2022.09.27 台風第14号被害に西日本で災害救助法適用 損保各社で対策体制構築、9県286市町村で特別取扱実施

大型で非常に強い令和4年台風14号が9月18日九州地方に上陸、その後日本列島を縦断し各地に大きな被害をもたらした。内閣府は18日、山口県、高知県、 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の286市町村に災害救助法の適用を決定、これを受けて20日、中国財務局、四国財務局、九州財務局および福岡財務支局が「令和4年台風第14号にかかる災害等に対する金融上の措置について」を各金融機関に発出した。損保協会、生保協会は災害救助法が適用された地域で特別取扱いを実施することを20日までに公表、生保会社は、被災契約者の契約について①保険料払込猶予期間の延長(最長6カ月)②保険金・給付金、契約者貸付金の簡易迅速な支払い(申し出により、必要書類を一部省略する等により、簡易迅速な取扱い)―を実施する。また損保会社は、火災保険、自動車保険、傷害保険などの各種損害保険(自賠責保険を除く)について、①継続契約の締結手続き猶予(災害救助法の適用日から2カ月後の末日〈22年11月末日〉までに満期日が到来する継続契約の締結手続きについて、22年11月末日まで猶予)②保険料の払込猶予(災害救助法の適用日から2カ月後の末日〈22年11月末日〉までに払い込むべき保険料の払込について、22年11月末日まで猶予)―を実施する。

損保協会では19日、白川儀一協会長名で「令和4年台風14号による災害により被害を受けられた皆様へ」として、「このたびの令和4年台風14号による災害によりお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。私ども損害保険業界といたしましても、皆様のお力となりますよう、被害状況の把握に努め、皆様からのお問い合わせ・ご相談等に親身にお応えするとともに、保険金の迅速なお支払いに全力で努めてまいります」とする協会長コメントを発表。
損保各社の対応状況は以下の通り。
■損保ジャパン(9月19日現在)
9月18日に本社に危機対策本部を設置した。大阪にバックオフィスを100人体制で設置予定。被害状況に応じて、被害地域に災害対策本部の設置を検討する。全国の保険金サービス課への電話転送による事故受付体制を準備中で、被害状況の確認や迅速な保険金の支払いを目的として、衛星画像やドローン等の使用も検討中。
事故受付方法として、電話での受付に加えて、LINEによる事故受付も案内しており、電話がつながらない場合でも、顧客を待たせすることなく、24時間事故の連絡を受けることが可能としている。
また、台風の被害による保険金請求の代行を行う代わりに、高い手数料を請求するなどの悪徳な修理業者の被害が増加しているところから、専用の窓口を設置して、同社の契約者が悪徳業者の被害にあわないように注意喚起を行っている。
■あいおいニッセイ同和損保(9月20日現在)
9月20日に災害対策室(立ち合い拠点)を宮崎県・鹿児島県・大分県・佐賀県に設置。支援要員として、本社から各拠点に2人ずつ派遣するとともに、鑑定人も各拠点に2~3人ずつ派遣した。
事故受付・保険金支払体制としては、火災保険に関しては風水災事故の火災保険の保険金請求は、災害対応バックアップセンター(東京都渋谷区)で初期点検・初期対応・書面鑑定・協定などを中心に集約対応する。同センターでは1日当たり約70人を動員するが、それ以外にも同センターには集合させず、各所属部署自席でリモート対応(初期点検・初期対応・書面鑑定・協定など)も行う。自動車保険に関しては、車両サービスセンター(新宿・大阪・名古屋)で集中対応する。
大規模災害時の迅速な支払いに向けた取り組みとして、①ペーパーレス機能を最大限活用し、全国の拠点でリモートによる災害対応(初期点検・初期対応・協定など)②屋根の損害確認等については、同社の損害保険鑑定人が自らドローンを操縦することで効率的に損害調査③顧客の要望等も踏まえて、提携している優良な修理業者(テラリフォーム等)の紹介も行い、災害からの早期復旧に尽力④顧客がスマートフォンやパソコンから損害写真を送信するだけで、AIが写真から損傷箇所を自動で解析・検出し、瞬時に保険金を算出する仕組みも活用し、迅速な保険金支払いを実現⑤事故の連絡は、事故受付センターへの入電のほか、ホームページ上でも受け付け―などを行う。
