教科書に準じたアプリケーションを開発し、アプリケーションを用いた外傷ネットワークモデルの構築を行い、地域を限定して効果を検証の上、AIを用いた全国で運用可能な搬送システムの構築を検討する。同取り組みにより、感染対策の観点から緊急対応が必要とされる開放骨折患者の迅速かつ的確な搬送システムの普及が期待されるとしている。
四つ目は、前記③の自動車事故被害者対策の取り組みとして、「高次脳機能障害者のピアサポーター養成のための実践的研究(研究主体は千葉リハビリテーションセンター)」を支援する。高次脳機能障害者の復職に向けて、自治体が開催する「障害者ピアサポート養成研修(自治体研修)」への参加を促し、就労にまで結び付けることを目的として、エスポアール出雲クリニックを中心に作成した「ピアサポーター養成準備研修テキスト」を活用し、全国各地でピアサポート養成研修の「準備研修」を実施する。また、同研修での意見や実態を反映させ、より実効性の高いテキストに改定して普及させることも目指す。同研究で行う「準備研修」に参加することで自信をつけ、自治体研修への参加意欲を後押しし、高次脳機能障害領域でのピアサポーターの増加と就労の推進が期待されるとしている。