2022.10.06 損保ジャパン・enechain 電力業界の信用リスク低減、「eClear」提供開始
損保ジャパンは9月7日、エネルギー卸取引マーケットプレイスを運営する㈱enechain(東京都港区、野澤遼代表取締役)と連携し、電力業界の信用リスクを低減する新たなサービス「eClear」を共同開発し、提供を開始したと発表した。
2016年の電力自由化以降、700社を超える企業が電力小売事業に参入し、年間流通額は25兆円に上るという(enechainによる)。enechainはそこで新たに卸電力取引市場を運営するスタートアップで、フェアプライスを見える化する「価格発見機能」と、フェアプライスに基づいて取引を成立させ商品を流通させる「流通機能」を提供している。
「eClear」は、enechainが運営する電力ヘッジ取引市場でエネルギー事業者の代金未払いリスクを保険で低減するサービスで、enechainと損保ジャパンが独自で設計・開発した。エネルギー事業者の信用問題の発生や連鎖倒産等を防ぎ、マーケット全体で電力の現物取引の信頼性を高める日本初の取組みだという。電力取引には、電力現物の受渡有無や取引形態(相対取引・取引所取引)等により複数の取引方法があるが、今回開始したサービスは現物の受渡がある相対取引が対象。9月1日からサービス提供を開始し、既に初回取引が成約に至っているとのこと。
2021年冬以降の卸電力取引市場の価格変動の高まりを背景に、電気事業者によるリスクヘッジの必要性が強く認識されている。リスクヘッジの一つとして法人間で個別に取り交わされる相対契約のニーズが高まっているが、相対契約では取引先の信用リスクという課題が存在しているという。特にロシアによるウクライナ侵攻後、世界のエネルギー価格は高騰しており、電力業界全体の取引信頼性を高める必要があった。そこで両社はこの課題を解決すべく、エネルギー事業者の信用問題の発生や連鎖倒産等を防ぐサービスを設計・開発した。
業界大手サプライヤーからは「これまで現物の卸販売を行う際の与信管理が経営課題の一つだったが、本仕組みの活用で与信リスクを低減した形で取引を行える。与信管理の手段の一つとして、今後、『eClear』に期待したい」、業界大手新電力からは「特に新規取引先との取引においては、買主売主双方で与信チェックや契約書のすり合わせに時間を要し、スムーズな取引ができなかった。本仕組みの利用でこれまで以上にタイムリーな取引が可能となり、リスクヘッジやポジション管理がしやすくなる」とコメントが寄せられているという。