2021.11.11 東京海上日動 気候変動リスク対応ソリューション開発、英リジリエンス社と資本業務提携

東京海上日動は10月19日、気候変動リスクに対応するソリューションの開発に向けて、英国のRisilience Limited(CEO:Andrew Coburn 、以下、リジリエンス社)と資本業務提携したことを発表した。

 地球温暖化や自然災害の頻発化・激甚化が進む中、世界各国で気候変動リスクへの関心が急速に高まっている。2017年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)から公表された提言については、日本国内においても多数の企業・機関が賛同するなど機運が高まっている。一方で、気候変動の適切なリスク評価・情報開示に向けては「物理的リスク」(気候変動による自然災害の発生や気候パターン等が変化することによって、企業の財務状況等に影響をもたらすリスク)と「移行リスク」(気候変動リスク対応を目的とした脱炭素・低炭素社会への移行に向け、法規制・政策、技術、市場等が変化することによって、企業の財務状況やレピュテーション等に影響をもたらすリスク)の両軸から個別企業へもたらす経営へのインパクトを計量化する必要があり、総合的な手法・評価が求められているという。
 リジリエンス社は、ケンブリッジビジネススクール附属研究所のThe Cambridge Centre for Risk Studies として設立されたのち、スピンアウトして法人化された企業で、設立は2016年。気候変動リスクへの対応を目指す企業に向けて、総合的なTCFD対応支援サービスを提供している。計画策定、実行、進捗管理をするための統合プラットフォームを構築し、気候変動が個別企業へもたらす経営インパクトを計量化するほか、気候変動リスクシナリオ別に詳細分析を提供することができる。「移行リスク」の計量化モデルの標準的な手法が確立されていない中、リジリエンス社は、同社の有する科学的なアプローチをスタンダードな手法として確立し、気候変動対策を推進することを目指している。
 東京海上グループは、これまでも気候変動リスクの評価手法や財務インパクトの情報開示に資するソリューションの研究・開発に取り組み、急速に進展する脱炭素社会への移行を見据え、企業の気候変動リスク対応を下支えする新たなソリューションの開発を検討してきていたが、リジリエンス社への出資は、気候変動データを活用した新たなリスクソリューションやデータドリブン商品の開発、顧客ネットワークを活用したサービス提供、グローバルベースでの気候変動リスク評価・情報提供サービスの事業化等を見据えた知見・ノウハウを収集するためのものとしている。
 両社は今後、戦略的パートナーシップに基づき、企業等の気候変動リスクへの対応を支援するため、主に、①対象企業の業界・特性に応じた高度な気候変動リスク評価モデル②気候変動リスクマネジメントに資するデジタルツイン(注)を活用したリスクソリューション③TCFDに関わる企業活動や気候変動リスクデータを活用したデータドリブン商品等④ESGに関わる訴訟対応におけるリスク低減サービス、リスクコミュニケーション、対策費用等を一体化した気候変動リスクソリューション―等において、リジリエンス社が有する高度なリスクモデルを活用したソリューションを共同で研究・開発をしていく。
 (注)デジタルツイン:仮想空間にリアル空間の環境を再現し、あらゆるシミュレートを行う技術。