■三井住友海上(9月20日現在)
9月19日に駿河台ビルに「損害サポート対策本部」を設置し、各地域の分散対策室および集約対策室(本社の火災新種損害サポート部に設置)と連携して対応する。集約対策室は100人体制で運営するが、今後の状況により増員も予定している。顧客にファーストコンタクトを実施する工程(初動工程)は、全国の分散対策室(各地の火災新種・総合保険金お支払センター)で実施。
事故受付は、臨時コールセンター(駿河台ビル・横濱ゲートタワー等)を設置し、通常の事故受付センターと合わせて、受付要員を460人から560人(100人増員)体制で対応している。
火災保険の損害調査体制では「自然災害工程管理システム(DPC:Disaster Process Control)」を活用し、従来の集合型の対応ではなく、全国の火災新種・総合保険金お支払センターの拠点で自然災害事案を工程ごとに分散させて対応を行う。
自動車保険では、現状では、契約の相対の保険金お支払センターで対応を行う。各保険金お支払センターに車両の損害調査拠点を設置し、対応を進めている。
火災・新種の風災の被害については、顧客から提出される写真と見積もりをもとに査定(高額事案等は立会調査も実施)を行う。水災の被害については、立会を実施し、査定を行うが、顧客から提出される写真と見積もりも適宜使用する。
自動車の風災の被害については、同社の技術アジャスターによる立会や画像で査定を行う。水災の被害については、技術アジャスターによる立会や画像による査定に加え、ビデオチャットも活用。
大規模災害時の迅速な支払いに向けた取り組みとして、①ドローンとAIを活用した水災損害調査(建物の損害)②ビデオチャットを活用した損害調査(自動車の損害)③早見表を活用した損害調査(建物および自動車の損害)―などがある。
■東京海上日動(9月21日現在)
9月18日に本店に災害対策室を設置済みで同日には対策会議を行い、情報収集や災害への対応を進めている。被災地での業務に加え、被災現地でなくとも業務を行うことができるマルチロケーション対応等によって、迅速な保険金支払いに取り組んでいく予定。
九州地方、中国地方、四国地方など被災地域ごとに対策室を設置して現地対応を行っている。これまでの災害対応同様に全国の拠点からリモートで支援を行うほか、被害が大きかった地域には鑑定人やアジャスターなどを中心として応援スタッフを派遣し、事故対応にあたる予定。
事故の受付に関しては、被害を受けた顧客からの連絡については、電話(東京海上日動安心110番、以下、安心110番)での受付に加えて、ウェブでの受付も行っている。コールセンター(安心110番)では、事故受付要員を増強して対応を進めている。なお、安心110番は、新型コロナの第7波による受付増加への対応もあり、全体で通常の1.2~1.4倍の態勢を構築して備えている状況で、台風14号で増強を図った要員はおよそ通常の1.2倍程度とのこと。東京海上日動としても、本社部門から安心110番に応援者を出し、臨時の受付サポートセンターを立ち上げて、連休中から数十人規模で事故受付の支援を行っている。
大規模災害時の迅速な支払いに向けた取り組みとして、①フィンランドのスタートアップICEYE社と連携して、被害の大きい宮崎県を中心に、大分・熊本県の衛星画像を取得し、水害の範囲・浸水高の特定ができるかを解析中で、解析結果を踏まえて今後保険金支払いへの活用を検討②ペットボトルを活用して顧客自身に被害の状況を申告してもらう「自己申告方式」の活用を熊本・大分・宮崎の各エリアで検討―とデジタル技術の活用も検討している。
なお、同社では災害の被害に遭った可能性がある顧客に向けて、LINEおよび同社アプリの「マイページ」上でプッシュ通知による連絡を実施している。