かんぽ生命は３月１５日、既契約の解約を伴わずに保障の見直しを実現できる顧客本位の制度として、４月１日から契約転換制度の取り扱いを開始すると発表した。また２日から、青壮年層の顧客の保障ニーズにより一層応えるため、普通定期保険と特別養老保険について、これまでより保険期間が長期となる商品の取り扱いを開始する。併せて、普通定期保険の保険料を改定する。
　２０１９年に明らかになったかんぽ生命の不適正募集問題では、条件付解約制度や契約転換制度等が導入されていなかったことが、その要因の一つとされた。かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会の調査報告書（１９年１２月１８日）では、「条件付解約制度や既契約の解約を伴わない転換制度等を採用した場合、特定事案のうちＡ類型（引受謝絶）の一部、Ｅ類型（保険期間重複）及びＦ類型（無保険状態の発生）等における顧客の不利益の発生を防止することが可能となるところ、かんぽ生命では、他の生命保険会社でも採用されているこれらの制度が導入されていなかった」と指摘、その後、ＪＰ改革実行委員会の業務改善計画で、契約転換制度については２１年４月の導入を目指しシステム開発や認可取得に向け準備を進めている、とされていた。
　なお、かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会の追加報告書（２０年３月２６日）によると、顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性のある乗換契約のうち、特定の類型に分類が可能な事案「特定事案」について、１９年３月以前の過去５年分で調査対象となった事案数は、Ａ「乗換契約に際し、乗換前の契約は解約されたものの、乗換後の契約が引受謝絶となった事案」が約１．８万件、Ｂ「乗換契約後、告知義務違反により乗換後の契約が解除となり、保険金が支払謝絶等となった事案」が約０．３万件、Ｃ「特約切替や保険金額の減額により、より合理的な提案が可能であった事案」が約２．６万件、Ｄ「乗換契約前後で予定利率が低下しており、保障の内容・保障期間の変動がない等の事案」が約１．５万件、Ｅ「乗換契約の判定期間後（乗換後の契約の契約日の後７カ月から後９カ月）の解約により、保障の重複が生じた事案」が約７．５万件、Ｆ「乗換契約の判定期間外（乗換後の契約の契約日の前４カ月から前６カ月）の解約により、保障の空白が生じた事案」が約４．６万件―と報告されていた。
　２日からの普通定期保険等の改定では、これまで保険期間が１０年となる商品のみ取り扱っていたが、５５歳満了、６０歳満了、６５歳満了、７０歳満了の契約種類を新設し、保険期間がより長期となる商品の取り扱いを開始する。これに併せ、普通定期保険の保険料を改定。また、特別養老保険（２倍型・５倍型・１０倍型）のうち５５歳満期、６０歳満期、６５歳満期、７０歳満期の契約種類についても、これまで保険期間が最長２０年となる商品を取り扱っていたが、加入年齢範囲の下限を満１５歳に引き下げ、保険期間がより長期となる商品の取り扱いを開始する。
　改定により、普通定期保険の契約種類は、１０年（加入年齢範囲１５歳～５０歳、保険期間１０年）のほか、５５歳満了（満１５～４５歳、１０～４０年）、６０歳満了（満１５～５０歳、１０～４５年）、６５歳満了（満１５～５５歳、１０～５０年）、７０歳満了（満１５～６０歳、１０～５５年）となる。特別養老保険（２倍型・５倍型・１０倍型）の契約種類は、５５歳満期（加入年齢範囲満１５～４５歳、保険期間１０～４０年）、６０歳満期（満１５～５０歳、１０～４５年）、６５歳満期（満１５～５５歳、１０～５０年）、７０歳満期（満１５～６０歳、１０～５５年）となる。
　普通定期保険の基準保険金額５００万円（死亡保険金額）、３０歳男性の保険料例（月額・口座払い）は、契約種類１０年、保険期間１０年で１２５０円（改定前１４５０円）、５５歳満了・２５年で１５００円、６０歳満了・３０年で１７５０円、６５歳満了・３５年で２１５０円、７０歳満了・４０年で２８００円。３０歳女性の場合、契約種類１０年、保険期間１０年で１０５０円（改定前１３００円）、５５歳満了・２５年で１１５０円、６０歳満了・３０年で１２５０円、６５歳満了・３５年で１４００円、７０歳満了・４０年で１６５０円。
　特別養老保険の基準保険金額５００万円（死亡保険金額）、３０歳男性の保険料例（月額・口座払い）は、契約種類５５歳満期、保険期間２５年で２倍型９８００円、５倍型４７５０円、１０倍型３１００円、６０歳満期・３０年で２倍型８４００円、５倍型４３５０円、１０倍型３０５０円、６５歳満期・３５年で２倍型７５００円、５倍型４２５０円、１０倍型３２００円、７０歳満期・４０年で２倍型７０００円、５倍型４３５０円、１０倍型３５５０円。３０歳女性では、契約種類５５歳満期、保険期間２５年で２倍型９６００円、５倍型４５００円、１０倍型２８００円、６０歳満期・３０年で２倍型８１５０円、５倍型３９５０円、１０倍型２８００円、６５歳満期・３５年で２倍型７１５０円、５倍型３６５０円、１０倍型２５００円、７０歳満期・４０年で２倍型６４００円、５倍型３５００円、１０倍型２５５０円となっている。