2021.06.21 損保料率機構 地震保険基準料率を改定、全国平均で0.7%引き下げ
損害保険料率算出機構(以下、損保料率機構)は6月10日、金融庁長官に対し地震保険の基準料率の変更にかかる届出を行った。地震保険の基本料率を全国平均で0.7%引き下げる(建物の所在地、構造によって引き上げ・引き下げとなる区分がある)。また、長期契約の割引の見直し(長期係数の見直し)を行う。損保料率機構では今回の改定の主な背景・ポイントとして、①2017年1月から実施した3段階改定中の保険料不足の解消②各種基礎データの更新③所在地・構造別の基本料率の見直し(激変緩和措置など)―を挙げた。
地震保険の基本料率見直しでは、①3段階改定中の保険料不足の解消(全国平均で1.6%の引き上げ)②各種基礎データの更新(全国平均で2.3%の引き下げ)③所在地・構造別の基本料率の見直し―を行う。
①の「3段階改定中の保険料不足の解消」では、2017年1月から3段階に分けて料率水準を引き上げる改定を行った(以下、3段階改定)。この改定は、段階的な引き上げにより本来必要な保険料水準に徐々に近づけていく方式で、その必要な保険料水準に達するまでの期間における保険料の不足が発生することから、3段階改定後の改定でその不足分を保険料に上乗せすることで解消する方針としていた(3段階改定の実施以前に行った財務省の有識者会議である「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」フォローアップ会合の議論のとりまとめを踏まえた方針)。
今回の改定では、この方針に基づき、保険料の不足分を上乗せした結果、基本料率は全国平均で1.6%の引き上げとなる。なお、不足分の上乗せを行う期間としては、今後10年程度を見込んでいるという。
②の「各種基礎データの更新」では、保険料率算出の基礎となる各種データ(震源モデル、地盤データ、住宅・土地統計調査、地震保険契約データなど)の更新を行った。地震保険における震源モデルは、地震調査研究推進本部(地震本部)が作成した確率論的地震動予測地図(予測地図)における震源モデルを使用しているが、20年度版の予測地図(21年3月26日公表)の震源モデルに更新した結果、全国的な地震の発生頻度の上昇により、保険料率を引き上げる要因となった。一方で、地盤データや住宅・土地統計調査、地震保険契約データを更新した結果、地震本部における評価方法の見直しや耐震性の高い住宅の普及などの効果により、保険料率を引き下げる要因となった。これら各種基礎データの更新による影響を合計すると、基本料率は全国平均で2.3%の引き下げとなる。
③の「所在地・構造別の基本料率の見直し」では、激変緩和措置の解消に向けた基本料率の引き上げと、等地区分の見直しに伴う基本料率の引き下げを行う。基本料率の改定の際には、契約者の保険料負担が急激に増加しないよう、必要に応じて都道府県別に基本料率の引き上げの上限を設定する措置(激変緩和措置)を講じている。この措置は3段階改定以前も講じてきたが、3段階改定の際にも、福島県、茨城県、埼玉県、徳島県、高知県の5県について、引上げ率の上限を3段階通算で50%とする激変緩和措置を講じた。今回の改定では、等地本来の基本料率より低く設定していた前記5県の基本料率を引き上げたが、基本料率の大幅な引き上げとなる茨城県、埼玉県、徳島県、高知県のイ構造については、契約者の保険料負担が急激に増加しないよう、引き上げ率の上限を30%とする激変緩和措置を講じる。また、大分県の等地は、各種基礎データの更新により地震保険における危険度が減少したことを理由に、現行の2等地から1等地に変更することで、基本料率が引き下げとなる。
以上の①~③を踏まえた今回の改定における構造別の最大引き上げ率と最大引き下げ率は、イ構造の最大引き上げ率が茨城県、埼玉県、徳島県、高知県で29.9%、ロ構造で茨城県、埼玉県の12.3%。最大引き下げ率は大分県のイ構造で▲38.1%、同ロ構造で▲47.2%としている。
長期契約(保険期間2~5年の契約)の地震保険料の割引の見直しでは、割引の計算に用いる予定利率を近年の金利状況を踏まえて見直した結果、2~4年契約の割引率に変更はないが、5年契約の割引率は7.0%から6.0%に見直す。その結果、長期係数(保険期間1年の保険料に乗じる係数)は、現行が保険期間2年が1.90(割引率5.0%)、3年が2.85(同5.0%)、4年が3.75(同6.3%)、5年が4.65(同7.0%)のところ、届け出後は2年~4年は変更なし、5年は4.70(同6.0%)に変更となる。