2022.04.21 生保協会 定例会見 新型コロナに関する取組報告書作成、営業職員コンプラリスクアンケート公表

 生命保険協会の高田幸徳協会長は4月15日、東京都千代田区の同協会会議室で定例会見を開き、次期協会長に第一生命の稲垣精二社長が内定したことを報告、「新型コロナウイルス感染症を巡る生命保険業界の取組み報告書」と「『顧客本位の業務運営』の高度化に資する営業職員チャネルにおけるコンプライアンス・リスク管理に関するフォローアップアンケートに関する報告」についての説明を行った。新型コロナウイルスに関連する保険金等の支払状況については、「2021年末以降に急増した感染者に対する支払状況は、今後判明する実績において動向を注視して、引き続き生保業界を挙げて、お客さまに寄り添った対応に取り組むとともに、感染拡大防止に努めていく」と述べた。また、会見終了後には、株式価値向上に向けた取り組みについての説明会を開いた。

 会見で高田協会長はまず、新型コロナウイルスに関連するこれまでの生保業界の取り組みについて取りまとめた「新型コロナウイルス感染症を巡る取組み報告書」について説明した。
 同報告書は、感染防止対策や顧客向けの特別取扱いの対応に加え、業界のデジタル化への取り組みなどを整理し、今後の生保業界の危機管理に役立てると同時に、会員各社のデジタル化への支援を目的に作成したものだとし、「ポスト・コロナ時代も顧客に信頼され、確かな安心を届けるという生命保険業界の役割を果たせるように、会員各社と取り組みを推進していく」と述べた。
 次に、「営業職員チャネルにおけるコンプライアンス・リスク管理に関するフォローアップアンケートに関する報告」については、会員各社の「顧客本位の業務運営」の取り組みの高度化につなげるために、国内で営業する生保会社のうち、営業職員チャネルがあると回答した生保会社20社の新たな取り組みを収集し取りまとめたものだと説明した。
 各項目の結果については、項目①「自社の態勢整備状況の分析」では、全ての会社が、21年の報告書で共有した「各社取組事例」や「高度化に向けた視点等」と、自社の取り組み内容を比較してギャップ分析を行うなど、あらためて自社の体制整備の状況に関する分析を行ったことを確認。
 項目②「自社の態勢整備の状況の分析結果、分析結果等を受けた取組み」については、自社の体制整備の状況をあらためて分析した結果、全ての会社が、営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理の高度化を企図した新たな取り組みや改善に向けた取り組みを行った。
 項目③「取り組みを通じて期待する効果」については、全ての会社が、「顧客満足度の向上」「苦情件数の減少」「不祥事件届出件数の減少」と回答した他、「営業職員チャネルの持続可能性の向上」などを期待すると回答した。項目④「分析の結果ならびに今後の取り組み方針にかかる経営陣への報告」では、ほとんどの会社が、分析結果と今後の取り組み方針について、経営陣へ報告を行っていた。
 高田協会長は、同報告書を通じて、全ての会社で自社の体制整備の状況をあらためて振り返っていることや営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理の高度化を企図した取り組みが行われていることを認識したとし、「こうした取り組みが、顧客満足度の向上や苦情件数と不祥事件届出件数の減少などの効果につながることを期待している」と述べた。一方で、コンプライアンス・リスク管理体制については、不断の高度化に取り組み、会社全体の企業風土・リスク文化を醸成し、強固な体制の実現が重要との考えを示し、「会員各社は、本報告書等における新たな取り組み事例も参考にして、引き続きさらなる高度化に向けて、それぞれ創意工夫を重ねていくことを期待している」とした。
 生保協会としては今後、報告書も踏まえて、会員各社の「顧客本位の業務運営」の高度化をさらに後押しする新たな方策を検討していくとした。また、毎年実施している「Value Upアンケート」や「お客さま本位推進会議」などを通じて、社会環境の変化などに伴う業界課題の早期把握・未然防止等を推進し、業界全体でのPDCAサイクルの一層の高度化に取り組む方針。
 新型コロナウイルス感染症の生保業界全体の保険金等の支払状況については、21年4月から22年2月までの累計で、死亡保険金は1万1575件の約729億8000万円、入院給付金は60万2300件の約618億8000万円で、入院給付のうち、宿泊・自宅療養等の「みなし入院」の支払いは51万782件で約508億7000万円となったと報告した。
 質疑応答では、感染症法の改正議論が出ている中での、みなし入院の措置の見直しに関する質問に対して、「みなし入院は、医療事情や病院事情により臨時施設や自宅などで療養を受けることで、通常の治療や医療提供を受けられた人が入院できないことで給付金を受け取れなくなるため、生命保険の果たす役割の観点からも、見直しには一定の議論が必要だ」と回答した。「法改正前の状況では、引き続きみなし入院の措置は必要か」という質問に対しては、「現段階では引き続き、みなし入院に対して給付金を支払うことが、各社とのコンセンサスになっている」と回答した。