2021.11.15 SOMPOHD、損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメント 災害時財務インパクト評価共同研究、米スタンフォード大研究組織と

SOMPOホールディングス、損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメントの3社は10月22日、Stanford Urban Resilience Initiative(以下、SURI)と、「災害時の経済環境変化を考慮した財務インパクト評価モデル」の構築に向けた共同研究実施について合意したと発表した。SOMPOグループでは、地震災害に関する総合的なリスク評価を検証し、企業の財務レジリエンス向上をファイナンス面で後押しすることを目的に、保険商品の開発や顧客のレジリエンス向上に資するサービスの提供を目指していく。

 SURIは、米国スタンフォード大学都市環境工学部に属する、都市の回復力(災害発生後の社会経済活動の復旧過程)について研究する組織。
 SOMPOグループの3社とSURIは、共同研究契約の締結により、SURIの利用するAdaptive Regional Input-Output Mod
el(以下、ARIO)を活用、日本で対策が重要な災害である地震災害にフォーカスした業種別・地域別の企業財務への災害影響を推定するプロジェクトを実施する。
 ARIOモデルとは、業種間の取引関係を記述するマクロ経済データである産業連関表(Input-Output Table)を利用し、災害後の企業財務(付加価値額など)の時間的推移を業種別に予測するもの。ハリケーン災害に伴う企業財務の変動の分析に用いるために開発されたモデルで、近年では新型コロナ禍に伴う業種別・国別の企業財務の変動分析に利用されている。
 本共同研究では、日本の過去の地震災害を対象にARIOモデルを適用し業種別の企業財務の変化を算出。得られた結果を公的機関のマクロ経済統計から得た実際の企業財務の変動と比較することで、ARIOモデルが日本の地震災害後の企業財務をどの程度の精度で予測できるか検証する。
 この検証結果を踏まえSOMPOグループでは、自社開発する「確率論にもとづく日本の地震リスクの評価モデル」にARIOモデルを組み込み、「災害時の経済環境変化を考慮した財務インパクト評価モデル」を構築。顧客の事業所における損害や従業員の安全確保に由来するリスクの評価だけではなく、経済環境(需給環境)の変化や、サプライチェーンにおける事業活動の変化を踏まえた、企業の財務へのインパクトの総合的な評価を可能とする。
 同グループでは、この総合的なリスク評価に基づき、企業の財務レジリエンス向上をファイナンス面で後押しすることを目的に、保険商品の開発を目指していくとしている。また、同リスク評価を顧客のレジリエンス向上に資するサービスとして展開していく予定だ。
 災害の発生により売上高や保有資産などの企業の財務状況は、損害が生じた自社の建物や生産設備の復旧費用、自社の生産設備等の損害回避や従業員の安全を確保することに伴う事業(生産・サービス)の縮小と停止による逸失利益などによって大きな影響を受ける。また、自社の事業所に損害がなく、従業員が安全に勤務できる環境だったとしても、サプライチェーンの複雑化・グローバル化の進展により、自然災害やパンデミック等の発生に伴う需給環境の変化や、仕入先・販売先の罹災によって、企業の財務に大きな影響を及ぼす事例が発生している。
 これまでSOMPOグループでは、災害発生に伴う「顧客企業における建物や生産設備等の復旧費用」「事業所の復旧や従業員の安全の確保がなされるまでの事業縮小・停止に伴う逸失利益」等のリスクを主な対象としたリスク評価モデルと保険商品を設計し販売してきた。しかし、企業の財務は災害前後の経済環境の変化や、サプライチェーンにおける事業活動の変化によっても影響を受けることから、それらの影響も対象とするリスク評価モデルを構築することで、企業における災害時の財務インパクトをより精緻に把握し、被害の実態に即した保険商品の設計が可能になる。また、将来発生する災害への財務インパクト情報の提供等も実現できると考えられる。
 以上の検討を踏まえ、SOMPOグループの3社はSURIとの共同研究により、災害前後の経済環境の変化やサプライチェーンにおける事業活動の変化等を考慮した災害時財務インパクトモデルの構築に合意することとなった。