2021.07.30 第227回航空保険プール委員会 20年度提供保険料は108億円
日本航空保険プールは7月14日、第227回航空保険プール委員会を開催し、一般概況報告とともに2020年度プール運営費決算報告など各議題を審議・承認した。プール委員会は新型コロナウイルス感染の影響を考慮し前回に続き書面開催となった。20会計年度のプール提供(グロス)保険料は、前年度の約138億円から約30億円減少し、約108億円(前年比78.3%)となった。また、委員長および副委員長選挙の結果として、委員長に松田誠太氏(東京海上日動常務執行役員)、副委員長に大知久一氏(三井住友海上取締役専務執行役員)が選出されたことが報告された。
同プール委員会では国際マーケットの動向として、次の報告が行われた。
2001年の米国同時多発テロの影響で急激にハード化したエアライン分野の機体・賠償責任保険の料率水準は、その後、09年に発生したエールフランス機の大口事故直後の一時的なハード化という一部例外を除き、航空機の安全性向上も追い風となり一貫してソフト化傾向が継続してきた。
しかし、17年第3四半期の大西洋ハリケーンをはじめとした一連の大口自然災害により再保険マーケット全体が徐々にハード化に転じる動きを見せた。加えて、航空保険市場では18年のBritの撤退がマーケットのその後の動向に大きな影響を与えた。
さらに、18年10月に発生したライオン・エア610便墜落事故(死亡乗員・乗客数189人)、19年3月に発生したエチオピア航空302便墜落事故(死亡乗員・乗客数157人)が発生し、エアラインとGAを中心に保険料率が顕著に上昇する局面に移っており、この動きは20年も継続された。
20年の民間航空機事故の発生件数は40件で、このうち死亡事故は5件だった。新型コロナウイルスの世界的流行で、20年は世界の航空便の運航本数が大幅に減る中、事故件数は減ったものの、1月にウクライナ国際航空(死亡乗員・乗客数176人)、5月にパキスタン航空(死亡乗員・乗客数97人)で大きな死亡事故が発生し、年間死亡乗員・乗客数は299人と昨年より増える結果となった。
IATA(国際航空運送協会)の発表によると、20年の有償旅客の輸送距離(RPK)は前年対比65.9%減となり、史上最も下落した年となった。21年は、現時点ではワクチンの普及等により20年より上向くと予想されているものの、新型コロナ変異株の感染拡大などが続けばさらなる移動制限などが導入される可能性もあり、大幅な回復は見込めない状況にある。
20年暦年ベースの宇宙保険マーケットは、主要ロケットの打ち上げ件数が前年の29回から23回に減少した一方で、19年7月からのマーケットのハード化が継続したことにより、保険料は昨年からわずかに増加した。また、Express―AM6、Palapa―N1の2件の事故が発生したが、マーケット全体では収入保険料が支払保険金を上回った