2021.05.14 東京海上HD 米SSL社を1億8千万ドルで買収、有給休暇補償保険市場の成長取り込む

 東京海上ホールディングスは4月16日、同社子会社米国Delphi Financial Group社傘下の生命保険子会社Reliance Standard Life Insurance Company社(以下、RSL社)を通じて、米国生保会社Standard Security Life Insurance Company of NewYork社(以下、SSL社)を1億8000万ドル(約198億円:1ドル=110円で換算)で買収する売買契約を締結したと発表した。買収完了は関係当局からの認可取得等が条件で、2021年度第2四半期中を予定している。

 SSL社は、1957年に設立。本社は米国ニューヨーク州ニューヨーク市に所在し、従業員は約70人。有給休暇補償保険・短期就業不能補償保険を取り扱う。20年度のグロス収入保険料は約1億2200万ドル(約134億円)、20年度の税後利益は約1300万ドル(約14億円)、純資産は約6400万ドル(約70億円)。株主はIndependence Holding Company社グループで、100%保有している。
 同社は、すでにニューヨーク州をはじめとする米国内の10州で法制化され、今後さらに採用州の拡大が見込まれている有給休暇補償制度に対応した保険を提供している。
 加入している従業員が療養や介護などで休暇を取得したときの賃金を補償する。米国ではもともと年次有給休暇の付与が法令で義務付けられていなかったが、近年女性・高齢者の就労への配慮および雇用の促進の観点から、超党派で有給休暇制度導入・拡充の動きが広がっている。また、直近ではバイデン大統領が同制度導入を支持する意向を表明している他、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、誰もが経済的に安心して療養や介護ができる労働環境整備の必要性が再認識され、米国全体において同制度導入・拡充の機運はさらに高まっている。このような背景から、有給休暇補償制度に対応した保険は、今後拡大が見込まれる有望なマーケットと考えられている。
 SSL社の事業展開は現在ほぼニューヨーク州に特化しており、特に従業員数が50人未満の小規模企業分野の顧客層への高い浸透率と効率的なオペレーション等による業界対比での低い経費率に優位性を有している。SSL社のコンバインド・レシオは90%程度で、RSL社は同社の買収により安定した保険引受収益の獲得が見込める他、ニューヨーク州の有給休暇補償保険で最大手の一角を占める保険会社となる。大企業分野に強いRSL社と、小規模企業分野における強みと経費率の低さに優位性を有するSSL社を組み合わせることで、今後全米で期待される有給休暇補償保険市場の成長を取り込むことを見込んでいる。また、買収によりSSL社の既存顧客(約6万社、従業員数約100万人)へのRSL社の団体福利厚生保険商品のクロスセル等のシナジー効果を見込んでいる。
 東京海上グループは、海外保険事業の規模・収益の拡大をグループ全体の成長ドライバーと位置付け、先進国および新興国の両市場において、内部成長力の強化と戦略的なM&Aの推進により、グローバルな成長機会と分散の効いた事業ポートフォリオの構築を追求している。先進国では、数々の買収案件を通じ、従来、スペシャルティ種目を中心としたポートフォリオを構築してきている。最近では20年2月に米国の富裕層向けに特化して保険商品・サービスを提供するPUREグループを買収。また、大型の買収と並行して、15年以降は既存の事業のさらなる強化と収益性の拡大を図るための買収(ボルトオン買収)の機会も模索し、実施している。新興国においても、1月にブラジルで大手国有銀行グループとの保険合弁会社を設立するなど、積極的に成長機会への投資を行っている。