2021.03.24 損保協会 定例会見、第9次中期基本計画決定[2021年3月19日]

 損保協会は3月19日、業界紙向けの定例記者会見を行い、18日の理事会で決定した第9次中期基本計画(2021~23年)の概要と21年度の事業計画を発表した。第9次中期基本計画では、損保業界が顧客を支えるリスクの担い手として、社会的役割を発揮して持続的に成長していくため、損害保険業の健全な発展と信頼性の向上に資する事業を引き続き安定的かつ生産性高く運営しつつ、次の3カ年で取り組みを強化するべき重点課題を定め、その解決に向けて各種取り組みを推進する。また、21年度の事業計画では、第9次中期基本計画に定めた方向性に従い、損害保険の普及啓発や理解促進に資する事業など7事業に取り組む。
 第9次中期基本計画では、3カ年で取り組む重点課題として、「持続可能なビジネス環境の整備」「災害に強い社会の実現」「損害保険リテラシーの向上」を掲げた。
 「持続可能なビジネス環境の整備」では、新しい生活様式(書面・押印・対面手続きの見直しなど)、国内外の基準・規制への対応、デジタル技術の活用による効率化推進・利便性向上、社会環境・自然環境変化に伴うさらなる役割の発揮(気候変動への対応など)に取り組む。
 「災害に強い社会の実現」に向けては、強靭(きょうじん)なまちづくりへの貢献、自然災害に対する業界共同取り組み、災害に乗じた悪質商法への対応強化、事業者向け保険の普及促進の取り組みを推進する。
 「損害保険リテラシーの向上」では、教育機関・行政・有識者との関係構築、他金融団体との連携強化、高校生への教育の充実や教育ツールのデジタル化・手法の改革などに取り組む。
 また、21年度の事業計画では、①損害保険の普及啓発と理解促進②損害保険契約者などからの相談対応、苦情・紛争解決③損害保険業の業務品質向上④損害保険業の基盤整備⑤事故、災害、犯罪の防止・軽減⑥損害保険業に関する研修、試験や認定など⑦その他同協会の目的達成上必要と認めた事業―の7事業を推進する。
 具体的には、損害保険の普及啓発・理解促進に向け、地震保険や自賠責保険の広報活動などを行う。損害保険契約者などからの相談対応、苦情・紛争解決では、損害保険相談・紛争解決サポートセンター(そんぽADRセンター)の運営、損害保険業の業務品質向上では、「お客さまの声・有識者諮問会議」の運営やガイドラインの作成・改訂などに取り組む。
 損害保険業の基盤整備では、損害調査業務基盤の整備や事務領域の共通化・標準化・効率化を推進する他、新技術の進展に伴う新たなリスクに関する研究・整理などに取り組む。
 事故、災害、犯罪の防止・軽減に向けては、不正請求対策や交通事故防止の啓発、反社会的勢力の排除に向けた対応などを実施する。また、損害保険業に関する研修、試験や認定などの事業では、代理店試験や損害保険大学課程の運営などを行うとともに、代理店の体制整備などを促進する取り組みを行う。
 会見では、役員選任と、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、同協会で行われた日銀記者クラブの広瀬協会長の会見についても報告した。
 役員選任については、3月31日付で三井住友海上の原典之氏が理事を辞任し、4月1日付で新たに同社の舩曵真一郎氏を理事と副会長に選任することを明らかにした。
 日銀記者クラブの会見では、広瀬協会長が新型コロナウイルス感染症における課題の取り組みとして、出社や対面、書類が前提となっている業務フローの改善や新型コロナウイルスに対応した補償の提供を挙げた。
 また、2月13日に発生した福島県沖を震源とする地震の被害状況は、事故受付件数は熊本地震に迫っているものの、一件当たりの被害額は少ないとの認識を示した。
 最後に、東日本大震災から10年が経過した所感として、19年度の地震保険付帯率は66.7%と東日本大震災発生時から20%以上増加している一方、地域別の付帯率にはばらつきがあるため、引き続き普及推進に取り組む方針を示した。
会見ではこの他、21年4月から、大規模水災が発生した場合の被害状況の確認において、衛星画像などを基にした浸水深推定データを会員各社に共有する業界共同の取り組みを行うことや、損害保険教育情報誌「そんぽジャーナル」を創刊したことなどを報告した。