2021.09.21 金融庁 顧客本位方針報告事業者リストを公表、「保険会社等」は221業者掲載

金融庁は9月3日、「顧客本位の業務運営に関する原則」等に基づく取組方針を公表し金融庁に報告のあった金融事業者リスト(2021年6月末時点)を公表した。また、9月3日時点で受け付けた金融事業者のうち、報告内容の軽微な不備等によってリストに掲載しなかった金融事業者から報告内容の修正等があったため、修正の事実等を確認のうえ、「金融事業者リスト」を更新、9月15日に公表した。9月15日現在公表リストに掲載されているのは493事業者で、このうち「保険会社等」は221事業者となっている。

 本年1月15日に「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書―顧客本位の業務運営の進展に向けて―」(20年8月5日公表)を踏まえ、「顧客本位の業務運営に関する原則」の改訂が実施された。市場WG報告書では、本原則を採択する金融事業者に対して、取組方針に、原則2~7に示されている内容ごとに、実施する場合にはその対応方針を、実施しない場合にはその理由や代替策を、分かりやすい表現で盛り込むとともに、これに対応した形で取組状況を明確に示すことを求め、金融庁に対しては、本原則の採択事業者のリストを公表する際には、各金融事業者の取組方針やこれに係る取組状況を項目ごとに比較できるようにすることが適当であるとしていた。金融庁は4月12日、取組方針等に関する金融庁への報告等の方策・フォーマットを公表、金融事業者リストへの掲載を希望する事業者に対して、所定のExcel報告様式に必要事項を記載し6月30日までに提出することを求めていた。
 今回公表された金融事業者リストには、金融事業者名、取組方針等が掲載されている事業者サイトのURL、原則2【顧客の最善の利益の追求】およびその(注)、原則3【利益相反の適切な管理】およびその(注)、原則4【手数料等の明確化】、原則5【重要な情報の分かりやすい提供】およびその(注1)(注2)(注3)(注4)(注5)、原則6【顧客にふさわしいサービスの提供】およびその(注1)(注2)(注3)(注4)(注5)、原則7【従業員に対する適切な動機づけの枠組み等】およびその(注)―それぞれについての「実施・不実施」(「実施」「一部実施/不実施」「―」の3区分)と「取組方針における該当箇所」などが記載されている。
 金融庁では、本原則2~7と金融事業者の取組方針との対応関係が明確に示されている(形式面)ことが確認できた事業者を項目ごとに比較できるよう掲載したものであり、リストに掲載されている金融事業者の取組方針(内容面)の適切性や実施状況の十分性などに関して、具体的な判断を行ったものではないとしている。なお、今回の確認では、報告様式の「報告フォーマット(2)」シートにある「取組状況における該当箇所」については、確認の対象としていない。
 9月3日、最初に公表された事業者は、都市銀行24者、地域銀行84者、協同組合金融機関11者、保険会社等182者、金融商品取引事業者140者の合計441事業者だったが、15日の更新で、現在は別表の通り493事業者が公表されている。「保険会社等」はさらに小分類に分けられ、別表のとおり、生命保険会社34者、損害保険会社18者、少額短期保険業者32者、保険仲立人3者、乗合代理店116者、生命保険代理店7者、損害保険代理店9者が公表されている(金融庁の集計表の「保険会社等」は221者だが、公表リストの「保険会社等」に区分されている事業者数の合計は219者)。
 注目の原則4【手数料等の明確化】に対する記入状況を見ると、保険仲立人は3者とも「実施」、乗合代理店は「実施」が80者、「一部実施/不実施」が15者、「―」が21者、生命保険代理店は「実施」が4者、「―」が3者、損害保険代理店は「実施」が3者、「一部実施/不実施」が2者、「―」が4者―となっている。「―」については、「対象外(特定保険契約を扱っていない)」を意味しているもようだ。
 金融庁では、「今回の確認では、本原則2~7と金融事業者の取組方針との対応関係を自社の公表資料、または、当該報告において明確に示されていないなど、公表リストに掲載できないものが多数見受けられた」「公表リストに掲載することとした取組方針の中にも、本原則とほぼ同じ文言を踏襲しているなど、市場WG報告書の提言を十分に踏まえていないものが見受けられた」としており、こうした金融事業者においては、当該提言を踏まえた一層の対応が望まれるとしている。一方で、「内容について、創意工夫のもとで、顧客に対して明瞭かつ充実したものを示しつつ、本原則と取組方針の対応関係を別表により明確に示している事例なども見受けられた」ともしており、今後も各金融事業者との対話を通じて好事例の比較分析を行い、その結果について、とりまとめて公表することを予定している。
 金融庁では、今回の公表リストに掲載した金融事業者に対して、取組方針に基づき実施した取組みについて、来年6月末までに報告様式中の「報告フォーマット(2)」シートにある「取組状況における該当箇所」により金融庁に報告することを求めており、その報告内容に応じてリストを更新することとし、当該報告がなかった場合には、リストに非掲載となるとしている。