2023.02.27 生保協会定例会見 営業職員コンプライアンスリスク管理着眼点公表、6項目のプリンシプルと参考事例

生保協会の稲垣精二協会長は2月17日、同協会会議室で定例会見を行った。会見では、22年度の重要テーマに位置付けている「顧客本位の業務運営の推進に向けた取り組み」について、生保協会として「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」を取りまとめ当会ホームページで公表したことを報告し、その取り組み内容を説明した。稲垣協会長は、「生保協会としても、引き続き各社の取り組みの高度化の後押しに向けて、各社の取り組み状況等を確認し、必要に応じ『着眼点』の更新を行うなど継続的なフォローアップに取り組む」と述べた。
稲垣協会長は、第一生命個社の事案をはじめ、生命保険業界で発生した営業職員チャネルでの不適正事案は、顧客の人生に寄り添う立場としてあってはならないとし、不適正事案の発生防止に向けて真摯(しんし)に取り組むべき課題だと強調した。22年度は、生保協会として、会員各社の営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢のさらなる高度化に向けて参考となる考え方や視点、取り組み事例などを「着眼点」として取りまとめるため、専門PT等を活用しながら、検討を進めてきた。取り組みを実効性あるものにするには、経営層の関与を高め、各社の営業職員チャネルの属性や制度・運営面の違い等への理解を深めた上で、各社の取り組みを後押しすることが重要との考えを軸に、営業職員チャネルを有する経営トップと対話する機会に加え、関係各社の経営トップ、役員層が一堂に会して意見交換する場を設け、業界として議論を重ねてきたと説明した。
営業職員チャネルは顧客との強固な信頼関係を構築し、顧客に寄り添ったコンサルティングの提供が強みとなるが、顧客との緊密さが不適正事案につながるリスク要因ともなる共通点がある。一方、各社のビジネスモデルや経営戦略・業務運営・人事制度等には違いがあるため生じるリスクも異なる。
そうした点から、コンプライアンス・リスク管理態勢の高度化に向け、各社が自社のリスクを適切に評価し、リスクや不適正事象の要因となる要素を考慮した上で、自社に応じた体制を構築することが重要であり、生保協会として、各社に共通する原理・原則となるプリンシプルを導き出し、態勢構築の参考となる取り組み事例とあわせて体系的に整理することが効果的と考え、「着眼点」として取りまとめたと述べた。
「着眼点」は、各社が体制の高度化を図るための考え方に関する原理・原則や取り組み事例を①コンプライアンス・リスク管理態勢②コンプライアンス・リスクの評価③コンプライアンス・リスクに対するコントロールの整備・実施④コンプライアンス・リスクのモニタリングおよび不適正事象の(予兆)把握時の対応⑤コミュニケーション⑥監査―の六つの項目に整理し、六つの項目それぞれで原理・原則としての「プリンシプル」を示した上で、プリンシプルが指す基本的な取り組みをイメージしやすくする「補足事項」と、業界内外の事例を踏まえた「参考となる取り組み例等」をまとめたと説明した。 例えば、「コンプライアンス・リスクの評価」の項目では、生保会社の営業職員チャネルや、自社のビジネスモデル等から生じ得る固有のリスクについて評価し、適切な統制策を実施することの重要性を示しているとした。また、「監査」の項目では、内部監査が有効に機能するには、十分な人材を質と量の両面で確保するだけでなく、外部の豊富な知見を有する社外取締役等との間で制度的な特長を生かしながら、適切に連携するビジネスモデルや経営戦略に基づくフォワードルッキングな視点でリスクアセスメントの実施を踏まえた監査を実施する等、改善と高度化に向けた創意工夫を継続することが重要であることを示していると説明した。
不適正事案の撲滅に向けては、各社が「着眼点」の公表後も不断の取り組みを継続する必要があるとの観点から、関係各社の経営トップが一堂に会する場を設け、経営陣が強いリーダーシップを発揮して「着眼点」の内容を参考にしながら、自社のリスクを踏まえた態勢強化に継続的に取り組んでいく必要があるという認識をあらためて共有したと述べた。
次に、「持続可能な社会の実現に向けた生命保険業界としての役割発揮」に向け、「生命保険会社における人権対応ハンドブック」を公表したことを報告した。「ビジネスと人権に関する行動計画」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」など、日本政府の取り組みも進んでいることから、生保会社のバリューチェーン全体で「人権デュー・ディリジェンス」を実践する方法などを国内外の具体的な事例とあわせて確認することができる、保険会社の実務担当者向けの解説書を作成したもの。
なお、新型コロナウイルス感染症への対応で、2022年12月実績までの生保協会集計の死亡保険金・入院給付金の支払状況は別表の通りで、入院給付金の全期間累計の支払件数は約1022万件、支払金額は約9264億円で、このうち「みなし入院」は約988万件、約8885億円となっている。