2022.07.19 日本生命 第75回定時総代会開催、9万人の力で中計達成目指す、人・サービス・デジタルで顧客支える
日本生命は7月5日、大阪市のリーガロイヤルホテル(大阪)で第75回定時総代会を開催した。議長を務めた清水博社長が2021年度決算などを報告し、決議事項では7議案全てが承認された。清水社長は、「人は力、人が全てだ。あらゆる取り組みの土台は当社グループ9万人の実行力であり、顧客本位の業務運営とサステナビリティ経営を根幹にグループ成長戦略・グループ経営基盤を強化することで、中期経営計画の達成を目指す」と語った。
清水社長はまず、21年度から開始した中期経営計画「Going Beyond―超えて、その先へ―」について、顧客本位の業務運営とサステナビリティ経営を軸に「生産性の早期回復・向上」と「収益力・健全性の向上」という目標を掲げ、「『人・サービス・デジタル』で顧客の社会と未来を支え続ける」の実現に向けて全社をあげて取り組みを進めているとした。
21年度決算については、世界的なマーケット環境の回復による海外金利の上昇で外貨建保険の販売量増加や企業業績の回復に伴う株式配当金・投資信託分配金等の増加がプラス要因だったとした一方で、新型コロナウイルスの感染拡大で、営業職員の活動がコロナ前の水準に戻りきらないことや保険金や給付金の支払額増加がマイナス要因だと総括した。
経営課題への取り組みでは、営業職員チャネルは、デジタル装備の充実や顧客との接点づくり、活動の底上げといった対面にオンラインを組み合わせた活動を実践し、LINE IDやメールアドレスを取得した顧客数が約800万人となったことから、そのデジタル顧客基盤は着実に拡大しているとした。
一方で、コロナ禍によって対面による活動が制限され、活動可能な職域や対面による契約内容確認活動が減少したことから、営業職員の本格的な活動回復に向けて契約内容確認活動の徹底や新たなマネジメントシステムを活用した丁寧な指導やフォローを行うとした。
また、育成専管指導者を軸とした一人一人に合わせた丁寧で柔軟な育成に取り組むと同時に、顧客数や資格取得を評価する「ニッセイまごころマイスター認定制度」を新たに導入し、顧客本位の活動を推進していくとした。
さらに、22年度を「販売改革元年」と位置付け、営業職員チャネルの高度化を推進し、顧客から信頼して選ばれる保険会社を目指し、営業現場の声を重視し、営業現場と本部が一体となった販売改革に取り組むとした。
商品・サービスの提供を通じた社会的役割の発揮に向けては、22年4月に早期発見や早期治療による重症化予防をサポートする新3大疾病保障保険「3充マル」、同じく安定的に資産運用を行いたいという顧客ニーズに応え、「ニッセイ一般勘定プラス」、7月には、デジタルで完結する新無配当扱特約付団体定期保険を発売したことを報告した。
また、低金利環境の継続に伴う将来的な逆ざやの懸念や国際資本規制の導入から、22年4月以降新たに加入した年金保険と終身保険、団体年金(一般勘定)では一部の既存契約を対象に予定利率の引き下げを実施した。
予定利率の引き下げに伴い、契約者となる約5100社の企業・団体に迅速かつ丁寧な対応を実施し、見直しの内容および企業・団体への影響について説明し、引き続き、1件ごとに運用・制度の見直しを提案中であり、顧客の団体年金制度に長期・安定的に貢献するとした。
新型コロナウイルス感染拡大による支払状況については、保障責任の全うに向けて、加入から受け取りまで長期にわたり顧客をサポートする体制を構築し、約款にのっとった迅速かつ確実な支払いを行うことで、顧客に安心を提供するとした。
21年度の保険金・給付金支払額は、新型コロナウイルスに係る保険金・給付金の支払対象を拡大したことに加え、罹患(りかん)者の増加により請求件数は急増した。直近では、感染拡大に落ち着きの兆しがあるものの、請求は遅れて発生することから、請求件数は高止まりの状況だと説明した。
そうした点を踏まえ、支払事務担当者の外部委託先の人員を追加するなど確実な支払いを実現する処理体制を強化し、感染が再拡大する可能性を注視し、処理工程の見直しや人材育成強化等に向けた対応が必要だとした。
グループ事業の強化・多角化については、チャネル別に特長のある元受保険会社をグループで持つことで、グループ一体で多様化する国内保険マーケットの開拓を実施する。また、デジタル環境の普及やライフスタイルの変化に伴う保障ニーズの多様化に合わせ、21年9月にはなさく生命でウェブ販売を開始したことに加え、22年4月にはニッセイプラス少額短期保険の営業を開始したと報告した。
運用力強化と事業費の効率化については、資産運用ポートフォリオを変革し、国際分散投融資の推進などでクレジット・オルタナティブ資産等を積み増していく。また円金利リスクの圧縮に向けて超長期債の積み増しを進めていくとした。
世界的な金融引き締めや地政学リスクの顕在化などにより、資産運用環境の不透明感がさらに強まっており、直近では内外金利の上昇や円安の進行、ヘッジコストの増加などにより、資金配分計画の機動的な見直しを行うなど、インフレが加速・長期化するリスク等があることから、引き続き、状況を注視していくとした。
ESG投融資の強化については、機関投資家として、持続可能な社会の実現への貢献と運用収益の両立を図りながら、「保障の全う」と「安定的・中長期的に充実した契約者配当」の実現を目指すとした。
脱炭素社会の実現に向けた取り組みについては、50年のネットゼロに向け、新たに30年までに総排出量マイナス45%以上(10年度比)、インテンシティマイナス49%以上(20年度比)の中間目標を設定した。
さらに、脱炭素ファイナンス枠5000億円を設定するとともに、テーマ投融資の目標額を1.5兆円から1.7兆円に引き上げた。この他、同社役員からPRI(国連責任投資原則)の理事やネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスの代表グループメンバーを輩出し、グローバルに貢献すると同時に日本の機関投資家としての立場を主張していくとした。
人的資本の強化については、人財価値向上プロジェクトを展開し、「人財育成」と「闊達な風土の醸成」を軸に取り組みを推進しており、22年度は特に、女性活躍推進を経営戦略に掲げ、20年代に女性管理職比率30%、30年度始に女性部長相当職比率10%を目指し、候補層の裾野拡大や管理職層の育成強化、産育休からの復帰支援などに取り組むとした。
コーポレートガバナンス体制については、総代会の承認後に監査役設置会社から監査等委員会設置会社に移行し、重要な業務執行の決定を取締役会から執行側に委任することで、迅速で果断な業務執行を実現し、監査等委員会を軸とした監査の高度化を目指すとした。