2021.08.23 「8月11日からの大雨」対応状況 損保協会、19日に対策本部設置

金融庁関東財務局、中国財務局および福岡財務支局が「8月11日からの大雨にかかる災害等に対する金融上の措置について」を各金融機関に要請した。関東財務局は長野県で8月17日、中国財務局は広島県で8月13日、島根県で8月16日、福岡財務支局は福岡県で8月16日、佐賀県で8月16日、長崎県で8月17日、それぞれ要請した。

 生保協会では、生保各社が①保険料払込猶予期間の延長②保険金・給付金、契約者貸付金の簡易迅速な支払い―を内容とする「災害救助法適用地域の特別取扱い」を8月16日に島根県、広島県、福岡県、佐賀県、同18日に長野県、長崎県で開始したことを発表している。なお、同様の取り扱いは11日から青森県でも開始している。一方、損保各社も7月1日からの大雨による災害および8月11日からの大雨による災害により災害救助法が適用された地域で被害を受けた場合、継続契約の締結手続きおよび保険料の払い込みを最長6カ月後の末日まで猶予する特別措置を実施する。
 損保協会では8月16日、「被害状況の把握に努め、皆様からのお問い合わせ・ご相談等に親身にお応えするとともに、保険金の迅速なお支払いに全力で努めてまいります。なお、この後も大雨が続くことが懸念されております。いざというときは、避難情報に従って早めに避難するなど、命を守る行動をお願いいたします」とする協会長コメント「8月11日からの大雨による被災者の皆様へ」を発表、同19日に、7月1日からの大雨および8月11日からの大雨による災害に万全の体制で対応するためとして、舩曵真一郎協会長を本部長とする「2021年度自然災害対策本部」を設置した。
 損保各社の対応状況は以下の通り。
 ■東京海上日動(8月16日現在) 
 13日に本店に災害対策本部を設置し、情報収集や災害への対応を進めている。福岡に災害対策室を、佐賀・久留米には立会を中心に行うサテライトオフィスを設置する予定。
 被災地での業務に加え、被災現地でなくとも業務を行うことができるマルチロケーション対応等によって、迅速な保険金支払いに取り組む。
 被害を受けた顧客からの連絡は、電話(コールセンター:東京海上日動安心110番)での受付に加えてウェブでの受付も行っている。また安心110番では、要員を増強して対応を進めている。
 人工衛星画像の活用では、7月14日から九州北部や広島中心部、長野の天竜川流域などのエリアをフィンランドのICEYE社と連携し人工衛星写真を複数回撮影して、人工衛星画像を取得している。九州北部については、おおよその浸水被害推定エリアを特定したため、立会などの体制構築に既に活用しているという。今後は、企業向け物件の有無責判定に活用していく予定で、全損判定への活用は現時点では未定とのこと。また久留米市の一部施設に水災センサーを配置しており、週末の水災被害で反応があったため、人工衛星画像と併わせた新たなインプットデータとして活用することを予定している。
 その他の取り組みとして、災害の被害に遭った可能性がある顧客に向けて、LINEでのプッシュ通知による連絡を検討している。発信先のエリアについては、今後の被害状況を踏まえて決定していく予定。
 また、遠隔で損害状況を確認できるシステム(Web―RTC)の活用も検討していくとしている。現場にいる顧客と遠隔地にいる事故担当者を専用システムでリアルタイムにつなぎ、オフィスからも損害状況を確認することで、感染リスクを避けながら損害状況を把握することができるという。
 ■損保ジャパン(8月16日現在)
 コールセンター体制については、被災した顧客からの保険金請求を待たせないため、14日から回線を増やして対応している。保険金支払い体制では、13日以降16日までに、広島市、福岡市、佐賀市に災害対応拠点を設置。
 保険金の早期支払いなどを目的に以下のデジタルツールを活用する。
 ①「水災サポート」:今回の災害では、2020年10月に開発したAIシステム「水災サポート」を初めて活用する。水災の場合、従来は原則全件同社職員が顧客宅を訪問し、浸水高を計測していたため、事故の受付から訪問までに顧客を待たせていた。「水災サポート」は、顧客のスマートフォンで建物の浸水跡の写真を500~600ミリリットルのペットボトルとともに撮影すると、ペットボトルを基準にAIが浸水した高さを計算し、概算の保険金を自動で算定するシステム。これにより、保険金支払いの迅速化を図る。
 ②ドローン:立ち入り・立ち位置困難区域における被災状況把握などを目的として、九州でドローンによる被害状況確認の調査を近日中に実施する予定。今後も悪天候が予報され、新たな被災や被害の拡大も懸念されるため、動向を注視しながら、他の地域での活用に向けた準備も進めていく。
 ③LINEによる通知メッセージ配信:福岡・佐賀・長崎・広島に発令された大雨特別警報に伴い、被災地でLINEを利用する顧客への保険金請求方法等の情報提供を目的として、LINEでの通知メッセージを14日に配信した。
 ■あいおいニッセイ同和損保(8月16日現在)
 8月11日に本社対策本部(東京都渋谷区)を設置。地域対策本部については、あいおいニッセイ同和損保福岡ビルで検討中。
 保険金支払態勢では、自動車保険については、佐賀SC・久留米SCの車両事故を車両SC(東京)で集約対応する。火災・新種保険については、九州・中国地域を新宿バックアップセンター(東京)で集約対応する。立会拠点としては、自動車保険については久留米ビルに設置予定で、火災・新種保険については、福岡ビル、佐賀ビルに設置の予定。
 今回の災害に関する取り組みでは、同社の損害調査担当が自らドローンを操縦することで効率的に損害調査することを検討している。
 また、避難場所や避難所の混雑状況などに関する情報をcmap上に公開している。
 訪問での調査が必要となる場合は、極力被災地域に勤務する社員が訪問するようにし、他県の鑑定人・社員が必要となる場合は、PCRを受検し、待機期間を設けた上で訪問調査を行う。
 事故の連絡に関しては、事故受付センターへの入電のほか、ホームページ上でも受け付けている。被災後の修理トラブルを未然に防止することを目的に、8月から専用窓口を設置した。
 ■三井住友海上(8月19日現在)
 事故受付体制については、14日、15日に予備的に第2安心STを構えたが、現在は通常どおり安心STで事故受付を実施している。なお、安心STは、三井住友海上100%出資のコールセンターのこと。そのほか、代理店からの事故受付は代理店専用ウェブ事故受付システムを活用、オフィシャルサイトにも専用の受付ページを設けた。
 保険金支払体制については、全国分散体制はとらず、現地の各SCで対応する。九州火新損(福岡)に対策室を立ち上げ、佐賀と久留米に立会拠点を設置している。
 今回の災害に関する取り組みでは、「水災デジタル調査」が活用できる場合は積極的に活用し、迅速支払いにつなげる。19日、佐賀でドローン撮影を実施予定。