2023.01.10 あいおいニッセイ同和損保 自治体に孤独死の大家向け保険提供、名古屋市が大家の損害を補償する制度導入 貸主負担軽減し単身高齢者の住宅確保を後押し
あいおいニッセイ同和損保は11月28日、自治体が家主費用・利益保険の契約者となり、貸借人の孤独死等に係る賃貸人(以下、大家)の損害を補償する商品を開発し、全国の自治体への提供を開始すると発表。その第1弾として名古屋市が12月1日から同保険・制度を導入した。同社によると、孤独死による大家の損害を補償する保険契約を自治体と保険会社が直接締結するのは国内初だという。
近年、単身高齢者世帯の増加に伴い、高齢者の孤独死が増加している。国土交通省が集計した「死因別統計データ」によると、2003年時点では1441人だった65歳以上の高齢者による孤独死数は、18年には3867人となり、15年間で約2.6倍に増加している。孤独死が発生した賃貸住宅では、特殊清掃やリフォーム、賃料の下落といったリスクを大家が負担する必要があるため、大家が単身高齢者世帯に賃貸することを敬遠し、高齢者が住宅を借りにくくなっているという社会課題がある。一部自治体では大家が契約した保険の保険料を補助する制度もあるが、大家自身が保険に加入する必要があり、手続きの煩雑さなどから普及は限定的だった。
これまでも大家向け保険商品である「家主費用・利益保険」を通じて原状回復費・家賃損失等を補償し単身高齢者の住宅確保を後押ししてきた同社では、今回、こうした課題・背景を踏まえ、自治体が保険契約者となり保険料を負担し賃借人の孤独死における大家の被る損害を補償する制度を構築することで大家の保険加入への負担軽減を図り、今後も増加が見込まれる単身高齢者世帯の住宅確保を後押しするとしている。
今回の自治体向け保険は、①住戸の所在地が契約者となる自治体であること②住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として自治体へ登録がされていること③保険期間の開始時点で賃借人が満60歳以上の単身世帯であること―の要件を満たす民間賃貸住宅を賃貸している大家が補償対象となる。
補償内容は契約する自治体ごとに異なるが、名古屋市の例では次の通りとなっている。
▽家賃損失補償
戸室内死亡事故(自然死、病死、自殺、犯罪死を含む。以下同様)を原因として生じた空室期間中の家賃減少による損失および値引き期間が発生したことによる損失。支払限度額は1カ月当たり5万円、支払限度期間は賃貸借契約終了の日から12カ月、縮小支払割合は50%。
▽原状回復費用補償
戸室内死亡事故を原因として戸室に物的損害が生じた場合の原状回復費用(賃貸可能な状態に補修、修繕、清掃、消毒または消臭等を行うために要する費用)から敷金を控除した額。支払限度額は100万円(注)。
▽遺品整理等費用補償
戸室内死亡事故が発生した結果生じた、①遺品整理費用②相続財産管理人選任申立諸費用(弁護士等への報酬を含む)③おはらいまたは追善供養に要する費用。支払限度額は100万円(注)。
▽建物明渡請求訴訟費用
戸室内死亡事故が発生したことで賃貸借契約解除および建物明渡請求訴訟を提起し、強制執行(建物明渡執行)の申立を行うために生じた費用(弁護士等への報酬を含む)。支払限度額は100万円(注)。
保険料は支払限度額、支払限度期間や縮小支払割合等により異なるが、例として対象住戸が1000戸の場合で年間保険料が220万円程度としている。
同保険制度を活用することで、自治体にとっては「地域住民の安心感の醸成」、大家にとっては「保険料負担なく孤独死等のリスクヘッジが可能」、単身高齢者にとっては「入居可能な住宅の確保」―と、自治体、大家、住宅を確保したい単身高齢者のそれぞれにメリットを提供できるという。
同社では今後、全国の自治体に対して名古屋市と同様の制度の構築を提案・支援することで単身高齢者の住宅確保を後押ししていく考えで、さらに最先端のデジタル技術と掛け合わせることで孤独死の発生を「未然に防ぐ」機能を開発し、社会課題の解決を加速する付加価値を高めた「CSV×DX」(シーエスブイバイディーエックス)商品を22年度中にリリースする予定だとしている。
(注)支払限度額は「原状回復費用補償」「遺品整理等費用補償」「建物明渡請求訴訟費用」合算で100万円。