2022.09.26 生保協会 定例会見「デジタル社会の将来報告書」など説明、みなし入院見直しで顧客の理解得る考え示す

生保協会の稲垣精二協会長は9月16日、同協会会議室で定例会見を行った。会見では、22年度に取り組みを進める①「デジタル社会における生命保険業界の将来報告書」②「マイナンバー制度等のデータ利活用に関する提言書」③「生命保険会社における人権ハンドブック」―の三つについて説明した他、新型コロナウイルス感染症における給付金等の特別取扱いの「みなし入院」の支払い対象見直しに関して報告を行った上で、「生命保険業界として、お客さまの声に真摯(しんし)に対応し、丁寧な説明を行うことで、引き続き、お客さまの理解を得られるように努めていく」との考えを示した。

稲垣協会長は「デジタル社会における生命保険業界の将来報告書」について、諸外国の社会保障制度や私的保障におけるデジタル技術の活用事例などの調査や研究を進め、各社のデジタル化を推進するとともに、報告書を作成するものだと説明した。
「マイナンバー制度等のデータ利活用に関する提言書」では、マイナンバーカードやマイナポータルといったマイナンバー制度を通じた生命保険業界でのデータ利活用事例について外部からの専門的知見を積極的に活用することで、幅広くユースケースを検討し、各社のサービス導入や今後のサービス検討に資する事例集に加え、実現に向けた制度面の課題を取りまとめると説明した。
「生命保険会社における人権ハンドブック」については、企業の人権対応への期待が高まっている状況を踏まえ、会員各社の体制の高度化への後押しに向け、人権デューディリジェンスの手法等の実務的な対応を解説するものだと報告した。
「新型コロナウイルス感染症による宿泊施設・自宅療養者に係る療養証明書の取扱い等」に関する医療機関や保健所の負担軽減に向けた対応については、金融庁からの要請も踏まえ、入金給付金を有する医療保険を販売している生保会社39社では、給付金等の支払い時に、代替書類の活用などを通じて療養証明書の発行を医療従事者や保健所に求めない事務体制を構築したと報告した。また、生命保険加入者に対して、「マイハーシスの療養証明」の利用や、「PCR検査や抗原検査の結果がわかるものなど療養証明書以外に新型コロナウイルスに罹患(りかん)したことが確認できる代替書類」を提出することへの理解と協力を促すこととした。
稲垣協会長は「現時点ですでに全数把握を見直した自治体では、マイハーシスで療養証明を取得できない人が増えているものの、給付金等の請求時は療養証明書以外の代替書類を活用できるため、加入している保険会社のホームページ等で手続きの詳細を確認してほしい」と述べた。
新型コロナウイルス感染症における給付金の特別取扱については、政府のWithコロナに向けた政策の考え方と金融庁からの要請を踏まえ、「みなし入院」による入院給付金の支払対象の取扱いの見直しについて検討を進め、医療保険など入院給付金等を有する保険商品を販売している生保会社39社全社が、ホームページ等で「みなし入院」に係る給付金等の取り扱いの方針等を掲載したと報告した。
稲垣協会長は、既に新型コロナウイルス感染症に罹患した顧客から「9月25日までに請求を行わなければ給付金の支払い対象にならないのか」といった問い合わせが多く寄せられていると述べ、9月25日までに新型コロナウイルス感染症と診断された人は、9月26日以降も給付金を請求できることを強調した。
質疑応答では、「みなし入院の支払い対象範囲の見直しに関する協会長としての受け止め方について」という記者からの質問に対して、「みなし入院という特別な取り扱いを行ってきたという経緯も含め、顧客に理解してもらうことが重要と考えており、周知活動が極めて重要だと受け止めている」と回答した。
次に、「営業職員のコンプライアンスについて、会員各社のコンプライアンスリスク管理体制の高度化に向けた取り組みの具体的な進捗状況について」という質問に対して、「8月に専門のプロジェクトチームを立ち上げ、具体的な内容の検討を進めている。PT等も活用し、各社経営層の意見を聞きながら引き続き、会員各社と丁寧に検討を進めていきたい」と回答した。
なお、新型コロナウイルス感染症への対応で、同日発表された2022年7月実績までの生保協会集計の死亡保険金・入院給付金の支払状況は別表の通りで、入院給付金の全期間累計の支払件数は約351万件・支払金額約3295億円で、このうち「みなし入院」は約329万件・約3046億円となっている。