2021.10.07 東京海上日動 「社会課題解決のための4室」体制構築、社会課題取組み4領域で強化

東京海上日動は9月14日、社会問題の解決に向けた取り組みの強化として、多発化・激甚化する自然災害への対応に加え、特に「サイバー」「中小企業支援」「グリーントランスフォーメーション(GX)」「ヘルスケア」の4領域で体制の強化を図ると発表した。担当する組織を「社会課題解決のための4室」と位置付け、社員約200人体制で取り組みを強化する。体制構築を契機に、一層のスピード感をもって社会課題の解決に資する商品・サービスを開発・提供することで、顧客や社会に対する新たな価値の提供を実現していくとしている。

 東京海上日動は2021年度からスタートした中期経営計画においても、持続可能な社会づくりへの貢献を取り組みの柱に位置付けている。
 現在、新型コロナウイルス感染症の拡大、自然災害の多発化・激甚化、気候変動対策の必要性、サイバーリスクの脅威といった社会課題が世界共通で深刻化している。また、日本国内においては、高齢化社会への対応、ヘルスケアの重要性、中小企業の事業継続といった社会課題が顕在化している。こうした状況の中、同社は「当社の事業そのものが、社会課題解決への貢献である」という考えのもと、社会課題解決に貢献する力を引き上げるために、新たな体制を構築することとした。
 同社では、SDGs(持続可能な開発目標)を含むさまざまな社会課題の中から、“東京海上日動が特に解決に貢献できる重点領域”として、「サイバー」「中小企業支援」「GX」「ヘルスケア」の4領域を選定・明確化。四つの課題領域は、特に社会への影響度が大きく、リスクも顕在化しており、これらに対して重点的に取り組みを推進することで、個人・大企業・中小企業のいずれの顧客に対しても、広く課題解決に貢献することができるとしている。同社では「サイバー」「中小企業支援」「GX」「ヘルスケア」の4領域を担当する組織を「社会課題解決のための4室」と位置付け、総勢で社員約200名の体制で取り組みを強化する。
 各領域においては、保険金の支払いを通じて「“いざ”を支える」ことはもちろん、「被害を未然に防ぐ」「事故が発生しても被害を軽減する」「早期復旧や再発防止を支援する」といった「事前・事後」の安心につながるソリューションの開発・提供も推進していく。テクノロジーやデータを徹底的に活用するとともに、専門性や先進性ある企業等との協業も推進することにより、「保険金支払いにとどまらない価値」を提供し、顧客や地域社会を「“いつも”支えることができる存在」へと進化できるよう挑戦していくとしている。
 同社が示す4室体制を構築する背景・環境認識や、顧客・社会に対する価値提供の方向性・基本的考え方は以下の通り。
 ▽サイバー室(21年10月新設)
 サイバー攻撃の高度化や社会全体の急速なDXの進展に伴い、企業のサイバーリスクは増大の一途をたどっている。攻撃を受けた企業の被害はもちろん、踏み台攻撃などを通じてサプライチェーン全体に大きな打撃を与える事例も生じている。一方で、特に中小企業を中心に、サイバーセキュリティーの対策が十分でない実態も明らかになっている。
 サイバーリスク保険の開発・展開に加え、サイバーリスクに関する情報提供、サイバーリスクの可視化、被害の予防・低減から実際にインシデントが発生した際の対応、再発防止策の提案まで、事前・事後の最先端のサービスを一貫して提供する態勢を構築し、企業のサイバーセキュリティーを多面的に支援していく。
 ▽中小企業支援室(21年10月新設)
 国内企業の99%を占め、日本の成長に大きく貢献してきた中小企業は、現在、コロナ禍による財務の悪化、デジタル化、人手不足、経営者の高齢化による事業承継等、多様で複雑な課題を抱えている。また、地方創生を推進するためには、地域経済を長年支えてきた中小企業が安定的に事業を継続し、さらに成長・発展することが不可欠となっている。
 中小企業を取り巻くリスクの変化を捉え、事業継続や新たな挑戦・成長を後押しする新たな保険商品・サービスを開発・提供していく。また、DXを活用した情報提供やサービスを強化するとともに、全国各地で採用した社員が中心となって地域の中小企業を支援するプロジェクトを展開していく。
 ▽GX室(21年6月設置)
 地球温暖化・気候変動という重大な社会課題の解決に向けて、世界各国で脱炭素化に向けた動きが加速する中、政府は地球温暖化への対応を成長の機会と捉え、20年12月に「グリーン成長戦略」を公表しており、あらゆる産業で低炭素化・脱炭素化に向けた新たな取り組みの進展・新たな技術の開発が見込まれている。
 再生可能エネルギー事業(洋上風力発電、太陽光発電など)を対象とする保険商品・リスクコンサルティングの開発・提供を通じて、脱炭素社会への移行に向けた取り組みを支援していく。また、蓄電池・水素・CCS・CCUSなど、新たに着目されている脱炭素技術に関する保険商品・リスクコンサルティングの開発も加速させていく。
 ▽ヘルスケア室(20年4月設置)
 高齢化に伴う介護・医療費の負担増加、進化する医療技術への対応、人生100年時代を想定した備えの必要性など、ヘルスケア領域の社会課題は多岐にわたっている。また、労働力人口が減少していく中、従業員の健康管理や仕事と治療の両立支援など、企業における健康経営の重要性が高まっている。
 病気の予防・早期発見や健康的な生活習慣を促す領域の取り組みを強化し、専門性や先進的な技術を有する研究機関・スタートアップ企業との協業や、健康情報と保険関連のデータを結び付けたデータプラットフォームの構築を通じて、データドリブン商品を含む新たなソリューションの開発・提供を目指す。